Laub🍃

Laub🍃

2017.10.16
XML
カテゴリ: 🌾7種2次裏
****************※グロ注意

***********************************************



魚の養殖場がオープンされた。


初めて回ってきたその魚を、僕達は試食させられた。
甘辛い煮付け。
とろとろになった骨。
香ばしい焼き魚。
ブイヤベース。


全部漏れなく吐いた。

涙目で。
お互いそうで、やけど、酷い真実を知っとる仲間がおるから、なんとかこらえられた。
もし一人やったら狂うとったかもしれん。
やから、あの時、皆に教えない選択肢もあったのに、僕は教えてもうたんやろう。
教えたことを、恨む人はあん中におらんかったけど。
皆を共犯者に引きずり込んだ僕は、皆のやさしさと責任を背負う顔を日々確認せな、罪悪感で潰れてしまいそうやった。
今やってそうや。
僕一人潰れていけばよかったのに、みんなでこないに苦しんどる。
共犯者同士、惨めで無様で優しい姿を互いに見ないふりをして頑張っとる。
それでも、そうしとるから、僕達はお互いを人と捉えられるのかもしれん。


貴士さんだけは平気で食うとった。





貴士さんは僕達とは心の形が違うのかもしれん、と少し思うた。


「美帆にも食わせたかった」


食うのに必死で、返事できなくてよかった。
返事できたとしても、どう返せばええか分からんかったやろうけど。


貴士さんは、どうしてこないなことを出来るんやろう。



昔おかしな目に遭うたんか。

普通の人だったのに権力を手に入れておかしくなってもうたんか。


漫才芸人の僕も。
歌手のマリアさんも。


外の世界ならブラックジョークやら世界規模のバラードやらで散々死について話してきた筈やった。

せやけど、こんなもんには耐えきれん。当たり前や。


僕達以外は。

裏方の、全てを嫌が応にも伝えられてしまう僕達以外は、多少仲間が少なくなったことでさみしそうでも、平気で、元気に暮らしとる。
それが少し羨ましかった。

やけど。


「最近魚も入荷するようになったんですよね」
「……あ…ああ、そうらしいですね」

ラーメン屋のおっちゃんの娘さん。
残された人。

「……み、水びたしになってもうた食料とか、皆の出した生ごみとか、そういうもんに生かされるなら、ええですよね」
「そうですね。私はまだ食べられてないですけど」
「あ、ああ……そうですか」

それはよかった、と言うのをすんででこらえた。
皆が出した生ごみ。
皆がなった生ごみ。


それを食うてる僕らは、人間なんやろか。


龍宮城。

ここの名前。



鯛やひらめの舞い踊り、出てくる御馳走は一体何なんなんやろう。
浦島太郎がもし帰れなかったら、どうなっていたんやろうな。


普通の人のままでは、死んでしまう世界。


鬼になってでも、生き永らえたい人。
普通の人のまま、死んだ人。


どっちの方が、幸せなんやろうな。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2017.11.28 01:48:02
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: