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これはDVDです。 今は亡き五社英雄監督が1978年にとった作品。 主演は仲代達矢 、脇を固めるのが岩下志麻 、加藤剛などです。ほかに長門裕之、あおい輝彦などが出演しています。 この作品で面白いのは、雲霧の兄役で出演している辻蔵之助役の松本幸四郎(初代・松本白鸚)です。父親である市川染五郎(現・松本幸四郎、ちょっとめんどくさいですが)にしてみれば、親子共演の作品です。しかも、父親は火付盗賊改め方長官、長谷川平蔵を演じていましたからね。 この映画は、とても小説に忠実に書いており、理不尽な時代と、義賊の仁左衛門を捕らえる立場にある盗賊改め長官の苦悩も描かれています、 珠玉の1作と思います。評価:☆☆☆☆☆
2009.06.30
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久し振りの再開で、いきなりの「さらば」はないだろう、というご意見もあるでしょう。 このDVDは自分用に入手したもので、僕自身久し振りに観ました。 いくつかの昔話を密偵たちが思い思い語る話ですが、その中から今日は一つ。 「むかしの男」 この話は、平蔵の妻、久枝の話です。 久枝の昔の男は悪になっていて、悪事の末、平蔵に捕まります。 土蔵の中で語り合う、昔の男と平蔵。その会話が見事です。 「久枝を女にしたのは、この俺だ」 高笑いする男。 外でその会話を盗み聞きする久枝だ。 男のその言葉を聞いても、たじろぐ様子のない平蔵。返した言葉が惚れ惚れする! 「そんなこたあ百も承知だ。承知の上で俺は久枝をもらったんだよ」 「久枝を本当の女にしたのはこの俺だ。惚れ抜いていなければわからんことだ」 「このことを知っているのは、俺と、久枝だけだよ」 「惚れ抜かなければわからんものよ」 この当時、処女を無くした女性は、「傷物」と呼ばれていた(蔑称ではありませぬ。念のため)。平蔵も遊んで遊んで、その末に自分の行き方を見つけた男だ。だからこそ、遊ばれ捨てられた久枝の心情が痛いほど分かるのだろう。分かるからこそ、久枝を嫁にした。 男の本当の強さと優しさを見た思いがします。 格好だけの優しさは、言葉も行動も軽くなる。反省しきり… このDVDは、鬼平の魅力だけではなく、男の生き様を学ぶにはいい話がつまっています。 これからも頑張って書いていきますので、引き続きごひいきに!
2008.09.11
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第2シリーズ第12話、「雨乞い庄右衛門」は、池波先生の人生観を思わせる話です。 小説のほうがどろどろ感がありますが、映像のほうは、泣けます… 庄右衛門役には今は亡き田村高廣が、絶妙の演技を魅せています。僕の好きな俳優さんの一人でした。 この話の主軸は、岸井左馬之助。 左馬之助が法事の帰りにであった人物が、庄右衛門だった。 この話はCSを見て書いていますが、百姓村で水車を足で回す百姓を見ながら、つぶやく庄右衛門の一言は忘れられません。 「あれも人生…」 選ぶのは自分で、そこに自分の幸せがあれば、人がどう思うとそれが幸せ、人生なのだ、という。 思いつめれば、そこには思いが詰まった、先のないことしかないのだろう。庄右衛門は自分を裏切った子分と自分の娼婦への復讐と自分の心臓が動いている時間の差で生きた証を自分で確認したい、そんな庄右衛門を田村高廣が演じます。 自分の人生を考えると、自分本位と信念の狭間で生きていることが、怖くもあって、生きている、仕事をしている、という気持ちを維持できる。 この世には、自分の「力」をお金とか、自分の体力とか、勘違いをして生きているものをいますが、それはそれで可哀想なんだと、ようやく、最近、今日かな、思うえるようになりますた。 左馬之助の考え方、そして、それを全て受けいれる鬼平の度量。 この話は、泣いてください。
2008.04.21
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久しぶりのTVドラマ! 思わずDVDに録画しました。 鬼平はもはや吉右衛門のものは見られないであろう、と諦めていました。そんな中で、まさやの秋山小兵衛登場には、嬉しい限り。 鬼平中間部屋ですが、まあ、池波先生の作品つながり、ということで。 この話は、小説ではあまり覚えていません。ただ大二郎の名をかたる辻斬りの事件からこの話は始まります。 松平と一橋との間の政権争いがこの話の根底。 鬼平でもありましたなあ。それこそ、今の世の中にはありきたりになってしまっている情けない話ですが。 ラストの方では、話し合いをしない片方(双方ではないのが味噌ですが)の思い込みから事件が大きくなった決着をつけます。 今会社勤めをしておりますが、こういった「話をしない」「相手を知ろうとしない」という片方だけの思い込みの事件や出来事が日常茶飯事。情報伝達の薄い江戸時代の頃とは違う現代で、自分の意見だけを通す世の中、会社、社会というのが寂しい限りです。 そんな世の中に報いたいのもあって、ある計画を僕が立てています。 「不便な穏やかな暮らしのできる街」 そんな世の中は、小兵衛、鬼平の生きた時代の目標だったように思う、ドラマでした。
2008.04.14
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ここ最近、鬼平との接触が薄く、自分としても寂しい限りですが。 そんな中で、実を言えば、僕自身映画が阿呆みたいに好きで、最初に見た映画は東宝マンガ祭りの「海底2万マイル」のアニメでした。これは小学2年生のときに、寿司屋の息子と二人で、おやつを母親に持たせてもらって観にいきました。わずか8歳の冒険ですが、楽しかった。 それからは、お小遣いがなく、映画館の前で座って、中からもれてくる音と、映画館の前に張られている写真(「ガメラ」が大半でしたが…)を見て育ちました。 そうこうして大人になって、たくさんの映画と出会えるようになると、僕は好きな映画を手元に残したい性質なもので、当時結婚してましたが、総額150万円くらいかけて、500本以上のDVDを買い集めました。 その中で、今日CSで懐かしい映画を見ています。 「俺たちは天使じゃない」 自殺してしまった彼の俳優さんのドラマじゃなく、1989年にロバート・デニーロとショーン・ペンが主演した、ハンフリー・ボガード主演のリメイク版。しかもコメディ。この当時、デニーロはこういったコメディタッチの映画に数多く出演していました。 この映画は、脱獄囚のふたりが、カナダへの国境を越えるために、神父に成りすましてある町に居座りながら脱出の機会を待ちます。さまざまな人々と出会いながら、ショーン・ペン演じる偽のブラウン神父は本当に神父の心に目覚め、そして常に逃げることを最優先にするデニーロ演じる神父は、様々な脱出方法を考えては焦り、につかわない神父をぎくしゃくと演じるコメディを見せます。 娼婦のような人妻を演じるのはデミ・ムーア。まだこの当時はさほど有名じゃなかった。若いです。 この映画は全般を通じて、「人情」が見えます。人の「やさしさ」と「信じる気持ち」が見えます。 だから好きですね。根底に、鬼平がいるような、そんな映画です。
2008.04.10
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新しい家に引越し、CSが設置されていることから、DVDをレンタルせずにテレビで「鬼平犯科帳」が見られるようになりました。嬉しい限り。 そんな環境で、ようやく、久し振りに「鬼平犯科帳」を見ました。 この話は、左とん平がゲストの「白い粉」です。 小説では、この話で岸井左馬之助の祝言があるのだが、映像バージョンでは残念ながらない。 映像は本郷の湯島天満宮門前の、料理屋「丸竹」の二階奥座敷で酒を呑む三人の盗賊の姿から始まるのだ。 花輪の万蔵、駒羽の七之助、もう一人が霰の小助。こいつら、たまさか急ぎばたらきで血を流すこともある盗賊だった。 そして、彼らの目の上のたんこぶが、長谷川平蔵、鬼平だ。 彼らは鬼平が病気にでもなれば、と願う、そこで、鬼平を二度と表に出られないような「病気」にしてしまおう、と密談をしているのだった。 さてさて、平蔵の好物は何か? 実は上方(大坂:おおざか。当時の大阪は「坂」の字を使って、「ざか」と濁って発音したそうな)でいう「あぶらめ」という魚が大好物。関東では「鮎並(あいなめ)」という。この煮つけを好物としている平蔵であった。 この鮎並をうまいこと煮付けて平蔵に出しているのが、とん平扮する勘助だ。この勘助、五鉄の亭主三次郎が平蔵に「使ってやってくださいまし」と頼み込んで差し向けてよこした人物。給料も三次郎が払う、とまで言う。 そんなある日、久栄に平蔵が言う。 「このごろ、勘助はどうかしている。こころに何ぞ、屈託があると見える」 と。 ほんの些細な心の乱れを、料理の味付けから察知する平蔵、…怖い… この勘助、31歳にして始めて所帯を持った。この当時、31歳の男の初婚は遅いのだ。その理由も、博打だ。 ある日、博打場に顔を出してしまった勘助が15両という借金を作るのに間もなかった。だが、この借金、実は三人の盗賊が仕組んだ罠だった。 小助からの置手紙が留守宅に残されて、女房のおたみの姿はなかった…。 そして借金は15両から98両2分に増えていたのだ。 とても働いて返せるような額ではない。 そこへ、借金を棒引きにする代わりに、「白い粉」を平蔵の吸い物に混ぜるように言う小助。 「だが死なないよ、かわりに病気になってもらうだけだ。三月もすれば元通りになるが、その間に俺たちは一仕事をするというわけだ」 これが計画だった。 そしてこれを実行した勘助。毒入り吸い物は平蔵の卓へ運ばれる。 事件が動き出し、盗賊も動き、勘助の身が危なくなって…。 この事件の解決の糸口は、鼠、だった。 小説では、そのからくりを左馬之助に言うのだが、DVDでは彦十に言う平蔵だったのだ。 信じるものが、守りたいもののために自分を裏切っても、なおもその罪を胸に抱くのであれば、悔恨を抱えさせて、人生を生きさせる。これも優しさなのだろう、と思います。非常に厳しい優しさ、ですが。
2008.02.18
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年末年始は引越やらで、小説を読むまもなく、またDVDも見られず、で日記を書けませんでした。 今度の家はDVDを借りなくとも、放送で鬼平犯科帖を見ることができるので、非常に嬉しい限りです。が、これまた見る時間が限られており、なかなか先にいけません(涙) 早いうちにまた復活しますので、よろしくです。 しかし、間が空くとわけの分からないコメントを書かれてしまいます…
2008.01.23
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これはDVDの方が面白いかもしれないです。 共演は今は亡きフランキー堺だ。平蔵、ついに盗人になる、ていう話です。 とはいえそこは長官平蔵。きちんと仕事をしております。 今日は短いブログです! 盗人三か条、は度々出ますが、このフランキー堺の盗人は、盗法秘伝では7か条を信条としております。さらには、「盗みお目当て」という嘗め役の帳面までも用意している。さすが! このDVDは、くすっと笑ってしまえる、人情あふれた話です。 「盗人ってのは天上天下一人だ。女房も子供ももっちゃいけねえ」 まあ犯罪者ですからね。 「でも、ここ最近じゃあ寂しい…」 人間くさいセリフが、ほろっとさせます。 この善八、憎めません!(^^)! 途中、身分を隠しての道中の平蔵、地元の町方から盗人に間違われて取り囲まれますが、まあ、そこは地元に知り合いもいる平蔵、難なく切り抜けます。 最後に伊砂の善八が盗んだ600両余りのうち、50両を善八に渡し、盗法秘伝の8か条目に加えることを言い伝えます。それは小説を読んだり、DVDで楽しんで欲しいですが。 この話はすかっとします。
2007.12.14
