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長押綴

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2012.08.09

どうしても手に入れられないものを求めている。

それは誰かのものじゃないから手を伸ばしてしまう。

拒まないと信じてしまいたくなる。

指先がまたかする、滑る。

あの柔らかい髪の毛には触れられない。

あのやさしい声は俺の中だけにある。

外から供給はされず、ずっと俺だけが心の中で必死に反響させている。

新しい血は入ってこないから古い血を失わないように止めている。

会いたいのに会えない。

夢の中で会ったあの人はいつか俺が会ったあの人じゃなかった。

俺が信じているあの人は俺の記憶の中にしかいないけれど、それはもう人じゃない。

得られないから失いたくないのに日々脆くなる残像は磨り減っていく。

もう信じたくないのにあの人以外誰も信じられない。

いつにか伸ばしていた手は追いかけないように周りを見ないように
俺の目を塞ぐ為に使われていた。

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