Laub🍃

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2012.09.14
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カテゴリ: .1次メモ
 とても暑い、夏休みの三日目。まだ始まったばかりだけど、俺は永遠に終わらないで欲しかった。それは宿題の締切が嫌だとかそういう理由ではなく、夏休み前に起こったある出来事が原因。

「ーーー…俺?」
「……本当に……来れた……」

 そして、そんな俺の前に唐突に現れたのは、俺とそっくりな少年だった。

「俺はパラレルワールドの…もう一つの地球の、お前だ。頼む、俺と世界を交換してくれないか」
「……は?何言ってんだお前、俺はいま機嫌が悪いんだよ、ほっといてくれ」
「…こっちの世界では、好人は俺の告白、受け入れてくれたぞ」
「……えっ?」

 勿論、一も二もなく頷いた。だって俺の世界では、好人は俺の告白を断って、あまつさえ大嫌いな俺の姉貴とくっついてやがったから。





「…ここが、……」

 好人が、俺の告白を受け入れてくれた世界。
 茨の道を歩む決意をしてくれた世界。
 大して俺の世界と変わりないのに、それだけで世界が輝いて見える。

 ああ早く、好人に会いたい。

「……!?」

 目の前には、好人のお兄さんが居た。立ち止まってずっとこちらを睨んでいる。もしかして、俺が好人を誤った道に誘い込んだから、とか、そういう理由だろうか。恨まれても仕方がない。

「お、おにいさ…」
「近寄るな」
「え」
「お前の、お前のせいで……お前に近付いたから、好人は」

「好人は死んじゃったんだよ!!!」


 ----…え?

「お前の姉、おかしいよ。どうして付き合えなかったら相手を殺すなんてことできるんだよ。ああ畜生、こんなこと弟のお前に言っても仕方ないけどさあ、でも、お前の家にあいつが遊びに行かなかったら、ああ、少しでもあしらうようなこと言えてたら、くそ……っ」

 なんだ、それ。



「世界を取り換えられたらいいのに」


 言うだけ言って走り去っていった彼の後ろ、呟くとどこかから声が聞こえた。

「違う世界に行きたいか?」
「勿論だ」


 そうして、次の世界で俺は姉貴と刺し違えた。どちらも振られていた。次の世界では俺が好人を殺していた。次の世界では。

 ああいつになったら俺は好人と一緒に歩いて行けるんだろうか。





 好人の日記


 毎晩毎晩夢を見る。いや、毎朝毎朝夢から覚めると言えばいいのか。どちらにしろ、その夢の中ではいつも友人とその姉に嫌になるくらい迫られる。そしてまた今日、どんな選択をしても迎えるのはバッドエンドだ。

 昨日はあいつも、その姉も殺した。けれど今日、また目が覚めてしまった。
 幸いなのは、あいつらが、僕がこの「夢」を見ていることを知らない事。だから毎回毎回、丁重に扱ってくれる。
 この夢の記憶が残っていることは、絶対に知られてはいけない。

 だって、いくらやり直されたって、その度に俺はあいつらを嫌いになるだけなのだから。







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最終更新日  2016.07.16 21:21:45
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