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この話は長官としての、千切れるような思いをする平蔵が痛ましい話です。 発端は、大川(隅田川)で一艘の小舟の上で行ったことだ。舟には、茅場町薬師町で薬種商の橋本屋助蔵、今一人は船頭の留吉、そして中年の侍一人。 その侍、いきなり橋本屋を切り川に投げ捨てたものだ。驚いた留吉に、「このことは他言するな。橋本屋は沈んだままか、見てくれ」と川を見るように言う侍。震えながらも川面を見る留吉の、その首がはねとぶ。侍は誰も見ていなかったと思い、舟を漕ぎ出すが、之を見ていたものがいた。 実は、この惨劇がある少し前に、少し離れた場所で、仲間と盗んだ金の分け前の件で揉め合い、相方を殺した男であった。 この話は馬蕗の利平治の話の後に起こった事件だ。 平蔵が同心溜まり部屋を通りかかると、剣の達人である富田達五郎が一人、文を一心に読んでいる。平蔵を見て驚く達五郎。 (はて…) 剣術の達人ならば平蔵が近づいただけで分かるものだ。だが富田は気がつかなかった。そこがおかしい、と平蔵の勘働きが、何か妙だと告げている。 そこで、平蔵は密偵の粂八に(小説では伊三次なのだが、DVDではすでに伊三次は死んでいるので、粂八にしたのだろう)門番に探りを入れるよう依頼する。 その後、平蔵は「穴」で登場する元盗賊の、今は扇屋平野屋源助の手も借りることとする。DVDではこの源助、登場しません…。 さて、富田の仕業を見た男は、盗賊で竹松、という。この竹松の弟を富田に殺されたことをうらみ、富田を脅していたのだ。その脅しの文句が、富田が見ていた文なのだ。 気になるのは富田も同じ。誰がこの文を持ってきたのか。門番の又造を冨岡八幡宮前のうなぎ屋「魚熊」に呼び出し、聞くが、又造が「粂八さんにも同じことを聞かれましたが、何か大事な用件なので?」と聞き返される。そこで富田、はっとする。 (お頭に感ずかれている…) このシーンは小説には登場しません。 帰ってこない門番又造を心配する役宅の同心の元に、殺されているという通報が入る。 夜が更けてから、密偵の粂八を呼び出し、目白台の平蔵の私邸に隠れるよう伝える。 「富田さまの仕業だと…」 「わかからぬ。わからぬが次はお前のような気がする」 と言う。 ここで平蔵の勘は、徐々に確信へと高まっていくのだった。 なぜなら、あまりにも呼吸が合いすぎているからだった。だがわからないことがある。なぜ同心の富田がこのような真似をするのか。そこがわからない。 仲間を疑うのは後味が悪い。役目の遂行にも支障をきたす。 ここで小説では平野屋の番頭が密偵役を買って出て、富田の周辺を探り出すのだが、DVDでは彦十がこの役になっている。さてここで富田の回顧になる。 一人娘のお幸が大病を患い、心配から心身ともにバランスを崩していた富田は、見回りの最中、酔った侍に因縁をつけられ、思わず切ってしまう。その場面を橋本屋に見られて脅されていたのだ。 そして脅迫金100両を集める為に、あろうことか辻斬りまで働くようになる。 こうなると、これを見張っていた彦十、もう限界だとばかりに平蔵に告げる。 平蔵ももはやこれ以上罪を部下に重ねさせるわけにもいかない。 ついに池之端仲町の煙管の紀伊国屋を襲撃する事を決める。なんとしてもあと2日で95両を作り、黒幕を倒さねば自分の身が危ない。 さて踏み込もうとしたその瞬間、「待て!」と闇の中から富田に声をかける男。 「おれだ、長谷川平蔵だ」 覚悟を決めた富田は、猛然と平蔵に切り掛かっていく。剣術の達人といわれた富田ゆえに、平蔵も気が抜けない。刀を合わせつつ、ついに切り捨てる平蔵だった。 「人というのは初めから悪の道を知っているわけじゃねえ。悪事を隠す為に悪事を働く。富田もおよそそうであったのだろうよ」(小説のこの長回しのセリフをDVDでも吉右衛門がきっちりと言います。ここが切ない…) そうつぶやくと、平蔵の目頭に涙が…。 泣き顔を隠すかのように、窓の外で降りしきる雪を見ながら、「こいつは積もりそうだ…」つうやく平蔵。その横顔が寂しい。 部下に裏切られながらも、その部下の妻女を思い、悪事を秘密裏に処理してしまうのだが、まあ現在で良し悪しは別として、平蔵の気持ちは分かる気がします。
2007.12.07
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11月はまともにブログも書けずに、あっという間に年の瀬、師走、2007年ラストの年です。先週27日から30日の4日間、九州の熊本から始まって、鹿児島、久留米、北九州、長崎と仕事で出張していたため、まともにブログにむかえませんでした。 九州は、以前の前妻の四国よりも活況がある、とずっと思っていましたが、福岡に通っていた頃から9年を経て、なかなか風情を感じられる年になりました。 熊本は初めてでしたが、熊本城を見て、市電に乗り、そして鹿児島に移動。リレーをする電車って初めて乗りました。まあ、乗り継ぎ、なんですけどね。 平蔵が生きていた頃の九州は、本土とはつながっていなくて、ある意味、治外法権の島国でしたからね。そんな時代でも出島には外国人が住んでいた。その出島も教科書でしかみたことがなかったのですが、2010年までに再現をするために今再建中らしいです。 さあ、今年最後の12月、平蔵も雪の中で活躍をした師走です。次回から冬の平蔵を紹介できたらと思う、12月でした。
2007.12.03
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この「あきれた奴」は二人の男を指して言う。一人は、同心小柳安五郎、そしてもう一人が元は盗人の鹿留の又八。 DVDでは、この小柳、を中村橋之助が演っている。この後、橋之助は今度は盗人役で出演する。 DVDと小説と大きな違いはこの、橋之助役なのだ。小説では小柳だが、DVDでは役名が岡村啓次郎となっている。岡村、という名の同心は、小説では出てこなかったように記憶していますが、定かではない。 ただこのブログでは、紛らわしいので、小柳でいくことにします。後々の小説の話の中でも、この小柳伝説は度々登場しますから。 さて、この小柳、日影の長右衛門の大きな捕り物の夜に、妻子を亡くす。この日、妻は出産だったのだが、難産の挙句に、生まれたばかりの子供ともに死なれてしまう小柳だった。 「小柳、ゆるせよ…」 うめくがごとく平蔵が言う。 この「ゆるせよ」を漢字ではなく平仮名で書くあたりが、平蔵の部下を思いやる人柄を表していると思います。池波先生のきめ細かい筆力でしょうね。 それからの小柳は、人が変わったように捕り物に精を出します。まあ、以前からもまじめな小柳ゆえ、捕り物にも頑張っていたんですが、妻子を亡くしてからはなおも一層の働き、となっていたようです。 そんな小柳が、ある夜、橋から身投げをしようとする母子に出会います。これを取り押え、救いますが、これがなんと、捕り物で捕まえた又八の女房と子供だったのだ。 事情を把握して、又八に牢獄で会い、ある日、又八を逃がす。目的は、又八と一緒に寺に盗みに入り、2名を殺した相棒を捕まえる為。捕まえて戻るかどうかも分からない、ましてや役目柄、盗人を解放して相棒を捕まえさせるなんてことを思う事など、盗賊改方の同僚同心には皆目分からない。唯一、この思惑を理解したのは平蔵だけだったのだ。後に、こういった泳がして、身内さえにも黙って事を運ぶことを知る平蔵だったのだ。 そして月日は流れ、半年。平蔵も泳がす期限を半年と見ていたが、なんと、又八は相棒を捕まえて役宅に戻ってきた! 「なんと、まあ、あきれた奴らじゃ!」 とことの経過を又八から聞き、高笑いする平蔵。 又八は死ぬのを覚悟していたが、そこは平蔵、はからいによって八丈島7年間の遠島の処罰だけに済ましたものだ。 その後の又八の母子を見舞う小柳と、これをそっと見守る平蔵の安堵した顔でこのDVDはエンディングに入ります。 今では考えれられないことですが、部下が犯罪者を信じ、そんなことをする部下を信じる上司。横幅が大きい、すべてを見通せる心根を持っていないとできない、そんな事件の話でした。
2007.11.19
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この話は事件らしい事件が起きない、人間模様が題材となっています。登場する市口又十郎とはこの話の後、平蔵と長い交友を重ねることとなります。 DVDでは市口役を雄浩さんが演じていますが、見た目が強そうだけど、どこかおっちょこちょいで気が弱い、といった役を演るにはまったくもって適役の役者さんです。 さて、話は忠吾が今の麻布周辺の探索担当を面白くない、と思っていたことから始まる。小説とDVDとの違いは、小説ではすでにおたかと所帯を持っている忠吾だが、DVDではまだ独り身で、平蔵がそろそろ忠吾も身を固めさせなければと考えていることになっている。 その忠吾、盛り場も少なく、寺社仏閣、大名屋敷の多い麻布一帯は味気ないと思っている。それまでは長官の平蔵が何かにつけて見回りに同行させてくれたものだが、この頃はちっとも声掛りがないのも、面白くないと思っていることのひとつだ。 小石を腹いせ交じりに蹴る忠吾。一つ目は犬にあたり、二つ目は壁。そして、三つ目を蹴らなければ事件は起きなかった、とある。 この小石、なんと屈強そうな浪人のすねに命中してしまったものだ。 「何をするか!!」 叫ぶ浪人に、「その石くれは、よほどおぬしが好きだったのだろうよ」と毒づく。これはいけない。 「おのれ!!」さらに怒った浪人は、刀を抜いて忠吾に切りかかろうとするが、そこは盗賊改方で長年修羅場をくぐってきた忠吾、抜こうとする刀をおさえ、浪人の股間を蹴り上げた。これは男には堪らない。うずくまる浪人を尻目に、逃げる忠吾…。いやはや、情けない。 この事件は、俗に「一本松町道」と呼ばれる、長善寺の寺の傍らの、藁葺き屋根の茶店の門口に、松の老樹の近くだ。この松を「麻布の一本松」と所の人々が呼んでいるものだ。 その4日後に忠吾はまた麻布に現れる。というか、見回りに出た。その4日間は浪人に仕返しをされないようにと、麻布に近寄らなかった忠吾なのだ。 茶店で酒を頼む忠吾に、年のころは24、25の娘が声をかけた。まあ逆ナンパです。忠吾は、おうでれでれで、4日前の一件を見ていたと、名をお弓という女の言葉を信じた。お弓は半月ほど前に、この浪人に、今の千代田区平河町付近の平河天神境内で絡まれたのだという。振り切って逃げた、と悔しそうに言うお弓は、忠吾が浪人をのしたので、嬉しかった、と。 明後日会うことを約束した忠吾は、翌日平蔵と見回りに出かけます。場所は麻布の鼠坂、植木坂と呼ばれるそこで、曲者どもに襲われ、忠吾は足に怪我をしてしまう。 翌日、杖を突いてでも見回りに出たいという忠吾を尻目に、麻布に探索にでかける。 ここで、小説では旧知の設定で、市口又十郎と平蔵が出会うこととなっている。DVDでは盗人を捕まえた市口に礼を言いに、市口が開いている道場に平蔵が出かけることとなっている。小説では「助太刀」という話の中で、この市口又十郎は登場しますが、テレビ版では時系列でも接点がないことになっています。 市口から、2日前の石ころ事件を聞き、どうやら忠吾が関わっているらしい、と直感する平蔵。 さて、この市口の失態を見ていたのがお弓だ。お弓は市口の道場に近い、宮下町、末広稲荷の裏手にある飯倉新町の草履問屋・田丸瀬兵衛のお手伝いさんだ。瀬兵衛は80歳近い老人。まあ、お弓は悪い娘ではなく、市口に惚れている。そこで、忠吾にやられた市口の仕返しをしてあげようと、忠吾を引っ掛けたのだ。 一部始終を理解した平蔵。寝たままの忠吾の見舞いに行くと、 「一本松の茶店で、お前を待ち焦がれていた人にあったぞ」と言うと、忠吾、驚愕の態。さらに「その人をな、連れてきてやった」という。 おどろきながら、お弓が来てくれた、と思うと顔がゆるむ。 「さ、ここへ参られよ」と平蔵に促され、現れたのは、市口又十郎! あまりの驚きに気絶する忠吾だった。 小説はここで終わるが、DVDでは、平蔵が市口とお弓が結婚するであろうと、微笑ましく帰っていく市口を見送って終わるのだ。 ほのぼの、人情バージョンの話でした。
2007.11.16
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三田寺町の魚籃観音堂経済の茶店の亭主におさまっている、泥亀の七蔵の話から始まる「男の隠れ家」は、話が進むに連れて、なにやら事件なのか、小噺なのか分からなくなります。そこがこの話の面白いところ。 この話は「泥亀」のその後の話になりますが、そもそも、持病の痔の治療の帰りがけに、七蔵が玉村の弥吉を見かけたところから始まります。 この弥吉、奇妙な顔付きをしているそうです。 ずんぐりむっくり、顔は小さく、脳天は尖っていて、髷がうまく乗らないので、思い切って頭を剃りあげてしまったのが弥吉。 舞台は、今の田町付近、伊皿子坂台町の手前を左へ曲がり、聖坂を下った先にある功運寺あたりの、汐見坂となっている。かなり細かく地形を書いてあるので、地図を見ながら探してみるのも一興かと。 ここの小間物屋と酒屋の間の路地を入った一軒家に、どうも弥吉はいるらしい。 この七蔵、昔は牛尾のお頭のところに七蔵と一緒にいたのが弥吉で、盗賊なのだ。だが、流行の急ぎ盗みをするような男ではなく、三か条をきっちり守る男。 「これは大きな魚がかかるかもしれない」 と佐嶋忠介。うなずく平蔵。たちまちに見張り所が設けられ、弥吉を取り囲むように見張る密偵と同心たち。 ここに、不審な男が登場する。 編み笠を深くかぶった、少し小太りの男。この男と弥吉がどうもつるんでいるらしい。男は50歳前後、弥吉の宿に出入りをしている。正体は不明。 当初つなぎをつけるための男ではないか、と見られたが、どうもそうした様子もない模様で、誰か分からぬ。 この「男の隠れ家」は、あまり詳しく書いてしまうと面白くない。まあ、家に帰れば女房に虐げられて情けない男が、外に自分を発散できる場所を見つける、そんな今でも十分ある話が土台になっています。 「わかる、わかる…」と首を縦に振る男性連中も多いことだと思いますが、ぜひ読んでみると、おれはどうかなあ、と思われるはず。 平蔵は、相変わらずの口調で「女はこわい、こわい」ともらします。 ラストも面白い。この弥吉、平蔵もその人柄に惚れて、密偵にしようとしますが、すぐにうんと言わないのも分かっている。仕方無しに、無罪放免で役宅の外にそっと逃がしてあげるのだが、さて、さて!(^^)!
