Laub🍃

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2019.02.07
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カテゴリ: 🌾7種2次裏
桃太郎さん 





 逃げる筈だった。逃げられる筈だったんだ。

 それなのに後一歩のところでしくじってこんな有様。

 やっぱり僕一人じゃ無理なんだ。誰かが居ないと。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」


 ぬめる体内を勝手に味わわされて頭は気持ち悪いと思うのに下半身は勝手に腰砕けになる。
 子供で居られる時はもう終わったんだとばかり。

「精通はもう終わったもんな」
「覚えてるか、おれが風邪ひいて、看病したお前にうつしちゃって、二人して倒れて」



 暑くて吐息が熱くて仕方ない。二人してばかみたいに汗かいてる。汗だく。風邪をひいてるかのよう。

「お前がち●ち●が変って言うから、それは普通のことだ、って言ってさ、習ったこと復習したよな」

 逃げ場のないこの暗い室内でその声とおかしな気分が混ざり合って本当にその時にタイムスリップしたかのような気持ちになる。辛うじて残った冷静な部分が「そんなの嘘だ」「僕じゃない」って言ってる、「流されるな」って言ってる。
 でも駄目だ変なんだ、どうしようもなく気持ち良い。

 そうかこれが気持ち良いのか。

「…そろそろか…?」

 駄目だ、駄目だ、駄目だ、出しちゃだめだ。

 目の前にぶら下がる大きな胸は僕のじゃなくて、僕は跳ねのけなくちゃいけなくて、手足を縛られてるわけでもないのに恐怖と興奮でがちがちで動けない。
 ただ元気なのは汗腺と下半身だけ。

 出したら、出来てしまったら、逃げられなくなる。

「……ひ、ああっ」



 そいつが僕の体に横たわる。柔らかい。ジェルの詰まった水風船みたいな重くてしっかりしてるのにどこか頼りないそれ。

 しっかりしてるのに頼りないそいつ自身みたいで、五年も一緒に居て歪でも大事にされていたらとっくに情なんてうつっていて。

 これが吊り橋効果ってやつかな、こいつ自身もこうやっておかしくならないと生きていけなかったんだろうなと思いながら、僕は、その汗だくの背中に手をまわしてしまった。

 そいつが薄暗い中いつもの鈍い光を目に浮かべて笑うのを見て思った。

 いつかこいつが正気に戻ったら僕は捨てられるんだろうか。捨てられるならまだいい方で、殺されるかもしれない。ああ、でも、それでもいいか。



 こいつ以外に僕を助けてくれる人も居ない。





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最終更新日  2020.04.27 16:36:17
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