おぢさんの覚え書き

おぢさんの覚え書き

2019.02.28
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カテゴリ: 近代
先週は韓国の文国会議長の「天皇による謝罪」発言がテレビで報じられていた。
おぢさんがテレ朝の『グッドモーニング』を見ていると、正確な言葉は忘れたが、コメンテーターが気色ばんで文氏の発言は無礼だと言っていた。
同じくテレ朝、2/23放送『週刊ニュースリーダー』の「今週のニュース!気になる人物トップ10」では2位に「応酬に街の声は?「盗人猛々しい」韓国・文国会議長(73) VS 河野大臣(56)」が選ばれていた。文氏の発言について「無礼だ」という街の声が紹介されており、政府や首相は韓国に対してもっとしっかりと言うべきだというような意見も二三紹介されていた。
ブログを書いていると「世界から放置されだした韓国...でも、これも作戦通りだとしたら?」という煽りのダイレクト出版のWEB広告が目に留まった。

日本にいると、レーダー照射問題にしても、徴用工問題にしても、文氏の発言にしても、全く日本には非がなく、自衛隊や日本政府が言っていることが正しく、韓国が嘘ばかりの言いがかりを付けているように報道されている。列島の住民たちも、その報道に全く疑問を抱かず、「韓国はけしからん」という考えで一様になっている。

おぢさんは個々の問題に関して定見はない。ただ、最近の世論の動向を怪しいと思いつつ眺めていた。聞くところによれば文氏の発言などは韓国でもたいして関心を集めていなかったという。そうすると、これら一連の問題で騒いでいるのは日韓両国どころか日本だけということになるか?列島住民が韓国憎しで一様に踊らされているとすれば、その仕掛け人は?などと考えていた。

黒幕探しはさておき、指摘しておきたいのは日本の言い分が正しいとコンセンサスができているのは日本国内だけだということである。これは簡単に確かめられる。”Korea Japan” とでも Google で検索して海外の記事をいくつか読んだだけで日本のような一方的な報道が行われていないことが分かる。英語が読めなくてもブラウザの翻訳機能で十分だ。

海外の報道では大抵、日本と韓国の主張を両方紹介して、結論めいたことは言っていない。報道がその調子なので、受け取る側もどっちが本当なんだ?というのが大勢であろう。というより、何やってんだあいつらと思われるのが関の山だ。

日本の世論がガラパゴス化している。これはおぢさんは重大なことだと思う。たとえ、日本の報道通り日本が正しいとしても、海外ではそうは思われておらず、そのことを自覚していないとすれば問題である。国内の世論のみしか知らない民衆は、事実上選択することのできない政策を政府に要求することになる。もとは政府が誘導したことかもしれないが、意図した以上に民衆が先鋭化してしまうことはよくある。日比谷焼討ち事件、中国の愛国無罪の反日デモなど無数にある。解説者とかコメンテーターと呼ばれる人々は少なくとも海外世論との乖離を列島住人に自覚させなくてはならないと思うが、無理だろう。彼等の多くは当然この乖離に気がついているだろうが、そのような本当のことを言ってしまうと、反日とかなんとか言われて日本の報道の世界で生きていくことはできなくなる。現在の日本は巨大​ エコーチェンバー

さてと、80年前に戻るか。

正木氏は上海に五日間滞在した。滞在期間の不足は認めつつ、当時の上海の文明についての印象を書き留めている。

上海では英語は非常に普及しているように考えていたが、案外普及していない。ホテルとか紅毛人の来る店だけで、一般は本当のかたことしか喋れない。それは北京でも同じことだった。あるホテルのボーイは明後日のことを next tomorrow といっていた。またあるボーイは「彼は昨日来た」というのを “He come yesterday” と流暢に喋っていた。彼等は数百の英単語を支那流に並べているように思えた。日本語は支那の花柳界には大いに通ずるようである。
p.128-129 昭和14(1939)年「近きより 3 上海の文明」『近きより2』第三巻第五号<六月号>大陸紀行号 その二

支那花柳界に対する日本人の貢献については​ 前回 ​も取り上げた。経済力のある国の言語が通じるようになるのは自然だ。日本語が通じる時代はもう来ないだろう。

入口のところに排日の書物が何十種となく積まれていたので、それを見物していたら店員が来て、私に “Red Stars over China” という本や、H. G. Wells の “Shape of Things to come.” という本は日本人がよく買うといった。前者は支那共産党の活動を書いた本だし、後者は此度の事変を十年も前に予言している書物だそうだが、輸入禁止になっていると聞いていたので私は買わずに来た。それに値段も両方で五十円くらいする。紅毛人は実に物を高く売る。それなのに支那人は紅毛人を排斥しないで日本を嫌うのはよほど深い原因があるにちがいない。
p.130 昭和14(1939)年「近きより 3 上海の文明」『近きより2』第三巻第五号<六月号>大陸紀行号 その二