2007.11.14
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この話は大きな仕掛けのあるものではなく、女二人、ある目的のために盗みを働く、そんな話です。DVDでも見た後に、くすっとしてしまう、そんな話でした。 そもそもは忠吾の報告から小説では話が始まります。 「また出たか…」 苦笑を交じらせながら、下女をしながら泥棒を行う「下女泥棒」、俗に「下女泥」と言うそうです。 これまでの下女は、主人が誠実に奉公する下女に対して、きちんと奉公するものに対しては、そのお礼というか、退職金というか、縁談まで面倒をきちんと見てあげるといった心持があったそうです。だから、奉公人は一生懸命主人と店のために働いたそうですが、金の流通が激しくなると、いつの間にか、雇われ人はいい条件、雇うほうは都合のいい奉公人、という視線になってしまうようです。それで、ドラスティックな関係ができてしまい、そのに人情もなくなってしまい、こうした下女が盗みを働く事件が起こるそうな。 話の筋で、小説とDVDの大きな違いは、最初から出てくる富の市という按摩。DVDでは忠吾が突き止めるのだが、小説では最初の節から登場する。登場するどころか、巣鴨の三沢の仙さん宅に立ち寄った際に、仙さんが呼んでいた富の市と会うのだ。 この仙さんも、まだ書いていませんが「山吹のお勝」事件の後の話。 富の市の按摩治療を終えた仙を置いて、平蔵は富の市が飲みなおそう、と外を歩いているときに出会ったのが、翻筋斗(もんどり)の亀太郎。 平蔵が最初に翻筋斗(もんどり)の亀太郎と出会ったのは、高輪台町の小さな寺に隠れていたのを取り押えに向かった折のこと。亀太郎はずんぐり型の男なのだが、軽業師のように身が軽かった。あっという間に平蔵の脇をすり抜け、垣根の屋根まで飛び上がって逃げおおせた唯一の盗人だったのだ。これが1年前の話。1年越しに平蔵は指名手配犯人と会うのだ。 富の市に亀太郎の揉み治療をするように指示する平蔵。 一方で起こっている下女泥は忠吾に任せる。もっとも、このときには、この二つの事件が実に見事に絡みあっているとは、さすがの平蔵も分からないから仕方ない。 DVDではこの辺りの話はまったく分からない設定になっている。亀太郎を主体に、下女泥との絡みで話が進んでいき、おまさの補佐もあって忠吾が下女泥の実家を探り当てるまで、つながりを盗賊改方では分かっていないように作っている。 舞台はしかし、巣鴨。 この話は小説とDVDで楽しんでみるといいかもしれない。作り方、視点の置き方を換えるだけで、こうも同じ話を二度楽しめるのか、実感できます。 下女泥の二人の名前は、お仙とお今。この二人を白と黒、と称しています。二人は姉妹ですが、姉妹で亀太郎と男と女として交わりながら、ある目的のためにいいように亀太郎はされてしまう。 こういった話を平蔵は取り押えた亀太郎から聞き、その話が小説となっているのだ。 楽しい話です。
2007.11.08
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池波正太郎先生の小説を読んでいて、一度自分で設定してみようと思ったのは、長谷川平蔵、秋山小兵衛、そして藤枝梅安の共演小説、というか、ドラマ。 平蔵と小兵衛は同じ時間帯にいる設定にあり、実際に、僅かな時差をもってして、この二人はどこかで出会ってもおかしくない。ここに梅安がいたらどうか。 梅安の殺人は火付ではなく、どっちかっていうと、町奉行の管轄になる。何しろ証拠を残さない暗殺だし、そこに火付けも何もないわけだから、平蔵とは絡みにくい。 でも、大物の、たとえば、大阪の白子は梅安とも、平蔵もある意味では絡む。まあ「必殺」シリーズの中村主税も白子に殺されてしまうのであるが、いっそ主税も出演させると、まとまりのつかなそうで、面白い話になりそうだ、と思うのは、僕だけでしょうか?
2007.11.07
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いつも間にか11月になってしまった…。って、毎日暮らしているのだから、11月が来る事は分かっていたことですが。 本もDVDもここのところゆっくりと見ている暇がなかったのがいい訳です。 でも、「白黒」と「誘拐」の2作を、DVDと小説で読みました。 のんびりと、心に余裕がないときに、DVDを見ても落ち着けないし、なかなかメッセージが読み取れない自分がいます。自分なりのメッセージの受け取り方になるわけですけど、自分でも文章を書いていた頃には、読み手の気持ちや、ここは外さないで読み取ってほしい、という気持ちをこめて書いていたように思います。 それが書き手と読み手のコミュニケーションなんだろうなあ、と思います。こういう見えない人とのコミュニケーションが今ではブログ、という通信世界で発達していったんでしょうね。 平蔵は今のこの世の中を見てどう思うんだろう。世知辛い、なんていう世の中を。人の気持ちが生きていた時代が懐かしい。
2007.10.31
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長いこと、間が空いてしまいました(涙) 前回予告したように、池波先生の書き方というか、話を活かす話の続き方に感心して、今回は話以後登場する萩原宗順のお話です。 そもそもは「盗賊人相書」の被害者、およしをいつまでも役宅で預かっているわけにもいかないから、身の振り方を考えねばならない。被害者の行く末まで考えて上げられる警察官なり警察って、今じゃないでしょうね。ただでさえ無実の罪で検察が勝手に人を犯人に仕立て上げてしまう世の中。警察や検察も、民衆の敵、と言わざるを得ないのが情けない…。 宗順を平蔵に紹介したのは、与力の加藤半十郎。って、誰、って感じで、DVDでは登場しない人物だったかな?? まあ、その宗順、今の中央区小網町に住んでいたそうな。この宗順先生、6尺というから、190センチ近くの大男だったらしい。平蔵が宗順と会った時に、「ああ、およしをこの家に預けてよかった」と思ったそうだ。 およしが、それまでの悲しい出来事を目の前にしていながら、宗順先生の家に奉公に上がってから、目に力強い生きる力が見えてきたことが、平蔵にすれば、「よかった」と思うことだけなのだ。 そして、宗順が元は武士で会った事を看破する。 だが、その宗順の身元が割れてしまう事件が起こる。小網町の近くの、稲荷堀というところにある安藤長門守の家来、西村の殺害だった。 だが別段、宗順が殺したわけではない。 およしが、宗順宅に怪しい人物が来るようになって、何かおかしい、と思い、平蔵に相談に行ったところから始まるのだ。 この時点では何も分からぬが、役宅に出向いたおよしを、心配で迎えに来た、という宗順を不審に思い、後をつけるよう沢田に命じる平蔵。 この中で、宗順を襲った浪人もの2名。永代橋近く、上ノ橋近くで襲われた。が、機敏な身のこなしで川に飛び込み逃げた宗順に対して、やはり沢田も普通じゃない、と思う。その浪人の後をつけて身元を確認すると、平蔵に報告する。 そして平蔵のまだ知らぬところ(飲み屋)で、実は宗順は敵なのだという話が始まる。昔は武士で、早川民之助という名であったそうな。浪人は土田万蔵という。こいつが宗順、もとい早川が父の敵だという。 でも、長年あだ討ちで全国諸方を歩き探し回っていると、たまたま宗順を見つけたのだ。 だがこの土田、闇討ちやらで何人も人を殺している。これらの事件をつなぎ合わせた平蔵は、強い! 宗順宅に現れる土田を待ち伏せする平蔵。そして。 江戸を逃げた宗順とおよしを売れ戻すように指示する平蔵には、いまや普通の生活と医術で人を救いたいと願い宗順の願い、そして平穏に暮らさせてやりたいおよしの気持ちを汲んで、平蔵は英断する。 僕が思うのはいつも、人を適材としてどれだけ見られるか、だ。それは営業をするもの、営業を見守るもの、人と接するもの、だれでもそうかもしれないけど、相手を見抜く目と心を持たなければ、いくら技などを使っても、通じるものではない。相手を理解し、しれを超える判断をできるかどうか、かもしれない。 人を活かし、人に活かされる仕事。やっていきましょう。
2007.10.13
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この話は、「狐火」の事件がまだ解決していないときに平行して起こった話です。ですから、勇五郎も生きていたし、おまさもまだ江戸にいましたが、この件に関してはおまさは関わっておりません。 舞台は、深川・東玉庵(とうぎょくあん)という、熊井町にある蕎麦屋の小女およしが、賊に入られても生き残ったことから始まります。 寄り道ですが、この熊井町という地名は、池波先生の話の中ではちょくちょく出てきます。同じ熊井町にある「翁蕎麦」を見張りで使ったり、蕎麦を食いに行ったりで多いのですが、東玉庵はこの翁蕎麦の支店だそうです。 名物、お勧めメニューは「磯浪そば」。大根おろしにもみ海苔をかけたものだそうですから、おろし蕎麦なんでしょうが、きっとさっぱりとしていて美味いのでしょう! ここに若夫婦と奉公人4人が賊に殺された。ただ一人、腹を下していたおよしだけが、厠にいたおかげで生き残れた。そして、賊の顔をしっかりと見たのだ。 早速盗賊改方では、人相書きの手配にかかります。いつもならば、幕府御用達の墨川宗信という御絵師の内弟子・竹垣正信に依頼するところなのだが、「正信さんは故郷に帰っていたのだ」。 その折、仙台堀の政七という御用聞きから、弥勒寺の近くに若い絵師がいる、と聞きつけ、早速この絵師、石田竹仙を呼び出す。 余談ですが、この弥勒寺は、先に書きました「蛙の長助」の時のお熊婆さんの店がある場所です。またまた、この深川、森下町が舞台になっております。 石田竹仙、馬面であるが、本所松井町二丁目の菓子舗「井筒屋亀次郎」の三女おうのを昨年嫁にしたばかりだそうな。おうのは片足が悪いのだが、竹仙が井筒屋に菓子を買いに行った折に惚れてしまい、嫁にした経緯がある。美女ではなく、三十路のおうのだったが、結婚してから竹仙に仕えて、家をしっかりと守り、竹仙の安心の源となっている女性。 そんな竹仙ですが、およしから人相を聞きながら、どんどん筆を進めていくうちに、どうにもこうにも見た顔になっていく。無表情で筆を動かす竹仙。 「書き上げたときには疲れ果てていました」と忠吾、感心したように平蔵に報告を入れる。これを不審に思った平蔵は、粂八と彦十を呼び出し、大滝の五郎蔵に書き上がった人相書きを見せてみる。この頃、五郎蔵は密偵になったばかりで、本所・相生町五丁目(本所二ツ目と言われた場所ですね)の小さなたばこ屋の主人になっております。 「こいつは遠州無宿の熊治郎」の名前が判明する。畜生盗きをする盗人らしく、平蔵は策を練るのだった。 一方、竹仙はというと、夜な夜なろくに眠れない。何しろ、熊治郎とは、昔旅をしていた頃に一緒に盗みをした間柄だ。竹仙は絵筆を生かして、引き込み役をしていたらしい。 ようやくに熊治郎の居場所を思い出した竹仙は、今の中央区京橋の近くにある竹河岸と呼ばれる場所にあった「一杯酒屋山市」を探し出し、熊治郎に会う。 熊治郎とは4年振りの再会だ。早速に盗賊改方に人相書きを書いてしまったことなど、密談に入る。 それを外で見張っているのは、平蔵と五郎蔵二人だった。 忠吾の報告を聞いてから、竹仙を見張っていたのだ。そして、ここの盗人宿を突き止めた。 中では「逃げてくれ」と熊治郎に懇願する竹仙だが、ようやく「わかったよ」と承諾する熊治郎。しかし、弱腰の竹仙をこのままにしておいては、またいずれかに同じ羽目になる。だから、この場で竹仙を殺してしまうに限る。 短刀を取り出し、竹仙の首を絞める熊治郎。気絶した竹仙に短刀を突き刺そうとしたその瞬間、部屋に飛び込んできた巨体! それが五郎蔵だった。驚いた熊治郎は、窓を蹴破って二階から外に飛び降りる。逃げようとすると、「待て」と平蔵。 こうなると、もはや敵うわけもない。 こうして熊治郎は斬られ、事件は解決する。 役宅に戻ると、忠吾、刷り上った人相書きを持ち込んでくる。が、平蔵は「もう解決した」と告げる。 話はまだ終わらない。 その後、またもや竹仙の人相書きを必要とする事件があり、忠吾が担当して手配をするのだが、その折に平蔵が忠吾を諭す。諭すが、熊治郎事件の時になぜ竹仙が怪しい、と分かったかは言わない。言わないし、この事件そのものが秘密で処理されたからもあるが。 忠吾は竹仙のことを「まことに清らかなお人なのでございましょう。なればこそ、われらにもこころよくちからを貸し、盗賊を憎むこころも人一倍に強いものとおもわれます」と言う。 この忠吾の人を見る目を否定こそせず、「さもあろう」と肯定しながら、「お前の勘ちがいは別として」とやんわりと付け加えるのだった。 そして「妻女はそのような女だ?」と聞き、「少し腹がふくらんでいたろう」と言う。驚いたのは忠吾だ。見たのか、と聞くが、 「見ぬ。見ぬが分かるさ。それが千里眼というやつだ」と笑いながら言うのだった。 よくよく人を見ることだ、外面だけでなく、外から分かること、計り知れることに最大限注意を払えば、その人が何を考えているかが想像でき、未然に防げる事件もある、ということなのだろう。 こう書けば簡単そうですが、なかなかできるものでもなく、やはり人間の年季、というものは必要です。必要だとその人が思えば、いつか身につくものだ、と平蔵(池波先生)も言っていることですので、気持ちは忠吾のつもりで日々精進をしなければ、と考えてしまう今日この頃でした。 さて、次回はついでながら、この「盗賊人相書き」の話の続きである「のっそり医者」の話を書いてみるつもりです。この話も実にいい! ということで、今日は湯豆腐でも食べます。
