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長押綴

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2012.09.16

「同じ名前は使えません」

　何番を入力しても、そう言われた。

　乗り遅れた。いくらいくら入力しても、そう言われる。数の迷路。

　だから僕は、

「じゃあ、０で」

　禁じ手を使った。

　０。孤独だった。

　同時に全てを掌握してもいた。すべての上に立ち、全ての下に立ち、そうして全ての中間に位置した。

　全てとの関わりを捨てる事で、全てに属さない事で、逆説的に全てに包まれていた。囲まれていた。

　相も変わらず僕には何のアイデンティティもない。
　僕は何も持てない。持とうとすら、できない。

　だってそうしないことが僕のアイデンティティだから。
　なんにもないことが「僕」だから。

　そうして僕は今日もゆっくり思考停止する、浮かび上がるもやもやとした感情をひとつひとつ削除する。
　殺すのではなく、削除する。死骸も何も残らない綺麗な綺麗な青空のようなからっぽな「０」

　それが僕の名前。最終更新日 2016.01.02 19:36:22

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