Laub🍃

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2017.12.31
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カテゴリ: 🌾7種
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カイコ 2

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「誰って…天道まつりだ。夏のBチーム。お前らも会っただろ」
「……B?夏は私達だけでしょう?」

 誰かも同じことを言っていた気がする。

「いや、もう一組保険の為に作られたんだ」
「…僕達と同じような施設でもう一組選抜されて、やってきたってこと?

「脱落者の中から選んだとかじゃなくて?」
「……施設じゃあないが、他のチームとは少し毛色が違っている。……」

 どういう事だ。

 まるで数か月前のような会話を俺達はしている。

 それにさっき、源五郎には崖の方に行ったんじゃないかと問われた。


 航海のことか?崖に似た岩場から船に乗って出て行ったのに、どうして内陸からやってくる、という意味で訊いているのか?


「なあ、……」
「おい、安居。どうした、泥遊びでもしてきたのか」
「お前だって人の事を言えないだろうが、涼!……あれ」

 背後からかかる、聞きなれた声に振り向くと。


「……お前、着替えるの早いな」
「あ?」

 涼は他のジャージに着替えていて、少しの汚れはあったが先程とは見違える姿になっていた。
 いや、そんなことは大した問題じゃない。それよりも。

「まつりはどうした」

「違う。……夏の…Bの……」
「B?」

 涼のおかしなものを見る目にいよいよ違和感が大きくなる。


「……悪い、何でもない。泥沼に落ちて気が動転していたみたいだ。……忘れ物をしてきた、取りに行ってくる」
「……?おい、一人は危ないだろうが安居…安居!」

 走る。この方角につけていた罠なら覚えている。
 普段あまり通らない方面だったから植生や動物の生息状況についてはあまり詳しくないが。

「……涼!」
「…早かったな安居、逃げる必要があるのか」
「……!」

 まつりにもたれかかられている涼は、相変わらず泥まみれで、服や長い髪の上で乾いた泥をはぎ取っていた。

 洞から出て、まつりも洞から出そうとした涼を制す。

「…いや、多分、逃げる必要はない…ないんだけど……何なんだ…何なんだよこれは……」
「あ?」

 頭を抱えてしゃがみ込む俺を、怪訝な目で見る涼。

「おい、本当にどうしたんだ」
「……いいか、落ち着いて聞いてくれ、涼」
「お前よりは百倍落ち着いてる」
「……あのな。あそこの声がする方には」

 ばくばくと、心臓が音を立てているのが分かる。
 だから、 ... が近付く音に気付かなかった。

「おい、安居。単独行動するな」
「っ!」

 背後から、正面と同じ声がした。

「……俺?」
「……誰だ、お前。……お前が、夏のBか?」

 ……俺、こいつに夏Bの事を話したか?……いや、源五郎とあゆから聞いたのか?

「おい安居、どういうことだ。説明しろ」
「そうだ、説明しろ」

 一人でも不機嫌になると威圧感の強いこいつだが、二人になると手に負えない。

「……分かった、分かったから、落ち着いて聞いてくれ」

 両方の『涼』と目を合わせてから、俺はさっきと同じセリフを繰り返した。



【続】





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最終更新日  2018.11.23 23:26:24
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