2007.10.02
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「泣き味噌」って何だろう、と最初に思ったこと。鬼平ゆえに、泣けるほど美味い味噌のことだろうか? だが本当は「泣き虫」のことで、渾名だそうだ。この不名誉な渾名を忠吾につけられたのは、盗賊改方の会計をしている同心・川村弥助のこと。 弥助は身長180センチ、太鼓腹の、後姿は相撲取り、という風采の男だ。この弥助がこの話の主人公です。 弥助は雷がなると、がたがたと震えて隠れてしまうほどの、図体に似合わない怖がりだ。地震のときなどには泣きながら腰を抜かしてしまうほど…。 もっとも、地震については、あの阪神淡路大震災を経験した人には、今でも地震があると、恐怖心で心臓の鼓動が早くなり、気分が悪くなるそうだ。ひどい人は、弥助のようにがたがたと震えてしまい、自分を見失う人もいるとか。 そんな弥助だから、当然外回りにはいけない。獰猛な盗人の群れと戦う、などしたら、その場で気絶をしてしまう。 だが平蔵は、「今の時代、川村のような男も必要なのだ」という。 「勘定掛としてはまことにすぐれている」川村は、彼が作った「帳簿を見ればたちどころにお役目上の金の出し入れで与力・同心のはたらきぶりがわかる」ようになっているそうだ。「さすれば、通常二人、三人で勤める勘定掛が、わしのところでは一人ですむ。その分、外のお役目に回しているのと同じ働きになる」と考えているわけだ。 弱点は弱点、だが強みは強みとして生かして初めて弱点が隠れてしまう、そういう人の使い方が平蔵にはできる。そういう風に人を見られる目をもっているといえよう。 このことをある日、泣いている弥助に久栄がそっと伝えると、「お長官のために死んでもいい」と思ったが、「だが死ぬのは嫌だ、怖い…」とぞっとしたともいう。 この話は、「土蜘蛛の金五郎」事件の後の話になります。こういう一文があるから、この小説が生き生きしているように思えます。 事件は、弥助の愛妻さとの惨殺が発端となる。 さとの実家は四谷の仲町にあった。この四谷仲町は、昔の東京15区だと牛込と赤坂の間にありました。この仲町は、「剣客商売」の秋山小兵衛が師匠辻平右衛門が大原の里に引きこもった後に小兵衛が最初に道場を開いた場所でもあります。 この仲町喰違御門外(上部写真が現在の喰違門外跡です)のそばに栄風堂・和泉屋清左衛門というお菓子屋がさとの実家になり、ここの「初霜煎餅」が名代で、弥助の好物でもある。 ある日、さとがいつものように実家にこの煎餅をもらいに行った帰り道、鮫ケ橋谷町(現在の東京都新宿区若葉2丁目付近)に嫁に行った友達のおみちに会いに寄ったことから事件が動き出すのだった。この鮫ケ橋谷町、当時は岡場所などもあって、がさつな土地、と言われていたそうです。今はそうではないと思いますが。 おみちに会った帰り道、「わたしは仕合せだ…」と思いつつ、天王横丁につながる麹町13丁目(今の四谷1丁目から2丁目辺り)を歩いていたとき、突然頭を殴られ気を失った。 そして、廃寺の東福院(東京都新宿区若葉1-4-1、豆腐地蔵があるお寺です。今は廃寺ではありません(^^♪)におさとの、衣服を剥ぎ取られ息絶えていた遺体が発見された。 さとが見当たらなくなったということで、前日盗賊改方でもおさとの実家でも、おさとを探し回ったが見つからなかった。 そして、遺体で四谷組屋敷に戻ったおさと。 弥助は寝込んでしまう。 事件の手がかりは鮫ケ橋谷町の岡っ引き富七から、市ヶ谷ののっぺい汁の美味い「玉の尾」の主人から、豪勢に酒を飲む二人の剣術使いの話を聞きつけたことから、事件の真犯人が浮かび上がってくるのだった。 犯人は、牛込御門から神楽坂をのぼって矢来下に通じている大通りを抜け、中里町のはずれに百姓家を改造した町道場が根城だった。 すべての手はずを整えた平蔵は、打ち込みを掛ける。が、その前に、弥助が同行を願い出たものだ。あの怖がりの弥助が、である。 いざ、捕り物となったとき、犯人に向かって太刀を両手に、刀を構える犯人・和田木曾太郎に向かって飛び込んでいった。驚いたのは和田のほうだ。何しろ、無防備で、刀を構えたまま突進してくるのだから、技も何もない。ひるんだ隙を縫って、弥助の太刀が深々と和田を貫き通す。 真の犯人は道場の後援者ともいう秋元というお殿様。金もあり身分もある、そんな男ゆえに、隠れ遊びをするために道場を開かせ、博打や非道なことを当たり前と思ってやっていたのだ。おさとを犯して殺させたのも、この秋元だった。 平蔵の申し立てによって、この秋元は切腹させられたという。 この後に、弥助の勇猛果敢な戦いぶりを褒め称える盗賊改方の同心らの話を、平蔵は「あれは弥助が死に場所を求めていたのだ」と久栄にいう。自分では死ねないので、犯人の手を借りて死のうと思ったのだ、と。久栄は平蔵がそうと知りつつも、弥助を敵に向かわせたその心情が計り知れない、と思うのだった。文面では「余人には測り知れないおもいが隠されているに違いない」とあります。 もっとも、弥助はこのあと再婚をして幸せに暮らしていくのだから、まずはよかった、というところ。 自分の最愛の人が殺されて、犯人に対して自分が何もできないのがどれほど悔しく、情けなく、自分も後を追って死にたい、と思うのだろうか、今は本当に自分自身でも分かりません。先日も3人の男に最愛の娘を殺された母親のコメントを聞きましたが、「謝罪などいらない、殺してやりたい」とテレビの前で語っているのを思い出しました。人を殺す、というのは、その人の時間を止めてしまうだけではなく、その人に関わってきた人々の時間も思いも殺してとめてしまうことになるのだから、いかに殺人が罪深いことかが改めて思いました。
2007.09.27
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この話は深川、弥勒寺橋から始まります。現代で言うと、地下鉄森下駅を降りて、清澄通りを北へあがり、五間堀公園と向かいに弥勒寺というお寺があります。この門前と言うから、江東区立川一丁目に、お熊婆さんの茶店(ちゃてん)「笹や」がありました。 今ではすっかりと様子も変わりましたが、この店の前を歩いて通り過ぎようとする平蔵を見かけます。平蔵は、口うるさいお熊の店よりも今日は、清澄通りを真っ直ぐに北の方へ歩いて、二の橋北詰にあった「五鉄」に行って飲もうと決めました。地図では「本所二の橋南」の交差点を過ぎて首都高速7号線を越えた先にあります。まあ目と鼻の先に平蔵の知り合いの店があったんですね。 ここで平蔵、舟形の宗平を見かける。宗平は元盗賊だが、今では密偵となっており、生字引とも言われている。その宗平がお熊の店先でぼんやりと茶を飲んでいるのを見て、宗平と五鉄に行こうと思い立った。声をかけようとしたそのとき、爺さんを捕まえようとした御家人と出くわす。 「30両2分2朱、払いやがれ!」と倒れこみながらも怒鳴る爺さん。 映像では、話のスタートから場所が違います。爺さんと出くわす場所も、お墓の近くの狭いわき道でした。そして、小説では片足が膝下からないとなっていますが、映像では足をひきずる設定ですが、まあ話の態勢に大きな影響はないでしょう。 これを助けた平蔵に、蛙面の爺さんは一分金(約2万円)もお礼といってくれたものだ。 それを見ていて声をかけてきた宗平の「盗賊改方の長官が盗人に酒代をもらうなんて」と絵師でも想像つかない絵だ、といわれて驚く。 この盗人が、蛙の長助だ。茅町二丁目、今で言う深川二丁目の心行寺近くに住んでいる。このお寺は今でも健在。鬼平ファンの方たちがよくツアーを組んで見に行っているようです。 長助は本郷春木町の金貸し三浦彦兵衛に雇われている借金取り。とはいえ、この三浦彦兵衛は60歳を越えた老人ながら理財たくましく、息子久太郎にも厳しい、厳格な人物。 そんな長助、今日取立てに失敗した御家人今井斧五郎に何とか仕返しをして金を取り立てたい、と思っていた。それには、助けてくれた名も知らぬ浪人(平蔵)が必要だ。いつか酒でもご馳走して、と思う長助。 その長助、取立てに行った本所中ノ郷・原庭町の民家は、瓦焼き職人卯助の家だった。卯助は大病を患い寝たきりになっており、女房も看病疲れか寝たきりとなり、近くに嫁に出た娘の世話になっている夫婦だった。 この長助をおまさが尾行している。彦十の提案もあって、元盗賊なら何かしら引っかかるものが出てくるかもしれない、ということだ。映像ではまだこの時点で尾行はついていない。 さて、卯助の娘はおきよという。おきよは、夜になるとおでんと熱燗の屋台を伊勢町河岸に出して商売している。この屋台に長助が行った。当然、親の借金の肩代わりを言うためだ。 おきよから生い立ちを聞いた長助、内心驚いたものだ。 なんとおきよは自分が昔一緒に暮らし、捨てた女が生んだ娘で、長助にすれば実の娘だったのだ。 そして(おれはひとりぼっちじゃなかった。おれの娘と言うものがこの世にいた)と思うのだった。 決心した長助、卯助のためではなくおきよのために、自分で卯助の借金20両を肩代わりすることを、彦兵衛に告げる。しかし、手元には10両しかない。これを彦兵衛に渡すと、さっそく大口で撮り損ねている斧五郎の取立てに行くのだった。何しろ、報酬は取り立て料の10%。30両を取り立てられれば3両となる。いい報酬です(^^♪ このあとに話はクライマックスに入ります。斧五郎にくっついていたやくざもんを交えての捕り物があります。 おきよは結局長助が本当の父親だとは知らぬままに、そのまま暮らしていくこととなります。 今回のお話の舞台は深川、森下でした。この付近には、よく登場する富岡八幡宮もありますし、一度また散策に行こうかと思う、めっきり秋らしくなってきた今日この頃でした。
2007.09.26
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こうして感じることなどを書いて、平蔵が立ち寄った場所、歩いた場所、道、橋などを歩いてみたりすると、実在の人物であったのだという実感が少しずつわいてきます。 また小説の中でも、作り物の話ではなく、事件はいくつも重なって起こる。だから火付盗賊改方の存在意義があったのだが、それを時間の経過を考えながら、いくつもの取材を重ねて、時系列で平蔵を生き生きと書いている池波先生の腕に、いまさらながら惚れ惚れします。まあ、前回書いたけど、たまにずれてしまうこともあるにしても、それもご愛嬌、と江戸っ子らしく笑って流してしまうのもいいものだ。 さて次は何の話をしようか、と思いつつ夜が更けていきます。
2007.09.21
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この話は、切ない母心を表したものだと思います。 それは、門を叩く久兵衛の登場から始まった。 久兵衛は、見知らぬ女から火付盗賊改方長官長谷川平蔵宛に手紙を預かった、と来る。その手紙は、ひらがなの女文字。呼んだ平蔵はすぐさま、「役宅に残っているものをすべて召集しろ」と沢田に言いつけ、捕り物に向かった。 捕り物に向かったのは、今で言う江東区佐賀町、平蔵のこの当時は、深川・今川町という。隅田川(大川)から深川の外れの砂村までの横に伸びる川。ここに仙台59万石の伊達家の蔵屋敷があった事から仙台堀の名前がついたそうだ。 この仙台堀の足袋問屋鎌倉屋方に盗賊が襲っている、ということだった。 この店のあった場所は、今の三井倉庫、清澄庭園のすぐそばだ。ここに松永橋、というのがかかっているが、まさにこの場所に鎌倉屋があった。今はちょうど半蔵門線が下を走っており、清澄白河駅を降りて、清澄公園をぐるりと回ると清川橋というのがあって、その先に松永橋があります。散歩するにはいい感じのところなので、ぜひ。 さて、その鎌倉屋。店の外には見張り役の盗人がいる。ガセネタではない、となると、平蔵の指示は早かった。そのまま、外にいる見張りを打ち倒すと、店の中に手配のものがなだれ込んでいく。 小説では平蔵も中に飛び込むのだが、映像では馬に乗ったまま、外に出てくる盗人どもを待ち構えていた。 そこへ、長剣をもった盗人が一人、飛び出す。 「おのれが首領か?」と大音声の平蔵。切りかかる首領を事なげにあしらい、「ひっとらえよ」と下知を与える。そうして、7名が切り捨てられ、7名が捕縛された。 捕らえられた盗賊は、急ぎ盗きをする伏屋の紋蔵という。手配中の盗人だった。 では、誰が密告したのか? 実はこの男、平蔵の若かりし頃、一緒に暴れまくっていた、殿さま小平次という100俵取りの、平蔵よりも格下の御家人で、小平次と冨岡橋の北にあったとされる入舟団子というものを売っていた車屋の小女、お百との間で生まれた子だったのだ。だが、この小平次、あろうことか、妊娠したお百を階段から突き落とし、腹を棒で殴って、「これで腹の子は流れる」と言ったものだった。 ここまでする男も、今でもいるのかもしれないが、命を粗末にする典型的な感情がねじくれた人間といえる。 そのお百が平蔵に、自分の息子を密告した。理由は、畜生盗きをする息子を見かねてだ。自分も落ちぶれて、盗人の女房になっていたものの、お百は平蔵に助けられたことを忘れていなかったのだ。 キーワードはかんざし。 掴まり、牢に入っている紋蔵を裏庭に引き出し、お百の居所を尋ねる平蔵。なぜなら、密告をしたお百の身が危ないからだ。 そこで、平蔵は紋蔵に、父親を知らぬのか、父親は俺だ、と嘘をつく。 お百が江戸を離れる際に、小平次を脅しつけ、50両を用意しろ、という。できなければ叩き折った左腕のほかに、右腕を叩き切る、という平蔵に怯え(本当にやりかねないのがこの当時の平蔵だったからだ)、23両までかき集めたときに、肺結核で死んでしまう。仕方もなしに、平蔵は自分で5両を足して、28両をお百に持たせてあげるのだった。その時、見送りにきていた彦十から、平蔵からだ、というかんざしをもらう。嬉しそうなお百。その時のことをいつまでも忘れていなかったのだ。 そうとも知らぬのは紋蔵。平蔵は小説の中で、紋蔵がこうなった責任は自分にもある、潔く罪を認めて刑に服せ、という。その代わり、自分も腹を切って、お前のあとを追う、とまで言う。天下の火付盗賊改方の長官がそこまで言うのだ。 そして、せめてお百だけ助けたい、という平蔵の願いが通じ、紋蔵は盗人宿の場所を平蔵に告げる。 そこは浅草の今戸にある。 その盗人宿では見張り役の半助と、お百が死んでいた。映像では、半助を待ち構えていたお百が半助の胸に短刀を突き刺し、自分は平蔵からもらったかんざしで首を突いて自殺する。小説では相討ちになって死んだお百だった。 こうして、紋蔵は処刑台に向かうことになるのだが、その前に、お白洲で小柳安五郎に何か言い残したことはないか、と聞かれても、一切何も言わなかった。 「おそらくは、俺がうそつきだというのが分かったんだろうよ」 と寂しげに言う平蔵。お百のかんざしを自分の髪にさして、市中引き回しの上、獄門台に立つのだった。 母親の愛、女として受けた温情を忘れない心。それが息子を売ることにあろうとは、お百自身も考えてもみなかったことだと思います。
