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2025.09.18
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今からちょうど二十年前の春のこと。
三日目の朝は、旅の疲れがじんわりと体に残っていて、窓辺でゴロゴロと喉を鳴らしながら、陽だまりの中で毛づくろいをしていた。
カーテンの隙間から差し込む光が、まるで金色の糸のように部屋を縫っていて、空気にはほんのりと温泉の香りが混じっていた。
今日は海沿いを走ってみようかにゃと、しっぽをくるりと巻いて、今治へ向かうことにした。
いつもは山越えで松山に入るけれど、今回は潮風に誘われて、海のきらめきを追いかける旅にしたのだった。

途中、小説坊ちゃんに登場するターナー島を見ようと車を止めようとしたけれど、そこは工場の裏手で、コンクリートの壁が静かに立ち並び、潮の香りと機械の低い唸りが混ざっていた。
駐車スペースも見当たらず、残念ながら断念したけれど、フェンス越しにちらりと見えた島影は、まるで物語の中の幻のようだった。


※画像はAIによる生成(Copilot使用)


石造りの壁にツタが絡まり、入口の扉を開けると、ふわりと綿の香りが鼻先をくすぐった。
館内では、白い糸がガシャンガシャンと音を立てる機械に吸い込まれ、モコモコと色とりどりのタオル生地になって吐き出されていく様子に、目がまん丸になった。
まるで魔法の工房に迷い込んだようで、機械のリズムに合わせてしっぽが揺れていた。

最上階では、タオル生地で作られた絵本が展示されていて、ページをめくるたびにふわふわの世界が広がっていた。
展示の一角では、二匹のぬいぐるみが絵を見て感動していたり、真似してポーズをとっていたりして、思わずにゃんて可愛いと声が漏れた。
タオルの動物園では、虎やライオンが檻の中でにっこりと微笑んでいて、小さな子供たちが歓声を上げながら走り回っていた。
両親がそろそろ行くよと声をかけても、子供たちは動物たちに夢中で、なかなか離れようとしない。その様子に、わたしもつい笑みがこぼれた。


※画像はAIによる生成(Copilot使用)

外に出ると、ヨーロピアンガーデンが広がっていて、紫色の藤が風に揺れ、ラベンダーの香りがふわりと漂っていた。
ミツバチが忙しそうに飛び交い、花と花の間をぴょんぴょんと跳ねるように移動していた。
そんな優雅な時間を過ごしていたら、いつの間にかお昼になっていて、今治ラーメンをいただいて、しまなみ海道へと出発した。


見学できるのは大三島だった。にゃんともおっちょこちょい。でも、旅猫はめげない。
再び大三島に戻って工場へ向かった。
工場では、外国から天日海水塩を輸入しているという話に耳がピンと立った。
沖から汲んだ海水を溶かして、砂や泥を取り除いた後、昔ながらの製法で塩を作っているそうで、しょっぱいけれど、なんだか心が温まる話だった。
工場の中はほんのり塩の香りが漂っていて、空気がキラキラと結晶のように感じられた。




因島に向かう途中、多々羅大橋が美しく見える場所を発見して、思わず車を止めて写真を撮った。
斜張橋の優雅なラインに、しっぽがふわりと揺れた。
橋のワイヤーが風に鳴る音が、まるで琴のように響いていた。
水軍城では、はにわの船から帆船、現代の船までの歴史が紹介されていて、最後には宇宙戦艦ヤマトが登場して、えっここでと笑いがこみ上げてきた。
因島は旧呉海軍工廠があったから、戦艦ヤマトとのつながりもあるのかもしれない。

島の最後の観光地として訪れたのは、碁聖本因坊秀策の碑と記念館。静かな庭園の中に石碑が凛と立っていて、風が木々を揺らす音が、まるで碁石の打つ音のようだった。
資料館では、水軍の船の模型や、兜、陣羽織、刀などのコスプレ体験もできて、にゃんとも楽しい仕掛けがいっぱいだった。

尾道に到着すると、カーナビにケーブルカーのマークがあって、千光寺山へ向かうことにした。
坂道を登っている途中、ふと振り返ると、海と町並みが重なった絶景が広がっていて、まるで映画のワンシーン。
すると、目の前を猫が通り過ぎていって、おや仲間かにゃとしっぽがピンと立った。
千光寺公園から文学の小道を歩きながら、尾道に縁のある詩人たちの歌が刻まれた石碑を眺めて千光寺へ。
堂内からは尾道市内のパノラマビューが広がっていて、風が頬を撫でてくれた。


※画像はAIによる生成(Gemini使用)

市街地に移動して、招き猫美術館を目指して住宅街を散策していたら、気がつくとまた千光寺に戻っていた。
でも、そこから坂道を下っていくと、石に描かれた招き猫たちが道案内をしてくれて、不思議な世界へ迷い込んだようだった。
芸術品のような怪しい屋敷に入ると、招き猫たちが火鉢に住んでいたり、神社で祭られていたりと、まるで猫の国に迷い込んだようだった。
石に描かれた招き猫を探して回るうちに、目的の美術館にはタッチの差で入館できなかったけれど、道中でも色々な招き猫を見て楽しんできた。

