能登の手染め日記

能登の手染め日記

Feb 14, 2007
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カテゴリ: 染色
染めは水のアート(その2)

それはまだ私が草木染を始めて経験の浅い頃のこと、中学校から講習の依頼が来た。与えられた時間は2時間。あらかじめタマネギやソヨゴ、ヤシャブシなどを炊き出してアルミ媒染、銅媒染、鉄媒染の見本を作って出かけた。2クラス70名ほどの生徒をグループ分けして好みの色を染めてもらう段取りだった。

割り箸と輪ゴムと綿糸で木綿ハンカチに絞りを施す。見本を見て各自自由に絞ってもらう。
染めは20分、布を上下する生徒以外は手持ち無沙汰な時間だ。
「人は裸の時代からやがて木や草の繊維を体に巻きつけ、時代を追うごとに衣の繊維は細くなり、泥水で染めたりして色をつけ、だんだん模様が発達し衣服を楽しみ生活を楽しむようになったんだよ。人々の工夫の上に今の私達の暮らしがある・・・」などと講釈をたれて退屈させないように。時には作業をしない生意気な生徒の横で「お、暇そうな君には前へ出て次のことをしてもらおうか」(笑)等とわいわいやっていた。

染め始めて5分?・・・10分・・・???
ソヨゴとヤシャブシの染めが良くない。変だ。染まりつきが悪い。
15分、おかしい。染まらない!何故?
染料が異常ないか?腐っていないか?少し早めだが媒染をかけよう。急いで媒染剤を用意し発色を確かめる。・・ダメだ色が出ない。



「今日は都合が悪くて染まりませんでした」って、そんな説明はできない。
なんとしても染めるしかない。染と媒染を2回繰り返し2時間で講習を終えるスケジュール。余分な時間はない。

原因は何?分からない。
時間がない。決断のときが迫る。もはや行儀の悪い生徒も相手にしていられない。時間を見ながら染3回、媒染を3回、いつもより染料をタップリ加え媒染剤も濃くした。持ってきた余分な染料の全てを使い果たし、少し薄めだが染め上げた。結局、休み時間に少し食い込んだが、最後は強引に話をまとめ、なんとか授業を終えた。

片付けながら布の状態、媒染剤の状態、染料のpH状態、水のpH状態・・・え?
この学校の水道水、pH5の前半?・・・酸性水!!!!
くっそう原因はこれだ!カルキと塩素の入った水が屋上のタンクに貯められている。酸性分が濃縮されている?お婆ちゃんたちと一緒に染めている公民館の教室の水は、それほどでもなかったから染まるのが当たりまえと思っていたことが落とし穴になった。

草木染は絹や羊毛の動物性繊維にはよく染まるが、木綿や麻には染まりにくい。井戸水や地下水、湧き水は場所にもよるがpH8程度かそれ以上で、これも比較的染まりやすい。講習会は綿のハンカチで酸性の水を使う・・・条件は最悪だった。

自然のものを使って昔と同じようなことをしようと思っても、今の時代は環境自体が変わっている。一見キレイで透明だが、その水の成分は分からない。

染まる水、染まらない水があろうとは思ってもいなかった頃の失敗談。

それ以降、講習会があると初めに水のpHを確認するようになった(^^;






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Last updated  Feb 14, 2007 11:24:13 PM
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