2007.09.21
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DVDと小説とでは話の始まり方が違いますが、いずれも捨てがたい! 小説では、昔の東京15区の頃の名称でいうと入谷区車坂町、平蔵の頃はここの車坂町台地に「小玉屋」という蕎麦屋があった、で始まる。 DVDでは、忠吾の立小便のシーンだ。これを浪人に化けた夜周り中の平蔵が声をかけるところから始まる。 さて、DVDのオープニングのセリフなんぞを。 『いつの世にも悪はかえる。その頃徳川幕府は火付盗賊改方という特別警察を設けていた。凶悪な賊の群れを容赦なく取り締まる為だ。独自の機動性を与えられたこの火付盗賊改方の長官こそが長谷川平蔵、人呼んで「鬼の平蔵」である』 その平蔵、太打ちのくろいやつで、薬味もなく、流行の貝柱のかき揚げなどの種物を一切出さない蕎麦屋、田舎蕎麦屋。ここで、舞台となる「どんぶり屋」の話を聞きつける。 「おどろいたね、飯は食い放題、汁に魚がついて、うめえ漬物のおかわりをしてくれて安い」という店らしい。しかも、裏に回れば、食うに困った連中(小説ではここでは書けない表現をしていますが)に無料で雑炊を配っている、そんな道楽のような店らしい。 そんな話を聞いた平蔵、三ノ輪にある「どんぶり屋」に行く気になったものだ。 これが口コミ、ですね。 この当時、天ぷら蕎麦屋で30文、田舎蕎麦で15文、どんぶり屋と同じメニューなら20文、それを7文で出すという。ちょっとした立ち食い蕎麦屋の天ぷらそばが600円としたら、どんぶり屋の飯は140円、といったところか。や、安っ!! この店の亭主が金五郎だった。 この店に3日、通いつめて役宅に帰る。そんな繰り返しをしながら、役宅の部下は、水臭い、とお頭の行動をなじる。というよりも、つまらないのだろう。 そして小説では久栄に「どうだ、明日は二人で出かけてみるか」と誘うが、DVDでは久栄が平蔵を誘うのだ。 と、こうしている中で、平蔵は、この店は盗人宿だ、と配下の同心に言い放つ。小説の中ではまだ言っていませんが、だから平蔵、どんぶり屋の金五郎を探ろうとしているのだった。 そして、異変が起こる。 ある日、金五郎の店が繁盛しているのをやっかんだ近所の無頼者らが殴りこんでくる。これを平蔵、一蹴にふすのだ。 これを見た金五郎、後日跡をつけてくる平蔵に声をかけ、ある暗殺を申し入れる。金額は25両、始末した後に残り25両。 この場面で、小説では実は木村忠吾を従えていた。小説では平蔵一人だ。映像では忠吾がいいる事で余計に平蔵の凄みが増す。小説では忠吾の姿よりも、金五郎との会話だけで、平蔵のすごさが伝わる。ここらへんが、映像と文字との差かもしれないですね。 さて、このときの平蔵の偽名は「木村五郎蔵」。 小説の中では、忠吾、置いてけぼりで「チェッ」と舌打ちをするほどだが、DVDでは目の前で長官の武勇をみることとなるのだ。 暗殺するのは誰か? 平蔵も一体50両もかけて殺す相手が誰なのか、盗人の金五郎ゆえに、早くその名前を知りたい。そうこうして、仕掛けを施して、とうとう相手の名前を金五郎の口から言わしめる。 「相手は、長谷川平蔵。火付盗賊改方の鬼平だよ」 大笑いだ、平蔵。DVDでは苦笑いだ、忠吾。 そうして、金五郎に罠をしかける平蔵。ここで岸井左馬之助、久し振りの登場だ。 左馬之助は、平蔵に頼まれ、平蔵の身代わりを引き受ける。そうとも知らぬ金五郎の配下は井上立泉先生の医学生と嘯く山本の誘いに乗った振りをして、平蔵に切られた振りをする。 さてここでおびき出された平蔵(もとい左馬之助)が駕籠に乗って歩いた道は、芝・新銭座というから、今でいう浜松町です。 そこから、露月町(今の新橋五丁目)あたりらしい。ここから築地方面の浜御殿、今の浜離宮方面に歩いた途中で襲われたのだ。 そうして、金五郎の根岸の盗人宿に戻った平蔵、ここで、金五郎の配下で、どんぶり屋の給仕をしていた若造(為造)から、「酒を呑んではいけない」と一言だけ聞かされる。この男、平蔵ファンだったのだ。 おかげで平蔵、この酒を金五郎の口に含ませようとして、魂胆を明かさせ、兼ねてから手配してあった酒井ら同心らが乗り込んでくる。 「て、てめえは!」 DVDでは、忠吾が水戸黄門よろしく「この方をどなたと心得る! 火付盗賊改方長官は長谷川平蔵様だ!」 で、捕り物となるのだった。 この話の面白いところは、今では通用しない、有名人の顔を知らない盗人、といったところか。もしも、人相書きでも、新聞でも、平蔵の顔を知っていたなら、金五郎、その暗殺相手を雇わないだろうし、自分が獄門台に行くこともなかったろうに、といったところ。 素浪人の平蔵も、映像でも格好いいです。「蛙の長助」という話でも、平蔵は素浪人の姿格好で見回りに出かける。この長助の前では、目の前を歩いていた黒猫を見て、「猫だ」と偽名を使うが、このシチュエーションは黒沢映画で、三船敏郎が偽名を考える様に似ている。 DVD情報では、土蜘蛛の金五郎を演った俳優さんは、遠藤太津朗さん。僕くらいだと「銭形平次」に出ていた万七親分、っていう思い出があります。平蔵に酒の毒を知らせた子之次役は赤塚真人さんです。 多少残念だったのは、岸井左馬之助が竜雷太に変わっていたことかな。悪くはないのですが、イメージ的にはどうも、っていう感じです。
2007.09.18
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この話、DVDと小説とでは大きな違いがあります。DVDではおまさと彦十の二人が主な密偵ですが、小説では、五郎蔵の初仕事がこの話。この「深川・千鳥橋」の間取りの万三を見知っていたのが五郎蔵という設定になっており、平蔵は捕縛した五郎蔵を、本来ならば1年程度牢に入れてから密偵として放つところを、放つ言い訳がないとして、密かに牢破りとして五郎蔵を役宅の牢屋から出します。 そもそも万三は左官屋だった。だが新築や改築で呼ばれる大工、左官屋の類が、盗人の一味に落ちてしまう例が多かったらしい。 たしかに、商家の見取りを正確に把握できるのは、大工などの工事業者だ。僕の父親も大工だったので、外見からおよそこの家はどういう構造、作りかは分かるが、万三はそれ以上の能力を持っていたのだと見当はつく。 万三は病持ちだった。その万三が、生涯をかけて自分を看取ってほしいと思ったのが、茶店の女お元だった。このお元も結核だというのだから、出来すぎな話ではある。でも、そこがいい。 お元は上野不忍池のほとりにある出合茶屋「ひしや」に連れ込んだ浅草寺境内大黒やの茶汲み女だ。この大黒や、は今では捜しようもない。 さて、五郎蔵。この頃、五郎蔵は平蔵に逮捕されていた。五郎蔵が狙っていたのは、ほかならぬ万三の間取りを使って押し込もうとしていた日本橋南一丁目茶屋新四郎の商家だ。五郎蔵はこの間取り図を70両という大金で買ったそうな。すごい価値です。 結局は掴まってしまったんで、元も子もないのだが。だがこれはこれで五郎蔵にはよかったんだが。 そして、捕り物の舞台となる仏店(ほとけだな)は上野山下、下谷町2丁目の北側の横丁、と書かれています。ここはこの間歩いた谷中の近くの下谷。ここに大和屋という鰻やがあり、この主人金兵衛は、蓑火の喜之助の配下だった男。喜之助は三か条の掟を守る正統の盗人だ。この配下の金兵衛も、ちゃんとした元盗人。 この喜之助に紹介された仲介人は、夜兎の角右衛門の元にいた、これも正統派の盗人、文助だ。 その文助が、万三が売って金にしたかった間取り図を鈴鹿の弥平に売るという。今の弥平は三代目、37歳。だが、この弥平。とんでもない盗人だったのだ。いわゆる畜生盗きの盗人。 最初の間取り図はちゃんと金を払ったが、残り4枚については、金を払うといって自分は時間を稼ぎ、文助、万三の居場所を探り当てると、文助を殺してしまう。 そうとは知らぬ万三をわなにかけ、大和屋におびき出した。 もうだめだ、というところで、平蔵登場!! 弥平は平蔵に始末され、万三はその場で審議にかけられる。でも、平蔵、お咎めをしないまま、万三に間取り図を出させ、これをろうそくの火で焼いてしまう。 手を回し、「お縄を…」という万三を横目に、「かけねえよ」という平蔵。そして「外へ出ろ」と万三を促す。 外には、火盗改メの高張提灯が立ち並び、その火の下にお元の姿があったのだ。想像してみるとすごい。映像でも、この場面はよかったです。 まるで万三が重要人のような扱いで、警察官が立ち並ぶ中で、全員が直立不動の姿勢で盗人を迎える。そこにはタクシーが、…、いや駕籠が二台。 「あの駕籠に乗れ」という平蔵と、驚く万三。「乗って、あの女とともに好きなところへ行け」といいながら、いつ用意したのか、小判まで渡すのだ。映像だと10両くらいはあったんじゃないか、と思いますよ。10両って、100万円くらい? 「盗人に追い銭」とは万三に失礼かもしれないけど、それに近いものはあるでしょう。 こうして、万三とお元は、駕籠に乗って暗闇の中に消えていったのだった。 涙が出ます。平蔵の優しさもそうですが、この話には平蔵とおまさ、彦十との間で約束があった。小説ではこれは五郎蔵との約束で、万三を捕まえない、その代わりに協力をする、というものだった。 平蔵が万三を見送りながら、「これでお前たちとの約束も守れたな」という。どんな約束でも、約束したら守る、それが部下や密偵との間でも、が平蔵の心情。 見習えよ、世の中の阿保な管理職の連中は! と管理職の僕からも言いたいような、平蔵の心情です。 いい話です。ぜひDVDでも楽しんでください。 ところで、深川・千鳥橋の27ページに「寛政元年12月5日の夜ふけ」に文助が鈴鹿の弥平次に殺されるとありますが、その翌日の7つ…に万三が鈴鹿に呼び出されて、殺されかけるんだけど、「乞食坊主」という話の中では、71ページに彦十からの情報をもとにして古河の富五郎一味の押し込みをする日が今夜だと平蔵が直感する場面があるんですが、「かの大工の万三事件が解決してから2日後にあたる」と書いてあるんですわ。これがちょっとおかしいところで、万三は12月6日にお元とともに駕籠に乗って立ち去るんです。だから、本当なら「2日前」が正しくて、「まだ事件は解決していません、長官!」てなところですか。 時間差、というか、こういうミスとは言いたくない、いろんな事件が重なって、それを平蔵が解決しているんだ、という現実感が楽しい。この千鳥橋の中でも、夜鷹の事件も同時に起こっているんですが、これもこの事件の中で密かに平蔵が解決させてしまっているのです。さすが。
2007.09.14
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今DVDを見ています。そして小説の方も読んでいます。泣けます。本当に泣ける話です。あまりメジャーな話ではないかもしれないけど、明日、この話を書きたいと思います。
2007.09.13
