Laub🍃

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2020.01.26
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僕らはみんな、とにかくおなかが減っていたのだ。



********

ー話は少し遡る。




 ここは北の大地、水の魔王が支配する場所。
 僕はれきとした人間だが、水の魔王様に取り立てて頂いている。

 かつて僕は彼に挑んだ勇者だったが、あの頃の己の愚かさを悔やんではやまない。
 だが、蛮勇であったお陰で彼に出会えたのだ。


「水の魔王様、本日もわたくしをご教授くださいませ」


 水の魔王様は僕を苛烈な目で睨む。ああ、そんな目で見られたら興奮してしまいます。
 先日水の魔王様を裏切った仕置きとして僕は水の魔王様に虫のように虐げられ、あるいは無視されていた。
 だって水の魔王様がそいつにばっかり構って僕を見てくれないから…!と言うと水の魔王様はとてつもなく深い溜息をつかれ、日々のルーチンワークに僕への仕置きを組み込んで下さった。

 水の魔王様の美しいアイスブルーの瞳は今日も薄暗い。

 僕が裏切った結果魔王様の大事な魔族が一人眠りについてしまったのだから当然と言えば当然だろう。

 ああ本当にあんな奴永遠に目覚めないでほしいのに、魔王様はあいつしか見ていない。

「小さい頃、僕がまだ不安定な精だった頃に僕を拾って育ててくれたんだ」

 そう言う魔王様は幸せそうだ。だが、もうあんなちっぽけな雑種の魔族なんかより魔王様はずっとずっとお強くなられてるのに、いつまで執着なさるのだろう。





****


 ああ、あいつさえ諦めればいいのに、全世界を統べ全てを手に入れられるのに、どうしてこんな時もあのお方はあんな奴の為にこうべを垂れるのだろう。




 巨大な洞に閉じ込められた僕の声は魔王様に届かない。
 いや、届いていてもきっと、魔王様のとる行動は変わらない。

 だからあの時少しだけでも魔王様に影響を与えたかったのだ。

 毒の雨の降り続くこの世界で傘をさしかけて下さった方だったから。
 僕に役割、生きる目的を下さった方だったから。



 ああ、おなかが減った。魔王様のご飯が食べたいのです。





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最終更新日  2021.01.11 11:16:05
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