ホテルから見える夜景が良かったので、尾道駅前まで散歩に出かけた。
尾道水道を横切る小さなフェリーや向島の造船所の光が海面に映し出されていて、まるで星が水に溶けているようだった。
駅前に出てくると、夏をテーマにした像が立っていて、数日前に開催された港祭りのイルミネーションがまだ残っていて、夜の空気にきらめいていた。
あの夜の風の匂い、光の揺らぎ、そして静かな波の音が、今でも耳の奥に残っているような気がする。
にゃんとも素敵な一日だった。


※画像はAIによる生成(Copilot使用

にゃんとも懐かしい、あの旅の最終日のことを思い出すと、今でもしっぽがふわりと揺れるんだ。
今からちょうど二十年前、春の陽気に包まれた尾道の朝。
ホテルの窓辺でゴロゴロと喉を鳴らしながら、今日の予定を考えていた。
もともとは高速で九州へまっすぐ帰るつもりだったけれど、旅の終わりにしては少し味気ないにゃ。
そこで、ホテルのロビーで広島県の観光案内をネットで探してみると、「てつのくじら館」が「大和ミュージアム」のすぐ近くにあるという情報を見つけて、思わず目がまん丸になった。

これは寄り道するしかないにゃと、しっぽをピンと立てて、呉と宮島を経由して帰ることに決めた。
カーナビに目的地をセットして、エンジンの音とともに旅猫の冒険が再び始まった。

呉に到着すると、まず向かったのは「てつのくじら館」。
その名の通り、巨大な潜水艦がドーンと建物の前に鎮座していて、まるで海から飛び出してきた鉄の怪物のようだった。
外見は三階建ての学校くらいのサイズで、艶やかな黒い船体が太陽の光を受けてキラリと光っていた。
館内に入ると、まず驚いたのはその入場料。なんと無料。
自衛隊の教育施設として作られたそうで、一般公開されているのがありがたいにゃ。


※画像はAIによる生成(Copilot使用

潜水艦の内部に入ると、空気がひんやりとしていて、金属の匂いが鼻先をくすぐった。
通路は猫一匹がやっと通れるくらいの狭さで、映画で見たような秘密基地のような雰囲気。
ぼけ〜っと歩いていると、天井の低さに気づかず、頭をゴンとぶつけそうになって、あわてて耳を伏せた。
百聞は一見にしかずとはこのことにゃ。

二階には掃海に関する展示が並んでいて、機雷や掃海具がずらりと並んでいた。
昔の話かと思っていた機雷の撤去が、今でも続いていると知って、思わずしっぽがピンと立った。
知らない間に守られていることに、静かに感謝の気持ちが湧いてきた。

道路の反対側にある「大和ミュージアム(2025年はリニューアル中)」へと移動すると、遠足に来ていた小学生たちの元気な声が響いていて、館内はにぎやかだった。
わたしもその波に乗って、まずは一〇分の一スケールの戦艦大和の模型を見学。その大きさに圧倒されて、しっぽがふわりと揺れた。
小学生たちは歴史展示のコーナーには目もくれず、「大きいね〜!」と声を上げながら船の模型の周りで遊んでいた。
遊びながら自然と学べる展示になっていて、遠足の目的地としてはぴったりだにゃ。

特別展では潜水艦の歴史が紹介されていて、日本では江戸時代に「うつろ舟」と呼ばれる潜水艦のような構造物があったという話に、耳がぴくりと動いた。
模型も展示されていて、昔の人の発想力に驚かされたにゃ。

呉を後にして、カーナビに導かれながら広島市内を抜けて、宮島フェリー乗り場へと向かった。
世界遺産に登録されているだけあって、駐車場は満車で、しばらく待つことになった。
車の窓を開けると、潮の香りがふわりと漂ってきて、旅の終わりにふさわしい風景が広がっていた。


※画像はAIによる生成(Gemini使用)

フェリーに乗って宮島へ渡ると、船のエンジン音がゴウンゴウンと響き、波がチャプチャプと船体を撫でていた。
干潮だったこともあり、厳島神社の大鳥居の近くまで歩いて行けるということで、しっぽを揺らしながら砂浜を進んだ。
近くで見た大鳥居は、思っていた以上に大きくて、朱色の柱が空に向かって堂々と立っていた。
観光客よりも潮干狩りを楽しむ人々の姿が多く、熊手を持った子供たちがキャッキャと笑いながら貝を探していた。

大鳥居から厳島神社を眺めながら、ふと昔の人々のことを思った。
この島全体が神様の領地で、神社はその玄関口。
小船に乗って、波を越えてやってきた人々は、どんな気持ちでこの鳥居をくぐったのだろうか。そんなことを考えながら、門前町を散策した。

フェリー乗り場へ戻る途中、今年人気だという「揚げもみじ饅頭」の店に行列ができていた。
紅葉饅頭を天麩羅にしたもので、外はサクサク、中はほくほく。
餡子の甘さがちょうどよくて、口の中に広がる香ばしさに、思わず目を細めた。
揚げたての湯気がふわりと立ち上り、鼻先をくすぐる香りに、しっぽがぴょんと跳ねた。

こうして、にゃんとも充実した最終日を過ごして、旅猫の冒険は幕を閉じた。
あの時の風の匂い、光の揺らぎ、そして人々の笑顔が、今でも毛並みに染み込んでいるような気がする。
またいつか、あの道をふらりと歩いてみたいにゃ。

「しまなみの風と、道後の湯と、にゃんこの記憶」は4部作です。
下記のリンクをクリックすると、各ページに移動します。

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最終更新日  2025.09.19 22:58:33
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