Laub🍃

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2020.01.27
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カテゴリ: .1次長
地の狗を開放する条件は、地の魔女の情報を引き出すことだった。
 だから俺は言った。

「俺が命を賭けて地の魔女のクソ野郎のところに行くからそいつには手を出すなっ!!」
「!?」


「あーあ、せっかく身を挺して時間稼ぎしてたっていうのに残念だねえ」

 拷問野郎の片方がよくわかんねえことを言ってたがどうでもいい。俺はケルベロスが辛い目に遭わず笑って生きていければそれでいいんだ!

 ふがふがとケルベロスは鳴く。喚く為の顎が再生途中だから仕方がない。痛ましい。
 きっと俺のことを心配してくれてるんだろう。



 決意が鈍るといけないので、ケルベロスに俺は背を向けた。
 ケルベロスの悲痛な喉奥の声は、扉を閉めてもまだ、耳に残り続けていた。



「貴方一人で行くんですか?危なっかしいですよ」
「うるせえ、男に二言はねえ」

 そう言って出た手前、薄暗い洞窟、下の方に斜めに下がっていく地面にもブルっちまうわけにはいかねえ。
 ケルベロスの笑顔だけを脳裏に描いて、勇猛に、けれど慎重に進んでいく。

「ケルベロス、ケルベロス、ケルベロス」

 唱える呪文が俺を励ます。

 そして何時間と歩いた頃だろうかーーーーー、目の前に、人影が現れた。

「よお。お前か、アタシの可愛い可愛い犬を勝手に連れて行ったのは」
「うるせえ。お前から俺はあいつを解放してやるんだ」

「……」
「違うだろ?あいつはまだここに帰りたがってる。そうでないなら、お前らから情報を得るだけ得てから帰るつもりだ」
「……お前が、そう洗脳したからだろうが」
「都合の悪いことは全部洗脳か!まったく愚かだな、救いようがねえ」
「……」

「!?」
 ずぶずぶと脚が沈んでいく。
「お休み、愚者よ」

「お前の代わりに此奴が頑張るから、安心して眠るといい」

 頭が完全に埋まり切る前、ちらと見えたのは、魔女によって洞窟の壁から引き出される俺とそっくりな男の姿だった。





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最終更新日  2021.01.17 21:26:32
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