Laub🍃

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2012.03.09
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優しさは僕にとっては脅しだ。

優しさという字は優れるとも読める。
やさしさとはつまり、能力が優れているからこそ生まれる余裕に依るものなのだ。
それだけならいい。
だがそれを持って、優しさがない人間を見下し罵倒する者が居ることが問題なのだ。

優しさがない人間は?
持てない人間はどうすればいい。
持っていた筈なのにいつの間にか失っていた人間はどうしたらいい。

決まっている、優しさがなくても稼げる金を資本にして自由になるしかない。


金で絆は買える。
金で効率が買える。

だから僕は金を集めた。
自分で自分を認める為に。

金を至上主義にするため、世の中を変え始めた。
優しさに資本を置く全てを壊せば、きっとくだらない世の中を変えられる筈だ。

気付けば悪の総帥とか言われる立場になっていた。
優しさを守る人間どもは優しさ戦隊とかヒーローとか呼ばれていた。反吐が出る。

僕には人文学的なセンスはなかったけれど、数学的なセンスはあったから資金は無尽蔵に作れた。
僕と同じように世の中に居場所がない者達を拾って働かせた。断じて優しさではない。金を稼ぐ手段だ。
何人か金を稼いだり直接ヒーローと戦えない者を養っているのも別に優しさなどという生ぬるいものではない。そんなあやふやでばかばかしいものではない。


「そうそう。自分の時間も削って部下サービスしたり、相談に乗ったりしてんの」
「金の為って言ってるけどあの人結局人がいいっつーかやさ」

「……無駄口を叩いている暇があるのか」
「仕事は終わらせましたよー!総帥がガンガン勧めるからつられて終わっちゃったんですぅー」
「……ならいい。だが、優しいという言葉はこの基地内では禁句だ。それだけは守れ」


やさしさなど何にもならない。
人を殺すやさしさなんて要らない。
人から与えられないやさしさなんて欲しがらない。
人に、与えられないやさしさなどで心を壊してたまるか。

金の塔だけが僕に優しく、金の塔だけに僕は優しく出来る。



そんなことを考えていたら、金に脚を掬われた。

「ハーッハッハ!これでお前たちの野望もおしまいだ!」
「…お前…なんてことを……」
「貴様の野望は潰した!もう悪事は働けないぞ!」


まさかこんな手に打って出るとは思わなかった。


「ふふふ…今のお上は俺達に優しいからな。借金を帳消しにしてくれた。そればかりか金の価値も落としてくれた」
「いや、この後どうするんだお前」
「借金なんてないほうがいいに決まってる。全てやさしさで融通するからこそ意味があるんだ」
「物の価値がばらばらな世界で唯一指標になるものが、ものの身分を守るものが金だったのに」
「うるさい、重視しなくていい価値なんて世の中に沢山あるんだよ!全てその場で終わらせときゃいいもんを、ずるずるずるずる引きずるなんて馬鹿だろうが!」
「……」


全てが瓦解していく音が聞こえる。


鼓動が息を詰まらせる。がくんと膝が折れて、脈が聞こえなくなる。
全てが遠くにいく。


「総統!大丈夫ですか」
「今闇医者が来ます」
「お前ら金で弱味を握られてたんだろ?もう解放されたんだぞ」
「あんたは黙ってて下さい!総統!総統!!」
「俺達がまた価値を作ります!ですから……」


金の顔をした部下たちが声をかけてくる。

意識が途切れる寸前、青い空に浮かぶ金色の雲が眼に焼き付いていた。


天国や地獄には金があるのかな。









to be continued...?




以下蛇足:

金→秘密結社シーエルゴールド
地位→お上
名声→ヒーロー





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最終更新日  2017.05.10 09:22:11
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