Laub🍃

Laub🍃

2012.08.24
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カテゴリ: .1次メモ
 彼の、後姿が好きだった。一心不乱に、報われなくてもただひたすらに一人の為に尽くし続けるその根性が想いの強さが周囲への潔いほどの無関心から来る寛容が。

 けれど、彼はある時から変わってしまった。

 想い人に対し、幻滅するようなことがあったらしい。
 何が二人の関係を変えたのかはいまだに聞けていない。けれど。

「……ハチコ。俺は、こんなお前は好きじゃない」

 言わずにはいられなかった。


「…また説教かよ、ハッポウ。俺はもともと、こんなんだよ。自分自身のことしか考えられない屑。だからこそ、あいつのことを考えてたら楽になれるような気がしたんだ。こんな俺でも、誰かを大事にできるんだって信じたかった。…まあ、無理だったけど。所詮、世界中どこもゴミだらけ。綺麗なもんなんて一つもない」

 綺麗じゃないように見えるものだって、もともとは綺麗なものをもっていたんだと言ったのは、お前だろうが。

「…凹むのはまだしも、そうやって、自分のことも、他人のことも吐き捨てるように言うのは、やめろよ。見てて気分悪くなる。…………どうしても吐き出したいんだったら聞くから、そうやって暴走すんのはやめろ」

「あ、おい!!」

 そう言ってすたすたと歩いていくハチコの背には、硝煙が伸びていく。
 彼が先ほど、敵の命を撃ち落とした名残。

 小さな子供だった。


「あいつは、強いんじゃない。どこまでも弱いんだ。……誰も守れないくらいに、弱いんだ。だから、あいつが生きる後ろには何百もの屍がある」
「だったらお前が守ってやればいいじゃないか」
「もう守ってるよ。んで、屍の山を築いてる」
「……」


 もう、言う言葉もない。

 飢えに苦しんだ国民の蜂起を、俺達は潰して生きている。

 そうしないと、大事なものが守れないから。俺は金、こいつは忠義の為。


 昔と違って大義名分もなくふらついた、それでも少し大きな背に追いすがる。

「……それもまた、生き方ってことで、いいんじゃねえの」

 二人の関係性など、こいつからののろけくらいしか聞いたことはないが、それでも。言わずにはいられない。

「かつて助けてもらったから、死ぬまで恩を返し続けるとか言ったのはどこのどいつだよ」
「……俺だよ、畜生」



 こいつを縛っているのは、過去から今に続く自分自身だろう。

「だから、俺はこんな形でも、まだあいつの近くに居座り続けてる」
「…顔を合わせる勇気もないのに?」

 昔とは大違いだと、仲間が話しているのを聞いたことがある。

「仕方がないだろう、合わせたらお門違いの怨嗟が流れ出てしまいそうなんだから」
「……………めんどくせえなお前」

 そう言うとむっとされた顔をされるが、本当にそう思ったんだからしょうがない。

「お前に言われたくない。出先で恋しては裏切られてその度抜け殻になってんのは…「わーわーわーわーわー!!!」



 信じるものが、ひとつでも、たくさんいても、それぞれの地獄がある。
 それでも信じている間だけ、色々なことを先延ばしに出来るのだから、しょうがない。

 それに。

「…次の町行ったら一緒にナンパしようぜ」
「お前と一緒は絶対嫌だ」

 こんな世界でも、お前のことだけはなんだかずっと信じていられる気がするんだ。
 こいつのように、形振り構わず追いすがれはしないけれど確かに絆を感じるから、それでいい。



 嘘のない友情関係に、乾杯。



*****


・尻軽男×元忠犬男

 八方美人と忠犬八公から。それぞれ自分の世界を守る為に憲兵隊とか内乱鎮める係とかやってる。

 お互いに弱い所ばかり見せてる。相手に対して好かれようとしないでいいのは楽だなーってお互い思ってる。
 だから相手が結婚とかしようものなら本気で心配する。そのセンサーあたかもオカンのごとし。

「嘘だー、お前がまともにやってけるわけないじゃん」
「お前に言われたくない」

そんな二人。





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最終更新日  2016.05.05 19:55:24
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