ジャン・ドリュモー(佐野泰雄ほか訳)『罪と恐れ―西欧における罪責意識の歴史/ 13
世紀から 18
世紀―』
~新評論、 2004
年~
Le p
éché et la peur
, Paris, 1983
)
『恐怖心の歴史』(本ブログでの紹介記事未作成)に続く、ドリュモーによる恐怖論第2作。 1200
頁近い大著です。
ドリュモーの主要著作については、 ジャン・ドリュモー (
福田素子訳 )
『告白と許し―告解の困難、 13-18
世紀』言叢社、 2000
年
の記事で簡単に触れていますので、ここではドリュモーの経歴について、訳者あとがきなどから簡単にメモしておきます。
ドリュモーは 1923
年 6
月 18
日にフランスの港町ナントに生まれ、高等師範学校などで学び、教職につきます。その後、パリ第一大学教授を経て、コレージュ・ド・フランス教授などを歴任します。
本書の構成は次のとおりです。
―――
日本語版への序文
序 罪の文化史
第1部 ルネサンスの想死表現と悲観論
第1章 現世の蔑視・人間の蔑視
第2章 現世の蔑視から死の舞踏へ
第3章 想死表現の曖昧さ
第4章 罪の世界
第5章 弱い人間
第2部 贖罪の破綻
第6章 良心の糾明の仕上げ
第7章 聴罪司祭の領分
第8章 原罪
第9章 地獄に堕とされる多数者と罪のシステム
第 10
章 宗教的「気詰まり」
第3部 恐れの司牧術
カトリック諸国の場合
第 11
章 司牧術の伝播
第 12
章 「よく死を想え」
第 13
章 彼岸の責め苦
第 14
章 「ヤマネコの目」をした神
第 15
章 「罪」とさまざまな罪
第 16
章 禁欲生活というモデル
第 17
章 告白を強要することの難しさ
第 18
章 カトリックの司牧術〔活動〕。数量化の試み
プロテスタント諸国の場合
第 19
章 「汝、恐るべき言葉、永遠よ」
第 20
章 プロテスタントとカトリックの司牧術の共通点
第 21
章 終末論と運命予定
結論
原注
訳者あとがき
日本語版図版資料
日本語版作品名索引
日本語版人名索引
―――
まず、邦訳書 1200
頁にも及ぶ大著を訳された5名の訳者の方々に敬服します。
そして内容も、 13-18
世紀の説教や文学、絵画作品など様々なジャンルの、膨大な数の史料に裏付けられた論述となっています。
とてもそれぞれの章について紹介する力量はないので、気になったことなどをメモしておきます。
まず、第3部はカトリック諸国とプロテスタント諸国に関する議論で大きく2つに分かれますが、第 20
章の題からうかがえるように、著者は両者の違いではなく共通点を強調しているように思います。
そして、史料として主に用いられているのが説教ということで、時代はいわゆる近世~近代を扱っていますが、関心のある領域で、興味深く読みました。
少し残念だったのは、注の中で本書の一部を参照する際、きちんと邦訳書の頁を書いてくれている場合もあれば、原著のままの表記で、邦訳書では何ページに当たるのか分からない場合もある点です。また、原著にはない図版も豊富に掲載されているのは嬉しいのですが、プロテスタントに関する議論の中で 13
世紀のモザイク画が挙げられているのがやや疑問でした。
あまりに長いので、流し読みにならざるをえない部分もありましたが、とにもかくにも通読してみました。大罪に関する議論や説教史料の引用は自分の勉強にも大いに刺激になり、勉強になる一冊でした。
(2022.11.13 読了 )
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