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この話は可笑しいやら、情けないやら、といった話でした。 役宅に出入りしている髪結の男の名が「五郎蔵」。今回は彼が主人公である。DVDではスペシャルとして作られ、岸部一徳が髪結五郎蔵をやっていました。 さて、この髪結五郎蔵が役宅に出入りする、ということを知った盗人暮坪の新五郎、五郎蔵の女房おみよを誘拐し、五郎蔵を脅迫し始めるのだ。 そしてもうひとり。長尻のお兼。引き込み専門の女賊なのだが、2年も3年も居座って、引き込みをしたあとも平気な顔をして居残る。そういう意味合いから「長い尻」を持つ女、長尻の異名がついたのだろう。 そんなお兼を五郎蔵が、ああ大滝のほうですが、見かけて、神田の桔梗屋を探り当てる。こうしてお兼を見張る日々が始まるのだが、どこでつなぎを付けるのかが最大のポイント。そのポイントを五郎蔵、見事に当てる。ある日、五郎蔵はお兼と戸袋の九助がすれ違ったのを見て、押し込みが今夜だ、と直感する。これが決め手になって平蔵は手配をかけるのだ。 さて、この話の美味いモノといえば、明月堂の「淡雪そば」。これがうまいらしい。まあ「山芋そば」のことなのだが、山芋をすりおろしたものを雪に見立てて「淡雪そば」と名付ける辺り、さすが池波正太郎先生、といったところか。 暮坪の新五郎が狙ったのは桔梗屋だ。引き込みにお兼がいる。まさに暮坪一味が乗り込もうとするそのとき、平蔵が「待っていたぞ、暮坪の新五郎」と、低音の渋い声で立ちふさがる。そして高張提灯には「火盗改」の文字がくっきりと浮かび上がる。もはや、逃げ道なし。このあたりの手配は相も変わらず見事に包囲する。 一味8名が向かったのは役宅だ。だが、そこには平蔵が手配していた息辰蔵と、酒井祐助や沢田小平次ら同心4名がこれらを迎え撃つ。役宅の門が開くと、そこに辰蔵たちが待ち構え、「盗賊ども! いずれもよく首を洗ってきたか!」と平蔵譲りににやりと笑って怒鳴る。このあたりが、辰蔵、格好がいい。DVD版でもこの場面は、見ているほうもまさか待ち構えているとは思わないから、「おお」と思わず嘆息が出てしまう。8人に4名で対抗するも、親玉の谷本を見事辰蔵が討ち取る。 そして事件は解決し、暮坪の新五郎は火あぶりの刑に処せられた。 だが髪結の五郎蔵の女房おみよは姿を消したままであった。 目こぼしをしたのは、あの男(髪結の五郎蔵)も手柄を立てているからだ」つまりは、髪結の五郎蔵の女房が盗賊どもに誘拐されたことから、平蔵にうらみを持つものの仕業か、と気がついたからだ。 だが、髪結の五郎蔵は戻らぬおみよに悲観して、橋の上から身投げをする。そこを小房の粂八の船宿で船頭を務める勇次に助けられる。 そして、大滝の五郎蔵と髪結の五郎蔵、二人そろって平蔵の前にまかり出る。用件は、また髪結の五郎蔵が役宅に出入りできるように、とのお願いだが、平蔵は二つ返事で「よいとも」と言う。だが、「五郎蔵が二人では紛らわしい。そうだ、髪結の五郎蔵は、わしの平蔵の一文字をとって平太郎と名乗るがよい」と命じる。この頃はこんなことで名前を変えることができたものだ。だから、系譜のあるような立派な家ではないものの、祖先の本当の名、などとはあまり当てにはならないのかもしれないですね。 この辰蔵を役宅に残す手はずを、役宅内の誰にも秘密にして、万事手抜かりなく、これに対応させたあたりは、部下の特性を生かして適材適所に配置することができる能力の高さの表れと言えます。自分の思い通りに行かないと怒鳴ったり、自分が上司であることをことさらに言い散らす上司も珍しくない今日この頃、仕事を手抜かりなくこなす、という思いが沸くはずもありません。そのあたりが、権力というか、立場に負けてしまうものが多いのでしょうね。髪結五郎蔵よりも情けない、かも。 今回の舞台は上野広小路から神田、神田明神下の髪結五郎蔵の家など、神田界隈になります。ちょいと歩けば秋葉原、湯島がありますが、まだまだ神田明神下あたりは下町の風情が残っている、いい街です。今度「散歩の時間」で歩こうかなと考えています。
2007.09.13
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こんばんわあ。今日はおまさの話です。 おまさの恋(愛)の物語が、この「狐火」だ。この話は、劇場版にもなっている。劇場版の狐火の勇五郎は世良さんだった。し、渋い…。 おさまがその娘を見たのは、下総佐倉のおばの通夜に出た帰り道だった。新宿、と書いて「にいじゅく」と読むが、この当時は葛飾郡と呼ばれ、宿駅のひとつだったところだ。 その川を渡る舟の中から、昔知っている女の顔を見た。そして、女が出てきた小屋(茶店)から出てきたのは、瀬戸川の源七。その昔、狐火一味にいた勇五郎の右腕といわれた男。だが今でももう老人となっている。 おまさは、その茶店が盗人宿かと思った。だがあまりに老けた源七。 うやむやするまま、軍鶏鍋や五鉄に行くおまさ。そこには彦十がいる。彦十に、見てきたこと、狐火の二代目のことを相談するおまさ。 そして江戸では、畜生働きの盗みが数件起こる。その現場に残されていたのは、「狐火」のお札。 「狐火ではありません!」 平蔵に叫ぶおまさ。おまさと勇五郎は、その昔、好き会った仲だ。だからこそ、勇五郎が皆殺しにするような盗みをするはずがない、と信じているおまさだった。 「頭を棍棒のようなもので殴って気絶させてから心臓をえぐる。憎んでも飽き足らぬ」憤る平蔵の目。 平蔵はそのあと、おまさを市谷八幡宮境内にある「万屋」という料理茶屋に連れて行く。 ここは今で言う「市谷亀岡八幡宮(http://www21.big.or.jp/~tetsuki/shuin/touto_jinja/04_ichigaya_kamegaoka_hachiman.html)(下記写真は八幡宮です)」じゃないかと思います。駐屯地の近くですね。ここに万屋があったものと思われます。 その店で、平蔵は言う。「何故お前は二代目をかばうのだ?」と。 「おまさはだけは自ら俺の密偵になると言ってくれた。だがこの長谷川平蔵よりも二代目勇五郎の方がたいせつな男らしい」 勇五郎、もとい又太郎とのおまさの間のことは、先代の前ではご法度のこと。 そしておまさはなんとしても正体を確かめてやろうと思うのだった。 話ははしょりますが、又太郎の腹違いの弟文吉が隠れ潜んでいる場所が、木母寺に程近い場所。この木母寺(もくぼじ)は今でもある。小説では、大川(隅田川)と荒川、綾瀬川の分かれんとする隅田堤の近く、とある。 この木母寺は中世の「梅若伝説」ゆかりの寺で開基は古く、平安の中ごろとされています。平安中期、吉田少将惟房の子「梅若丸」が人買いにかどわかされ、関東に下る途中病気になり、隅田川のほとりで「たずね来て とわばこたえよ みやこどり すみだ河原の露と消えぬと」の一首を残し、十二歳で世を去りました。来あわせた天台宗の高僧忠円阿闍梨が梅若のために塚を築き柳の木を植えて供養したといいます。 乗り込む又太郎、眠り込んでいたが、迎え撃つ文吉。そして準備万端整えた火付盗賊改方。捕り物が一斉に始まる。 20数名の盗賊たちは、あるものは切られ、あるものは捕縛された。そして、文吉は又太郎に刺殺される。 平蔵は又太郎を追い、そして文吉の胸に深々と刺さる匕首。平蔵が言う。 「おまさをつれて、京へもどれ。堅気になって共に暮らせ」と。だが「二度と盗みはせぬという証文を置いていけ」 と言って、又太郎の左手を切る。本編でも左手は切り落とされるが、DVDでは筋を切るだけにとどまっている。これはテレビゆえかもしれない。 そしておまさは、介抱しながら二代目勇五郎と京へ旅たつ。 その後、数ヵ月後(テレビでは1ヵ月後)におまさが平蔵の前に姿を現す。 「二度と顔を見せるな、言ったはず」 平蔵の冷たい言葉。だが、道中はやり病で死んだと知ると、 「おまさ、お前も男運のない女よの」 と寂しげに笑うのが印象的だ。 そして、おまさが言ったのは、「もう一度長谷川様の下で密偵として働きたい」と。 映画の方は世良さん演じる勇五郎と、おまさが艶っぽいのだが、小説も心悲しさを覚える。珠玉の一作、と僕は思っています。
2007.09.11
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今ちょうど「さむらい松五郎」を読み終えました。で、ぜんぜん関係のない話ですが、今日この日谷中の散歩に行ってきました。谷中といえば、「谷中いろは茶屋」のお話があります。 谷中は山手線の外側は歩いたことがありますが、谷中商店街は初の散歩道です。山手線日暮里駅を降りて、西口を出て、左手の坂を上っていくと、やがて「谷中商店街」のアーケードが見えてきます。 「谷中」とは、「もともと駒込と上野の谷間であるところから生まれた」地名だと本には書かれている。近くの谷中霊園には、後の将軍徳川慶喜の墓所がある。もっとも、「谷中・いろは茶屋」の頃には、当然この墓所はないですが。 この話の舞台は、たぶん谷中霊園だろうと思いますが、違っていたらごめんなさい。日暮里駅南口を出ると、天王寺があり、この門前に開かれたのが谷中の遊所、とあります。このいろは茶屋に入れ込んでいたのが火付盗賊改方・同心木村忠吾。忠吾についてこの話で詳しく書かれています。 忠吾は芝・明神前の菓子舗「まつむら」の「うさぎ饅頭」そっくりだというので、「兎忠(うさちゅう)」と呼ばれていた。 今回の散歩では、残念ながらこのいろは茶屋方面ではなく、日暮里駅西から南へ下り、根津方面をぐるりと回って、千駄木を掠めて歩きました。谷中商店街には総菜屋も多く、またコロッケやメンチカツを売っている人気店がいくつかある。どこも美味しいそうなのだが、酒屋の隣のお店だけ日曜日の今日、開いていました。芸能人のサインがたくさん貼ってある。僕はその隣の酒屋で、あまりにも暑いので、エビス生ビール(350円)を戴きました(^^♪ 途中寄り道をしたのは、商店街をつきぬけ、左に曲がると、「よみせ通り」に出ます。「谷中珈琲」という、店先で豆を選んでそのままその場で煎ってくれるコーヒー豆屋さんがあります。ほかにも9店舗くらいあるそうです。ここでせっかくなんで「谷中珈琲」豆を購入しました。そのままずっと道なりに歩いていくと、「指人形笑吉」という非常に楽しい人形師のお店に出くわします。ここでは、お客さんが5名以上になると、指人形劇をやってくれます(一人500円観劇料)。これもまあ面白いこと。全部で9話程度の小話を見せてくれます。 こんなに裏道にいろいろな店があると、発見するのが楽しくなります。 「ギャラリー猫町(http://www.necomachi.com/)」もそのひとつ。今は来週17日まで布施和佳子個展というのがやっています。この方の作品は実に可愛い。猫をモチーフにしたいろいろな展示会を催しているギャラリーゆえ、作品はすべて「猫」がテーマでした。クーラーが利いていて非常に涼しく助かった…。 忠吾がこの谷中の担当になったのは、蛇の平十郎の捕り物で手が足らなくなり、担当の小柳安五郎が平蔵の手元に異動したためだ。 ここ谷中・いろは茶屋「菱屋」で忠吾はお松と出会う。いきなり話ではその場面から始まるのだが、お松には川越の大きな商家の旦那がいるらしい。「好きな男のために使いなさい」と10両も置いていく、というのだから、たいした金持ち、と見られていた。 この川越さんと呼ばれている旦那は、善光寺坂(谷中1丁目の本光寺の脇道です。このあたりに「猫町」がある)の中ほどにある数珠屋油屋乙吉の店にいた。この男、本名は墓火の秀五郎という。れっき(?)とした盗賊だ。 あるとき、一連の事件が終了し、忠吾は内勤となった。外出が適わぬ、となると、お松に会いたくてしょうがない。何しろ独り身。ある夜、朝帰りをするつもりで、長屋を抜け出し、お松に会いにでかけるのだ。 さあもう少し、というところで、忠吾、寺から出てきた盗人集団と出くわす。だが捕らえるほどの腕もないことから、一人のあとをつけることとなった。その男が入ったのが、数珠屋菱屋! ここから話は急展開していき、捕縛捕縛捕縛! そして粕壁(今の春日部)に逃げていた墓火の秀五郎をはじめとする一味12名を捕縛したのだった。 何もかもが終わったあとに、忠吾は平蔵から、いろは茶屋が閉鎖されることを知る。 ラストシーンは、忠吾が平蔵の肩を揉みながら、亡父のことを思い出し、涙する。そして、お松に金をくれたという川越さん(墓火の秀五郎だが)を思い、「その旦那という人物、おもしろい男よな。おれも会ってみたい気がする」と平蔵が言う。 そして僕の谷中の旅(町巡り散歩は別のブログで時々書いております。リンクの「十六夜前に…」をどうぞ)は、谷中商店街の入り口にある「幸福門」という化粧水などを売っている92歳のおじいさんのお店で終わる。とにかく説明する話が長いが、商品は100円の化粧水からある。匂いがきついので、実験はしないほうがよいかなあ、と思います。 散歩に鬼平犯科帖が混ざると小説がまたおもしろく感じられます。
2007.09.09
