昭和という時代が満州事変(昭和六年)を機に「変調」をきたしていくとき、阿南は天皇の懊悩を間近で見ていたことになる。昭和七年には血盟団事件や五・一五事件といったテロ事件も起きており、軍人のなかには「動機が正しければいかなる行為も是認される」といった独善的な言説が力を持っていたときでもあった。
軍首脳らはともすれば独自の行動をとるし、さらには「大善」と称して既成事実を積み上げていく。そうした姿勢に対して天皇は強い不満を示している。
p.177-178 保坂正康『太平洋戦争を考えるヒント』
弁護士 秋根 久太
わたくしが最も感心した著述
易経に「動静有 レ 常」と、然り平和の裡にも闘争があり、闘争の中にも平和があって、宇宙の事物は悉くこの矛盾した二つの方面を有《も》っている。そして此のことは永久に絶えないのである。
わたくし共は敢て闘争を好むものではないが、闘争が目的達成の為に已むことを得ざる手段として用いられることは、必然的の現われとして認められる。国家としても、社会に於いても、家庭に在ってもそうである。
そして、此の最高度のものは、何と言っても戦闘である。
戦闘というものに関する著述は多々あるであろうが、其の一つとして、軍令陸第一号「戦闘綱要」というのがある。其の収むる所は大部隊の戦闘原則であって、綱領十一ケ条総則其の他の三百三十五ケ条から
成っている。数に於ては決して多い条項ではない。ところが其の示すものは戦闘の原理原則であるから、幾百万、幾千万の流血の賜として金科玉条に現わされている所に、わたくし共は是れ程貴重なものは恐らく他にあるまいと思う。実に立派なのである。
此の金科玉条から成る綱要は、専ら戦闘原則としての記述であるが、其の教うるところは単に戦闘に於ける指揮官に限らず、凡ゆる事象に応用して妙なるものがある。敬白。
p.266-267 昭和13(1938)年「(ハガキ問答)」『近きより』第2巻第4号
日本陸軍の「必勝の信念」は、精神主義・歩兵主兵主義・白兵主義の具体的表現と考えられるが、「歩兵操典」の綱領に「必勝の信念は主として軍の光輝ある歴史に根源し周到なる訓練を以って之を培養し卓越なる指揮統帥を以て之を充実す」と明記されている。また、師団以下の戦闘方針について定めた「作戦要務令」では「軍の主とするところは戦闘なり」とし、「而して戦闘一般の目的は敵を圧倒殲滅して迅速に戦捷を獲得するに在り」と戦闘重視、短期決戦志向を明確に打ち出している。
p.296 戸部良一 他『失敗の本質』
こうした一連の綱領類が存在し、それが聖典化する過程で、視野の狭小化、想像力の貧困化、思考の硬直化という病理現象が進行し、ひいては戦略の進化を阻害し、戦略オプションの幅と深みを著しく制約することにつながったといえよう。
p.297 戸部良一 他『失敗の本質』
評論家 西村 鎮彦
心の糧として忘れ難き言葉のうちから。
一、中に誠あれば外に形《あら》わる。(大学)
一、神が人間を多数に分かちたるは、相互に助け合わしめんが為である。(セネカ)
一、若し君が清き人であるならば、君の不幸もまた清きものである。(マァテルリンク)
一、生きんが為に死を敢てする時――それは生である。(メレディス)
p.265 昭和13(1938)年「(ハガキ問答)」『近きより』第2巻第4号
早大教授 上井 磯吉
《前略》序ながら、アラビヤのに諺に左記の如きもののある事を知りましたから、付記して一粲《いっさん》に供し度いと思います。
知らずしてその知らざるを知る者は単純なり。
教ゆべし
知らずしてその知らざるを知らざる者は愚かなり。
避くべし
知りてその知るを知らざる者は眠れるなり。
目覚めしむべし。
知りてその知るを知る者は賢明なり。
最後迄交わるべし。
p.268 昭和13(1938)年「(ハガキ問答)」『近きより』第2巻第4号
80年前より―その63(『近きより』をな… 2020.02.22 コメント(6)
80年前より―その62(『近きより』をな… 2019.12.14 コメント(1)
80年前より―その61(『近きより』をな… 2019.10.22 コメント(2)
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小野寺秀也さん