Laub🍃

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2017.12.14
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
・以下安居視点独白








獣を彼は飼っていた。








朝焼けの中で源五郎は肩を貸して静かに泣かせてくれた。

不思議と俺は弱みを見せることへの怯えを抱かずに済んだ。


あの日から俺は源五郎の動物舎に通う回数を増やした。

あの日から洗っても洗ってもずっと落ちなかったのばら達の臭いがあまり気にならなくなった。


源五郎が苦しませないようにして動物を屠殺する様子を見た。

内臓や皮や骨たちが次に活かされている様子を見て心の整理を付けられた。


源五郎が動物同士で子供をつくらせる様子を見た。

雌が大変そうだったが長生きできず早く俺達の餌になる雄も気の毒だった。


源五郎は動物達を檻の中から出し入れしていた。

朝茂を起こしたりテスト前や後に特訓したりする必要のなくなった俺には見に行く時間が出来ていた。


源五郎は動物たちに一番好かれていた。

家畜たちは仲間を殺したのが源五郎だと分かっていても信じて同時に諦めていた。


源五郎は動物を愛していた。

要先輩もきっと俺達を愛していると思うことができた。


貴士先生が「獣」を造っていた時源五郎が頭に浮かんだ。

可愛さと恐ろしさは紙一重だななんて呑気に思っていた。


源五郎は動物を飼い慣らしていた。

彼らを襲う狂犬病や「解放」そして初めてになる洪水や餓えや人への怯えさえなければ。


源五郎は俺の示した先で動物達を見付けたらしい。

見付けてその後どうするのかは聞こうと思わなかった。


源五郎は俺が端午を代わりに殺そうとするのを断り自分で抱きしめて殺した。

端午の遺骸を燃やしている間俺はあの朝焼けの日の源五郎のようになりたかった。


茂は俺が源五郎に頼っても茂には頼らないことを嘆いた。

そういえば源五郎には心配で怒ることも対立して怒ることも揶揄われて怒ることもなかった。


卯浪に銃を向けた一番手は小瑠璃で二番手は源五郎で三番手が俺だった。

俺達の殺意は仲間の殺意によって導かれ赦され癒された。


源五郎はやはり獣を仕留めるのがうまかった。

俺は過去の世界で人と格闘したことはあっても殺す為に動くことはなかったので見て覚えた。


俺に代わって源五郎はリーダーを頑張っている。

涼はぶつぶつと言っていたが俺は正直言って安心した。


涼の捕らえてきたつがいの蜘蛛を飼い始めた時源五郎のしていたことをよく思い出した。

何匹か置いていったら喜ぶかなと思ったが涼には渋い顔をされた。


人間相手に管理し過ぎる要さんや俺に代わって、距離を置いて見守り補佐し導くことが出来るのがきっと源五郎だ。動物相手でないからこそ、源五郎は冷静に接することが出来る。

だからきっと守られる側は幸せだ。

浅く深く生き物の臭いがするこの世界で、今日も息を出来る。

外国で誰か人と出会ったなら、俺もそうして人と接するべきだろうか。


それがきっと要さんたちにとっての「正解」なんだろうから。


Last updated 2018.01.23 10:38:21





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最終更新日  2018.02.08 02:53:47
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