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「雲竜剣」は長編のため、今しばらく。 その代わり、DVDの話を少々、一服がてら、してみようかと思います。 長谷川平蔵宣似、若き日の名は「銕三郎」。天明7年に平蔵は火付盗賊改方の長官に就任したときは、実に42歳。主演の中村吉右衛門は、8代目松本幸四郎の次男として生まれた。この父、実は鬼平をやっている。親子揃っての主演だから、そこも感動ものだ。まあ、歌舞伎の世界は襲名だの養子だので大変なのだが、吉右衛門も祖父の中村吉右衛門の養子となってその名を継ぐこととなるんだけど。 そして、久栄。平蔵を殿様と呼び、部下にも慕われ、400石の旗本ながらも健気な妻と強い母を生き抜く。ある意味、多岐川裕美でよかったあ、と思う配役です。 このほかに、脇役では1996年6月に癌で亡くなってしまったけど、佐嶋役の高橋悦史や、2001年には彦十の江戸家猫八も他界している。 そしておまさの梶芽衣子は、元々太田雅子という名だったが、その後改名して、「寺内貫太郎一家」でねえちゃん役が印象的だ。何よりも、この映像には欠かせない俳優さん、人物だと思っております。 密偵では好きな小房の粂八、蟹江敬三! 渋いです。粂八は野鎚の弥平の配下の時分に逮捕されて、平蔵の密偵になるのだが、この話はブログでも書きました。 そして、この男を死なせたことで、池波ファン、その中での鬼平ファンから抗議の殺到した伊三次、三浦浩一。伊三次は小説でも死なせたことで(もっとも、死なないとその後が盛り上がらないと僕は思っていますが)惜しい人物を密偵からなくしたと評判の人。最期は悲しすぎましたが。 忘れちゃいけない、大滝の五郎蔵親分、綿引勝彦さん!僕は「天まで上がれ」からこの俳優さんのファンでした。それまであばた顔で怖い役ばかりだったのが、この鬼平で「優しいお父さん」に変わり、そして「天まで上がれ」ですから、さすがです。 あとはうさ忠こと、木村忠吾役の尾美としのり。有名なのは「転校生」ですが、「時をかける少女」とか「さみしんぼう」等の大林監督の映画に数多く出演していますね。今回うちの会社の映画「22歳の別れ」には、九州3部作なんだかわかりませんが出演はしていません。でも好きな俳優の一人です。 脇役でも、小説の中でもちょっとすごいなあ、と思うのが、小柳安五郎。妻をある事件で殺されてしまうのだが、おっとりした性格から危険を顧みない盗賊改方に変わった人物だ。この役を香川照之が演じているが、実によい。この人があの浜木綿子と市川猿之助の息子で東大出身とはしらなんだ。 あと、僕としては料理をやるんで、村松忠之進も捨てがたい。役者さんは沼田爆さんといって、あまり知られていないけど、顔を見れば、「ああっ」と分かる人。料理の薀蓄こそ僕は言わないけど、僕の作る筑前煮は最高、と忠之進と料理談義をしてみたい。 次回書くであろう「雲竜剣」のDVDには、高杉先生も知っている堀本伯道役にあの露口茂さんが、そして助次郎役に藤木悠さんがゲスト出演している。両者とももう亡くなってしまっているのが、つくづく残念としか言えない。 こうして、僕の鬼平は映像と小説の中で、脈々と生きているのでした。 そして、こうした他愛ごとでも、「心休め」をしろ、という小説や映像の中での言葉は実に優しい、と思う今日この頃でした。
2007.09.06
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この話はDVDになっていない話だったと思います。もしもあったらごめんなさい。 平蔵が芝高輪の太子堂を参詣した帰りから話が始まる。井上惣助という本所高杉道場に通っていた頃の先輩剣士を見かけたのだ。だが、井上はすでに切腹をして死んでいるはず。亡霊か、と驚く平蔵。 この井上は、高杉先生が自分の継承者として認めていたほどの人物だ。それが突然切腹をして死んだ。その理由も明かされず、幕府は井上家をお取り潰しにしてしまったのだ。 井上の屋敷は大川橋(今の本所吾妻橋あたりか)の東詰に近い北本所にあったそうな。250石なのでまあそこそこの旗本といってよい。 その死んだはずの井上を見た平蔵は、そのまま井上の後をつけていく。品川まで来た。品川には、「雲竜剣(次回掲載予定です)」事件で盗賊改方の見張り所を設けた富五郎の煮売り屋がある。富五郎は盗人ではなくお上の御用をしていた男だ。 その富五郎の力も借りて、井上と思われる男の住処を見つけ出す。場所は品川寺(ほんせんじ:品川区南品川3-5-17、青物横丁駅そば)の近くだという。 平蔵が井上の家に向かう途中で、侍をまじえた3人組の不審な男を見かける。おかしい、と思いつけていくと、なんと井上の家に行くではないか! どうやら井上を襲うらしいが、運が悪いのか、いいのか、井上が二階から戸を開けたときにこの3人に気がつく。あわてて逃げようとする井上。追いかける3人組。これを平蔵が追いかけ、井上を助ける。 ところが、この男、井上ではない、という。だが顔を見れば見るほど、井上に違いない、と平蔵は思う。 だが実のところ、この男、井上ではなかった。井上ではないが井上とつながりのある男だったのだ。 その事実を知って驚く平蔵。 話は岸井左馬之助にこの井上を会わせるところで終わるのだが、話が淡々としていて、大きな捕り物もないので、テレビ的には絵にならぬ、と思って映像化していないのかもしれない。 よく似た顔、そこに事件が絡んで、人も絡み、そして過去が蘇って絡んでくる、そんな話がこの「顔」である。
2007.09.05
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この話は、正直DVDの設定の方が好きかも知れない。何しろ、主人公の馬蕗の利平治役はいかりや長介だったからだ。 話も、途中はほとんど原作どおりに進んでいく。 高窓の二代目久太郎に利平治の「宝物」を渡すために、熱海にたまたま湯治に来ていた平蔵とが絡んでいく話だ。 この「宝物」。嘗め役の利平治ゆえに、初めからその宝物は、盗みに入る商家についての情報誌であることには間違いないのだが、最後までそれを明かさない。 湯治には久栄とおまさ、相模の彦十が同行していた。10日以上も湯治をしていると、さすがに健康体にはしんどい。久栄もおまさも、そして彦十も飽きていた頃、馬蕗の利平治が同じ湯治宿に現れる。利平治は足を引き攣りながら、連れと宿に入る。利平治が嘗め役と知っていた彦十。「おかしい」と気がつく。何が、といえば、嘗め役はある意味では一人商売。盗みに入る家の間取りから生活習慣までのすべてを調査して、盗人の親分に売るのが商売。その一人商売人が誰かと一緒にいること自体がおかしい、というわけだ。このあたりの勘ばたらきは、平蔵ゆずりなのかもしれない。 この勘ばたらきからこの話は進展していく。 そもそも、利平治は、お宝を自分が従事したお頭の二代目久太郎に渡すために旅をしている。そうした理由を知らぬ彦十から見ても、利平治を知っている彦十にしてみれば、やはりおかしい、のだろう。 そして平蔵を自分の盗人のお頭に仕立て上げ、利平治を無事久太郎のいる江戸まで護衛する役目を買って出るのだった。 途中、小八幡の茶店で麦飯に大根の味噌汁、カレイの煮付けで二度もお代わりをした平蔵。「居候ならばそっとなんだが、まあ許せ」と三杯目を嬉しそうに差し出す平蔵の目。そして、彦十がここに平蔵がいる事を江戸から駆けつけてきているあろう佐嶋忠介や酒井祐助(2シーズンでは篠田三郎から柴俊夫に代わったが)らが見つけられない、と心配をする。だが平蔵は笑って言う。 「俺の手下なら、どうあっても俺を探し出すだろう。彦、お前ならどうする?」 「そりゃあ、宿を聞いて歩きますわ」 「それでも分からなければ?」 「街道筋を聞きまわってでも…」 「そういうことだ。俺は手下を信じている。だからこそ、ここで時が経つのを待つのだよ」 多少セリフは違うかもしれないけど、親分(上司)として手下(部下)を信じ抜いて、焦る心を抑えながらも待てる心を持つ。そこに利平治もえらく感動した。 (いまどきこんなお頭はいねえ(今現在もここまでの上司はいないだろうな)) だからこそ、エンディングで、お江戸払いを密かに平蔵に言われた利平治が、役宅に参上してまでも、自分を処分してほしい、などといったのだ。 今気持ちも更生していれば、その罪は問わない、言い換えれば、平蔵はその罪を自分が背負って密偵を守っていたんだろうと思います。 「俺のため」といいながら、そう言えるのは、抱えている密偵たちの罪をしっかりと自分背背負える覚悟があるからでないと、そうは言えない。 長谷川平蔵。上司になってほしい最高の人物です(池波先生の誇張も含めてさえもそう思います)。
2007.09.04
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この話の前に書いた「寺尾の治兵衛」の中で出てきた血頭の丹兵衛の話だ。 その昔の丹兵衛は、1.盗まれて難儀するものへは、手を出さぬこと1.つとめをするとき、人を殺傷せぬこと1.女を手ごめにせぬこと この3か条を徹底して守っていた正統派の盗人だった。 この話では、小房の粂八が初登場する。DVD版でも同じだが、登場の仕方が違う。小説では、牢内ですでに捕まっており、平蔵としては密偵にしたくて、刑の執行を延ばしている状況設定になっている。 粂八が牢にいる間に、江戸市中では血頭の丹兵衛が畜生盗きをして、盗みに入った商家を皆殺しにする、非道の盗みを働いていた。 粂八はその昔、この丹兵衛の手下だった。だからこそ、粂八は今回のこの盗みは偽者の血頭の丹兵衛である、と断言する。 そんななか、麹町の万屋彦左衛門方が襲われ、次女一人が生き残った。このとき、丹兵衛が「島田宿で集まる」と手下に言ったのを聞いていたものだ。重傷ながらもこの娘は、「両親の仇を討ってください」と言う。 ここで粂八が平蔵に、初めて探りを入れたい、と申し出た。正式じゃないが、粂八の密偵仕事の第1歩だ。 他の仲間に見つかったら殺されるかもしれぬ状況だが、「わっしも小房の粂八だ。まさに見つけられることもござんすまい」と不敵に笑う。まだ言葉使いは盗人のままなのがいい。 そうして粂八はそっと牢を出て、駿河の国・島田宿(静岡県)に探索に向かう。 この探索の最中、丸屋という書籍商に盗人が入ったのだが、いつ獲られたのか分からないうちに金40両がなくなった。 粂八は「これこそ本物の血頭の丹兵衛の仕事だ」と確認するのだ。偽者に対する見せしめ、のような見事な盗み。 しかし、この思いはやがて裏切られる。 血頭の丹兵衛が島田宿にいる粂八を尋ねてきて、一連の盗みは自分だ、と告げる。年をとって三か条を守っていられねえ、が丹兵衛の言い分だ。 「畜生め、年をとってから汚れてしまったやつほど、始末におえねえものはねえ」 粂八の心の叫びだ。今の世の中でも、年をくってから悪事を働く連中も多い。いろいろと面倒くさくなるのだろうか? 政治家もその中に入るんだろうな。 捕り物も小説とDVDではちょっと違う。小説では、いったん粂八は盗人宿から出てくるのだが、DVDでは最初から平蔵が粂八の振りをして乗り込んでいく。 捕まった血頭の丹兵衛を何度も殴る粂八。 「本物は、あんな野郎じゃねえ」と泣きながら。 江戸への帰路は、DVDでは平蔵と一緒だ。小説では酒井同心になっている。ここの途中で立ち寄った茶屋で、粂八は蓑火の喜之助と出会う。 なんと、江戸での丸屋の盗みは、蓑火の喜之助が偽者だと思っていた血頭の丹兵衛のために自分がやった、と言う。喜之助も丹兵衛の仕業ではないと信じていたのだ。粂八は何も言わず、今では隠居生活の喜之助を見送る。 こうして、粂八は平蔵の心強い密偵の一人になるのだ。DVDでは、先に歩き出した平蔵を追っかけていく粂八の笑顔が印象に残っている。
2007.09.04
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蓑火の喜之助の手下だった寺尾の治兵衛の話だ。治兵衛は口合人と呼ばれる、盗みの斡旋業者。その治兵衛が自分が筆頭になって、大きな盗みを計画する。それも、盗みの三か条に則って、正統派の盗みをするという。それには、ひとり娘の嫁入りに少しでも持たせたいという親心もあったようだ。 これに五郎蔵が関わることとなる。そして、平蔵も用心棒対策の助太刀として参加する。 用心棒鈴木某は佐久間伊織。平蔵が田沼意次の下屋敷で開催された試合に出場した折に立ち会った相手だ。その際、審判には秋山小兵衛がついた。秋山小兵衛といえば、テレビでは藤田まことが小兵衛役だった。わき道にそれるが、池波先生の秋山小兵衛のモデルとなったのは、中村又五郎であるといわれる。この中村又五郎は「鬼平犯科帖」でも度々ゲスト出演しているのだ。「暗剣白梅香」の本当の暗殺依頼者役に出ていた。物優しげな顔、小柄な風貌から、秋山小兵衛役にぴったりだが、怖い役にもぴたりとはまる役者さんだ。 結局、この佐久間とは戦わないのだが。 さて、話を戻すと、この寺尾の治兵衛がまた真面目な盗人なのだ。古くからの掟を守って盗みを働き、決して畜生盗きはやらぬ。 そんな治兵衛を手伝うことにして、お縄の機会を窺う五郎蔵だが、だんだん治兵衛と盗みの事前準備をしている間に、血が騒ぐ。まあ、そこはおまさに止められるのだが。 そして、いよいよ諸国の盗人を集めに出ようと旅立前日の治兵衛に異変が起こる。 何よりも、こんな人のいい治兵衛が最期に盗人で終わらなかったこと。そして、治兵衛が五郎蔵に預けた支度金50両を、平蔵は治兵衛の娘のために見逃す。 五郎蔵はこの50両をもって治兵衛の娘が暮らし、治兵衛の故郷である駿河の国へと向かうのだった。 悲哀感が残るものの、どこかほっとしてしまう、温かい話です。
2007.09.03