仲間だと思っていた人間に裏切られたとしたらどう感じるだろうか。同じ東洋人の顔をしていながら、自分たちが偉いと勘違いしている日本人をどう思うだろうか。
第一次大戦に便乗してドイツから奪った山東省の権益を認めさせ、警察権や軍の指揮権まで要求する​ 二十一カ条の要求 ​だけでも図々しいにも程があるが、断固膺懲(どんだけ偉いんだよ?)の声明や、国民政府を対手とせず(誰を対手とするんだよ?)…の第一次近衛声明、どれをとっても中国人の感情を逆なでする物だった。日本が嫌われる十分すぎる原因があったにもかかわらず、当の日本人はそれを自覚していなかった。報道を含め、日本全体がエコーチェンバー化していた当時にあっては無理もない。



参考:
Forget North Korea: Is the Next Showdown in Asia Japan vs. South Korea? (The National Interest)

Japan and South Korea's Unnecessary Squabble (The Diplomat)
 韓国の元軍人の書いた記事。


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Last updated  2019.03.01 21:03:37
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Re:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
fujiwara26  さん
こんにちは♬

『「少なくとも、P-1の乗員が本当に攻撃の危険を感じていたならば、駆逐艦の近くを周回しつづけたとは考えにくい」という指摘は尤もだ。この記事でも言うように日韓双方とも本気で武力衝突するつもりなど無いという全体を見ることの方が大事だろう。』

ご指摘のとおりだと頷いております♪ (2019.03.06 16:22:09)

Re[1]:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
narcisse7  さん
fujiwara26さんへ。

この日韓問題は非常に分かりやすい例ですが、列島の雰囲気は簡単に操られていると感じます。元自民党広報本部長の小池百合子氏が何気なく世論調査は設問次第だと発言していましたが、むしろ今の自民党にとっては世論自体が自民党次第となっています。
一方向に簡単に操れる民衆。都合の良いものです。 (2019.03.06 20:39:30)

Re[2]:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
fujiwara26 さん
narcisse7さんへ

こんにちは。
「この日韓問題は非常に分かりやすい例ですが、列島の雰囲気は簡単に操られていると感じます。」
ご指摘のとおりですね。本当に「簡単」に!
あの時、知人、友人も「嫌韓」を即座に言っていましたーー今でも。わたしは彼らに「そうじゃないよ。煽りに乗るなよ」と。
「一方向に簡単に操れる民衆。都合の良いものです。」
ご指摘のとおりですね!
これが概ねの民衆心理なんでしょうね。だからマスメディアを叩き、あるいは味方にしているのでしょうか。国民性のどこかに「短絡回路」が埋め込まれているような。今に始まったことではないでしょうが。
(2019.03.08 12:03:08)

Re:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
なんだかね さん
最近のニュースを見ていると、ここは日本なのか?って感じるときがあります。まさに指摘されているように韓国に関するニュースが多いからです。NHKニュースのトップで韓国関係のニュースが流れる。日本は正義で韓国は間違っているという論調のニュースばかりです。
本来、国民への影響が大きなニュースを中心に報道すべきNHKが、なぜ韓国関係のニュースを大量に流すのか。その理由は、国内問題から目を背けさせ、朝鮮半島への嫌悪をかき立てることで愛国心を刺激し、現在の政権を支持するように誘導しているように感じられます。
赤字国債を発行し続け、プライマリーバランスの黒字化はめどが立っていない日本の財政。異次元緩和を続けることで、市場を歪め、さらに地方銀行の財務状況を悪化させる日本銀行。これらの問題の方が国民生活に深刻な影響を与えるものです。しかし、内容が難しい、視聴者が関心を抱きにくいこともあるのか、なかなか報道されません。
国民に歪んだ情報を与え、大衆の熱狂により戦争への道を歩んだ1930年代以降も同じような状況だったのではないでしょうか。
同調圧力の強い日本で、エコーチェンバーに繋がる報道は危険極まりないものです。多様性を重視し、多面的な分析を行うような報道を求めてやみません。 (2019.03.12 11:14:04)

Re[1]:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
narcisse7  さん
なんだかねさんへ。どうも、お世話様です。

> 現在の政権を支持するように誘導しているように感じられます。
そうなんですよね。特にNHKのニュースに違和感を覚えるんですよね。
最近も、安倍氏の姿を長々と放送していたのですが、外交とか政策のことではなくてスポーツ選手の活躍か何かについてコメントしている所でした。そんなことが妙に多い気がします。

> 国内問題から目を背けさせ
ですよね~。世界経済の好調に浴していただけのアベノミクス。道半ばどころか、世界経済に少し陰りがあると真っ先にマイナス成長になり行き倒れていたアベノミクスこそ注目と怒りを集めなければならないのに、なぜかここではみんな冷静なようです。

