Laub🍃

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2018.01.14
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
・とある安居周囲の人達と安居についての仮定
・三人称オムニバス未満
・突き詰めると未来教あるいはメタ








*岩清水ナツは駄目人間である




岩清水ナツは駄目人間である。

「あたしのことすごくダメだと思ってるから少し悲しくなるんです」

ナツは、安居といつか対等になれたらと思った。

安居にとって、ナツを助ける事とナツを導くことが救いだった。


対等を目指す限りそれらは両立しない。

ナツは、安居が助けてくれていることを皆に言うことで、恩返しをしようとした。
それは天秤を平らに近付けることだった。


しかし結局それは成立しなかった。


岩清水ナツは安居を救えなかった。



互いに生きていることを救いとするには、二人の立場が違い過ぎた。


*******

*青田嵐は聖人君子か?




青田嵐は「いい人」である。

そして、危険なことから逃げる器用さも併せ持っている。

その言葉は安居の目を開けた。
安居の言葉は嵐の命を助けた。

だがしかし彼は調停役だった。

青田嵐は安居を救えなかった。


互いの価値観を教え合って行くには、二人の目標が違い過ぎた。




*******

*末黒野花は英雄である


末黒野花は冒険家である。

冒険家は前へ前へ行き、他の人達の分も怪我をして、他の人達の得られないものを取って来ることがその使命である。

時に敵と戦い、時に皆の行動の指針となることがその役割の一つでもある。

さて、風を切り、怪我をして、他の人の分何かを取って来ることは安居の背負う使命でもある。

時に敵と戦い、時に皆の行動の指針となることも負う役割の一つだった。

さて、敵対する同じ者同士が出会うとどうなるか。

かけることの、二人を育てた二人による怨嗟。

答えはどうしようもない互いの精神の摩耗と消えない禍根。


末黒野花には安居は救えなかった。

隣に立つには、二人には、互いの欠けた部分を埋める力も配慮もなかった。



*******

*百舌戸要は神様である



百舌戸要は死神である。

監視し、管理し、揺り籠から墓場まで死神は見届ける。

それは要の紛れもない使命であり、現実であり、そして願望だ。

百舌戸要には監視と殺害以外の行為が出来ない。

安居の求める言葉も、感情も、はなから持ち合わせていないのだから渡せるはずがない。


百舌戸要には安居は救えなかった。

想い出通りの関係に戻るには、二人の、失ったものに向ける感情が違い過ぎた。



*******

*佐藤涼は影である



佐藤涼は影である。

リーダーの影として、涼は安居を救いたかった。

初めはいつも通り、過去の関係通りでいようとした。

だが徘徊する安居を止め、憎悪の言葉に相槌を打つ内、涼は安居の憎悪に自分の憎悪を混ぜ、密かに安居の為と言っては、自分の為だけではできないことをし始めた。

だが、涼が動けば動くほど、安居の立場も精神状態も悪化していくようで、実の所涼自身途方に暮れていた。

夏のBチームに出会い、巨大な船の中で安居の呪縛が解けた後も。

虹子と再会し、夏のAチームを追って洞窟に入った安居に続いて洞窟に入った後も。

要と再会し、要を止めようとした後も。

嵐が叫び、安居が要との相互理解を諦めた後も。

安居の為に、花との接触、会話、しいてはわだかまり解消の機会を用意した後も。

出港した後も。


何が本当に安居の救いになるのか分からない。


佐藤涼に安居は救えなかった。

完全に救い切れることがありえないからこそ、それだけ喪ったものを想うからこそ、救えなかった。




*******

*茂は死者である



茂は安居達の想い出の中で生きている。

茂の安居への最期の願いは、未来でも頑張ることだった。

それ以外に、茂は新たに安居に言葉を残せない。

未来で安居と再会した遺体は少し笑っていたこと。

未来で安居に告げられた、ロープが切れた時の事実。

それらを背負って、生きている人達がこれからも生きていくしかない。


茂に安居は救えなかった。

想い出に救われる未来は、同時に想い出と違う現状を突きつける。




*******

*安居は自責癖である



鈴木安居の心の中、昔の安居は、現在の安居を殺したくなる。

現在の安居は、昔の安居について、もっと何か出来たのではないかと考え続ける。



何度でも安居はあの暗い穴に落ち続ける。
死にたくないと思った狡さと、代わりに誰かの死を意識した汚さが何度でも蘇る。


7SEEDS計画の備品である夏Aとしての意識が、生き続けて人を導けと言う。

7SEEDS計画の備品である夏Aとしての意識が、消えて人を傷付けないようにしろと言う。
それらは救いではない。

7SEEDS計画の為に消耗された何かが、失った過去を恋しがり、追い求める。

7SEEDS計画の為に消耗された何かが、喪った過去を悔やんで、殉じたがる。
その先に救いはない。


結局今日も安居は、身体を動かし、頭を働かせ、課題をクリアし続けることしかできない。
進める道を探り続けることしかできない。

新たな世界に、風を切りながら歩き続け、人の為となる何かを探し続けることしかできない。


いつか進む場所がなくなって、背負うものに潰されるまで。




*******


彼の進む先には、欠けたものがある。

彼の歩いた場所に、満たされたものがある。


そうしている限り、彼の目の前にはいつも空っぽの欠けが広がっている。


「いつか」の未来で埋められる、可能性の群れ。


それは岩清水ナツの駄目な所であり、
それは岩清水ナツの「いつか」克服したい所であり、
それは青田嵐の知らなかった世界であり、
それは青田嵐の「いつか」知りたい世界であり、
それは末黒野花の分からない事であり、
それは末黒野花の「いつか」自分の頭で考えていきたい事であり、
それは百舌戸要のかつて失った感情であり、
それは百舌戸要の「いつか」思い出すかもしれない感情であり、
それは佐藤涼の試してみなかった生き方であり、
それは佐藤涼の「いつか」試すかもしれない新たな生き方であり、
それは茂の記憶について置き去りにされたままだったことであり、
それは茂の記憶について「いつか」思い出されることであり、
それは安居のこれまで気付けなかったことであり、
それは安居の「いつか」気付くことである。


救われる「いつか」があるからこそ、救われない「いま」を突きつけるものたちが、そこにある。

生きている。
行く先を求めて、歩き続けている。

救われないまま、いつかの為に迷い、苦しみ、探し続けている。

「いつか」訪れる未来がある限り、現在の彼は救われない。

「いつか」に繋がる現在、共に生きてきた周囲の人々、築き上げた建築物や得た経験を彼が振り返る日まで、それは彼の救いではない。


救われないからこそ、まだ救えていないからこそ、彼は今日も歩き続ける。





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最終更新日  2018.03.12 23:37:17
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