> 国民に歪んだ情報を与え、大衆の熱狂により戦争への道を歩んだ1930年代以降も同じような状況だったのではないでしょうか。
日中戦争当時の国内の報道はまったく一方的でした。近衛声明などに対する中国側の反応が殆ど報道されないか、全く否定的に報道されていました。日本の報道から情報を得る限り中国人の思いは分からなかったと思います。
当時と同じことがくり返されているような気がします。別に英語を読むのが好きなわけではないので、国内の報道が全く信用できないのは迷惑な話です。でも、少しでも怪しいと思えば、海外報道を確認する必要があると今回あらためて思いました。本当に悲しい話です。

> 同調圧力の強い日本で、エコーチェンバーに繋がる報道は危険極まりないものです。
同感です。同調圧力は安定した農村社会が育んだ日本の持病だと思います。この傾向についても考察が必要ですね。優れた研究が既にありそうですが、心当たりがあれば教えてください。 (2019.03.12 22:24:34)

Re[2]:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
なんだかね さん
narcisse7さんへ

同調圧力について、未だ優れた作品を見つけられていません。
同調圧力には「空気」というものが影響するだろうという観点から「「空気」」の研究」(山本七平)を読んだことがあります。
われわれが何かを決定するとき、「決定を下すのは「空気」であり、空気が醸成される原理原則は、対象の臨在感的把握である。そして臨在感的把握の原則は、対象への一方的な感情移入による自己と対象との一体化であり、対象への分析を拒否する心的態度である。」という記述部分は参考になりました。
その他の事例、記述については、あたかも、白人労働者層が環境問題等でリベラル層を批判する、あるいはネトウヨが左翼を批判する主張と同レベルで、右翼・保守系雑誌に掲載される時評レベルの内容だと感じるもので、途中からは飛ばし読みをしました。
最近のいじめや児童虐待に対するネット等でのコメント内容が、あまりに被害者に感情移入しすぎているということは感じています。一方で、海外で被害にあったジャーナリストへの自己責任論はその対極にあると感じます。
おぢさん様が指摘されているように、「農村社会が育んだ日本の持病」という点が一番大きく感じます。集団で行う田植え作業、共同で行う村の治安維持、村八分という制裁制度、村の「内と外」の関係、村の守り神等(道祖神、氏神)などは農村社会が育んだ制度だと思います。
また、日本書紀や古事記など、天皇制成立に関する神話物語も参考になるものだと考えています。
同調圧力に関する優れた研究には未だ巡り会えてはいませんが、今後とも探していきたいと思っています。 (2019.03.16 18:25:20)

Re[2]:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
なんだかね さん
narcisse7さんへ

連続投稿ですみません。
昔の村のことを想像していて、ふと感じたことがあります。
村の権威は村長(むらおさ)にあったと思います。村長が、村人の考えも忖度しながら決定を下す。そうすると村人達は村長に従う。この場合、村長は自分の考えだけで無く、村人の考えや感情を忖度しているので、そこにあるのは「空気」と言えるもの。その空気に従って村長が決定すれば、村人はそれに反することはできない。反すれば村八分の危険性もあるので、結果的に同調圧力になる。
倭国大乱の後、シャーマンだった邪馬台国の卑弥呼の決定に倭国の人達は従った。
日本では権威主義が支配的で、権威=村長が決定すればその決定に従う傾向がある。水戸黄門の三つ葉葵の印籠は権威主義の象徴であり、その権威の最上位に存在するのは天皇。
・卑弥呼に見られるシャーマニズム
・権威主義と言われる日本
・村長(むらおさ)=村の統率者
・村の掟=村を統治する不文律
・村八分=掟に反する行為をした村人を罰するシステム
これらの影響で、他国よりも同調圧力が強い日本を形成したのではないか。
今後、関連の著作を探してみたいと思います。 (2019.03.16 18:53:08)

Re[3]:80年前より―その50(『近きより』をなぞる)巨大エコーチェンバー(02/28)  
narcisse7  さん
なんだかねさんへ

確かに同調圧力は「空気」で言い換えられますね。そこで、猪瀬直樹『空気と戦争』という本が書名からして気になっていたことを思い出しました。まだ読んでいないので、そのうち読みたいと思います。
空気の研究は、ヒルビリーの問題の解明と同じく、歴史学、民俗学、社会学、心理学を結集した学際的な研究が必要なのでしょう。
しかし、直感的に前から思うのは、いじめ、戦時中、右傾化したネット、これらは皆、同一の空気の問題だと思います。
いじめっ子が弱い者いじめを始めると、便乗する者、歓心を買うためにいじめる者が現れる。弱い者の味方をすると自分もいじめられるので、弱い者は皆にいじめられる。
戦時中もわれわれは黙らせられていた。反戦であっても、戦争に負けると分かっていても、軍部やそれに同調する者に黙らせられていた。
右傾化したネットで、われわれはまた黙っているわけです。
戦前も最近も、大人も子供もイジメの空気をなかなか克服できないのですが、たまには反転することもあります。
その時期は近づきつつあるように思います。 (2019.03.16 22:41:59)

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