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武蔵野の国、南葛飾郡、渋江村。今の東京都葛飾区東四つ木が現在のここになる。 いよいよ「おまさ」登場の話だ。 おまさは鶴(たずがね)の忠助の娘だ。平蔵が若かりし頃に放蕩を働いていた時分、忠助が元盗人で、「盗人酒場」などという居酒屋を開いていた頃に世話になっていた。池波先生はこの忠助を「フリーランサー」という表現で呼んでいる。 この話は、急ぎ盗きをする仲間に知らずに加わっていたおまさを、平蔵が救い出す話だ。偶然出会ったときは、おまさは気がつくが、平蔵は分からぬ。役宅で久栄といるときに、袖を縫う女中を見ていて、おまさと気がつく。 話はそこから急展開をしていくのだが、ここで彦十登場。おまさのためなら、と頑張るのだった。 おまさが捕らわれたと知り、平蔵の命を受けて急を知らせに東四つ木から清水門外へ知らせに駕籠に乗って急ぐ。が、途中、暴れ馬に遭遇し、腰を痛めてしまう。DVDならではの、猫八のセリフ。 「銕っつあんがアブねえ…。おまさぼうがアブねえ…。ううっつ、俺もアブねえや」 ついつい笑ってしまう。 役宅の応援を待ちつつ、痺れを切らした平蔵。単身、数十人はいるであろう敵方の百姓家に乗り込む。 そこで遭遇した敵方に、「こいつはあの女の情夫(いろ)か」と嘲笑を受けるが、それに対して言った平蔵の言葉におまさが崩れる。 「お前ら盗人に、あの女の情(いろ)が切れるか」 そうして右腕を切られたものの、見事盗人のリーダー格を切った平蔵は、応援の部隊到着で難を切り抜ける。 そうして、おまさは密偵となった。 この話は本当にすかっとする。平蔵の気持ちの揺れもそうだが、何よりも、心強い密偵、仲間の誕生秘話は、これから登場する密偵たちの話につながっていく。仲間はいい。そう思わせる話だ。
2007.08.28
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この話の発端は、野槌の弥平一味の残党、小川や梅吉を、密偵の岩五郎が本所あたりでみかけたところから始まる。岩五郎は佐嶋忠介の密偵だ。 本所は言わずと知れた、平蔵の若き日の住み暮らした町だ。本所三ツ目に屋敷があったそうな。 ここに法恩寺という古寺があり、その近くに平蔵が修行をした高杉道場があった。この道場の隣に、山村の桜屋敷と呼ばれた家があった。ここにおふさという当主の孫娘がいた。「むき卵のような」初々しい女性が、稽古を終えた平蔵ら門下生に、蕎麦切り等の差し入れを持ってくる。平蔵の同門であり親友の岸井左馬之助がこのおふさに惚れた。平蔵も惚れた。二人して惚れたもんだから、抜け駆けをせぬという協定を結ぶ。このあたりが、若いなあ、と思う。なんかこうしたことも中学生や高校生の頃には誰にもあったように思える。池波先生もこういうことがあったんだろう。たまさか話に出てくるエピソードだ。 またこの話には、平蔵の生い立ちが結構細かく書かれている。連載し始めの頃ゆえに、主人公の紹介の意味もこめて、左馬之助、おふさ、高杉道場との関わりがよくわかる内容になっている。 このおふさ、今は服部角之助という百俵取りの御家人の奥さんに収まっている。ところが、この服部が曲者だった。 おふさは最初、日本橋本町の近江屋清兵衛方に嫁入りしたのだが、旦那が若死にしてしまい、挙句の果て、近江屋かた追い出されてしまう。そして、どういういきさつか服部に嫁いだ。 この話の中で、初めて相模の彦十が登場する! 彦十は服部のところの若い衆と喧嘩をしているところを平蔵に助けられるのだ。彦十はこのとき、平蔵が火付盗賊改方の長官だとは知らない。 この服部の屋敷に小川や梅吉が入っていくのを目撃されているのだ。 その後、彦十は小川やの手下に声をかけられるなどして、リンチされたりするのだが、ここにどうもおふさが絡んでいるようだった。 狙った家はどこか? おふさの最初の嫁入りをした近江屋だった。 しかけを施して盗人どもを待つ平蔵たち。その網にまんまとはまる盗人。その中におふさ。 岸井左馬之助は信じない。おふさが盗賊に成り下がったなどとは信じたくもない。DVD版では、怒鳴り散らす左馬之助に平蔵が、お白洲を見させる。小説では、平蔵と見ているのだが、DVDでは平蔵が取調べをしている。 おふさは平蔵を見知っているはずなのだが、忘れてしまったような態度で取調べを受ける。 引き立てられる際に、たまりかねて左馬之助が飛び出すが、おふさはこれにも動じず、「誰だ?」という顔で引き立てられていくのだった。 「女という生きものは、過去もなく、将来もなく、ただひとつ、現在のわが身があるのみ…、とういことをおれたちは忘れていたようだ」 平蔵の一言に左馬之助は涙ながらにうなずく。 この話のエンディングは小説と同じ、舟の中の平蔵のシーンだ。切ない終わり方ですが、ぐぐっときます。この話がテレビ第2話で使ったのは実によかったと思う。確実に平蔵という人となりを見ているものに伝えられたからだ。 そしてだんだん登場人物も増えてくるのであった。
2007.08.28
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現代の新橋汐留駅構内付近で、平蔵が襲われた。話はここから始まるのが「暗剣白梅香」だ。暗殺者は香りを残して逃げ去るのだが、「犯人は女?」と平蔵が思ってしまうほどに、妖しげな香りは道々に残っていたそうだ。昔いた会社に、シャネルの5番だかをつけている女性がいて、彼女が通った後にはきついこの香りが残り、どこを歩いたか判るほどだったのを思い出す。 犯人の名前は金子半四郎。小説では、色白で細面、頬骨が張って太い鼻と濃い眉毛、細い目である、と書かれているが、DVDでは、この金子役は近藤正臣がやっていた。 半四郎が住んでいるのは王子権現。新橋で平蔵を襲ったのを考えると、ずいぶん遠くまで襲いにいったもんだ。 半四郎は仇持ちの身の上。当時親の仇を討たねば藩に戻ることができないのが武士の法度。 こんな身の上で、三の松平十という本郷の根津権現門前の顔役から、平蔵暗殺の依頼を受ける。 この話の中で、石島町にある船宿「鶴や」で、田螺とわけぎのヌタの小鉢を食べるんだけども、この田螺、よく池波先生の小説に登場する小鉢だ。田螺は食べたことがないのだが、以前高松に行っていた頃は売っていたのを見たことがある。美味しいのだろうか? 貝類が大好きなんで、一度は挑戦してみようかと思っている。 寄り道をした。 この話の中では、すでに岸井左馬之助も粂八も出てくるが、左馬之助がテレビ(DVD)で登場するのは、第2話の「桜屋敷」からだ。粂八にいたっては第4話の「血頭の丹兵衛」からになる。 さて、曲者(半四郎)がつけていた匂いがどこのものか判ったのは、久栄の好きな薄焼き砂糖煎餅を売る、湯島横町にある近江やに平蔵が立ち寄ったときだ。ここの女将さんの髪に匂いがし、平蔵が尋ねると、池之端仲町の浪花やで売り出している白梅香だという。 こうして探索の糸口をつかんだ平蔵、密偵を使いつつ、徐々に半四郎に近づいていく。 半四郎の仇討ちの相手は、森為之介。20年の時間を経てしまうと、半四郎は為之介を見つけたとしても討つ気になれない。あまりに時間が経ちすぎた。 そして、この話は思わぬ結末を迎えるのだが、DVDでは、もう少し半四郎の精神面にスポットを当てている。仇討ち、自分、それを茶屋の女を通じてしかと確かめていく。それまで殺気の中で生きてきた半四郎が、平蔵暗殺の謝礼金300両をもってこの女の身請けを約束するのだが、女は寂しく笑って暗殺に行く(もっとも暗殺だとは知らないけど)半四郎を見送る。この約束のおかげで、半四郎から殺気がなくなり、生きたい、という気持ちが大きく膨れていく。 すでに依頼主である三の松平十を殺した半四郎は、平十のさらに上の雇い主がいることになっている。この人は、DVDを見ていただきたいけど、かつて池波作品「剣客商売」で秋山小兵衛役を演じたことのある歌舞伎役者さん。小さな身体なんだけど、存在感のあるお人です。 小説ではあっけない最期の半四郎ですが、DVDでもしっくりこない余韻が残ります。それは半四郎の悲哀を現しているのかなとも思います。
2007.08.28
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まだDVDシリーズの第1話は書けないのですが、「鬼平犯科帖」DVDボックスシリーズの全話をここで書いておこうかと思います。題名の後の「☆」はスペシャルです。(第1シリーズ)第1話 暗剣白梅香 第2話 本所・櫻屋敷 第3話 蛇の目第4話 血頭の丹兵衛 第5話 血闘 第6話 むっつり十蔵第7話 明神の次郎吉 第8話 さむらい松五郎 第9話 兇賊第10話 一本眉 第11話 狐火 第12話 兇剣第13話 笹やのお熊 第14話 あきれた奴 第15話 泥鰌の和助始末第16話 盗法秘伝 第17話 女掏摸お富 第18話 浅草御厩河岸第19話 むかしの男 第20話 山吹屋お勝 第21話 敵第22話 金太郎そば 第23話 用心棒 第24話 引き込み女第25話 雨の湯豆腐 第26話 流星☆ (第2シリーズ) 第1話 おみね徳次郎 第2話 むかしの女 第3話 白い粉第4話 托鉢無宿 第5話 五年目の客 第6話 雨引きの文五郎第7話 猫じゃらしの女第8話 盗賊二筋道 第9話 本門寺暮雪第10話 女賊 第11話 四度目の女房 第12話 雨乞い庄右衛門第13話 密告 第14話 夜狐 第15話 霧の朝第16話 白と黒 第17話 春の淡雪 第18話 下段の剣 (スペシャル)殿さま栄五郎☆ (スペシャル)雲竜剣☆(スペシャル)熱海みやげの宝物☆ (第3シリーズ)第1話 鯉肝のお里 第2話 剣客 第3話 馴馬の三蔵第4話 火つけ船頭 第5話 熊五郎の顔 第6話 いろおとこ第7話 谷中いろは茶屋第8話 妙義の團右衛門 第9話 雨隠れの鶴吉第10話 網虫のお吉 第11話 夜鷹殺し 第12話 隠居金七百両第13話 尻毛の長右衛門第14話 二つの顔 第15話 炎の色第16話 おしま金三郎 第17話 忠吾なみだ雨 第18話 おみよは見た第19話 密偵たちの宴(第4シリーズ)第1話 討ち入り市兵衛第2話 うんぷてんぷ 第3話 盗賊婚礼第4話 正月四日の客 第5話 深川・千鳥橋 第6話 俄か雨第7話 むかしなじみ 第8話 鬼坊主の女 第9話 霧の七郎第10話 密偵 第11話 掻掘のおけい 第12話 埋蔵金千両第13話 老盗の夢 第14話 ふたり五郎蔵☆ 第15話 女密偵・女賊第16話 麻布一本松 第17話 さざ浪伝兵衛 第18話 おとし穴第19話 おしゃべり源八(第5シリーズ)第1話 土蜘蛛の金五郎 第2話 怨恨 第3話 蛙の長助第4話 市松小僧始末 第5話 消えた男 第6話 白根の万左衛門第7話 お菊と幸助 第8話 犬神の権三郎 第9話 盗賊人相書第10話 浅草・鳥越橋 第11話 隠し子 第12話 艶婦の毒第13話 駿州・宇津谷峠(第6シリーズ)第1話 蛇苺の女☆ 第2話 お峰・辰の市 第3話 泥亀第4話 浮世の顔 第5話 墨斗の孫八 第6話 はさみ撃ち第7話 のっそり医者 第8話 男の毒 第9話 迷路☆第10話 おかね新五郎 第11話 五月闇 (第7シリーズ)第1話 麻布ねずみ坂 第2話 男のまごころ 第3話 妖怪葵小僧第4話 木の実鳥の宗八第5話 礼金二百両 第6話 殺しの波紋第7話 五月雨坊主 第8話 泣き味噌屋 第9話 寒月六間掘第10話 見張りの糸 第11話 毒 第12話 あいびき第13話 二人女房 第14話 逃げた妻 第15話 見張りの見張り(第8シリーズ)第1話 鬼火☆ 第2話 瓶割り小僧 第3話 穴 第4話 眼鏡師市兵衛 第5話 はぐれ鳥 第6話 おれの弟 第7話 同門対決 第8話 影法師 第9話 さらば鬼平犯科帳☆(第9シリーズ)第1話 大川の隠居☆ 第2話 一寸の虫 第3話 男の隠れ家第4話 一本饂飩 第5話 闇の果て 以上すべてそろえるとなると、25万円くらいかかりますね。 第9シリーズは本当はなかったシリーズだそうです。第8シリーズ第9話が「さらば」ですからね。ここで鬼平は死んでしまった、ことになっていますが。人気があったんで、リメイクも含めて第9シリーズを制作したとか。 このあたりでは、もう彦十役の猫八さんも亡くなっていることだし。 ということで、次回より鬼平犯科帖ブログ、再開です!
2007.08.23
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夜も遅く、お酒も呑んでしまっているので、明日また書きますが、予告、です! 明日は、DVDの第1シリーズ第1話、これを取り上げたいと思っています。何しろ、初登場の三代目鬼平、です。では、では!
2007.08.21
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伝説の盗人のお頭、蓮沼の市兵衛が、従来一人盗き専門であり、今では市兵衛の片腕ともなっている松戸の繁蔵が、壁川の源内に深手を負わされ、お熊婆さんの茶屋の隣の石灯籠の下に倒れていたところをお熊婆さんに発見され、彦十に知らせが入ったところからこの話は始まります。 盗人の三か条をきっちり守りながらお盗めをする市兵衛。物腰も柔らかく、言葉使いも丁寧で腰が低い。池波先生の描く大盗のモデルは、たいていがこの落ち着き払った、腰がどっかりと座った人物が多い。狐火の時もそうだったし。 やがて、松戸の繁蔵が死に、市兵衛はあだ討ちを決意する。手助けをするのは、長谷川平蔵だ。もっとも、市兵衛は浪人が鬼平だとは知らないまま、同意してくれた配下の者たちとともに、源内の盗人宿に殴り込みをかけます。 自分の子分(部下)がやられたから、やり返す、なんてことは現在の世の中では、やくざの世界以外では考えられないが、この心意気だけは現代にも生き残っているのではないかと思います。ただ、平蔵のこの頃よりもさらに、そんな人物は少なくなっていることでしょうが。 納得のできないやり方には同意しない。あくまでも責任者(お頭)として、きっぱりと断れる。それに対していちゃもんがつけば、対処し、それでも相手が納得できなければ、いつまでも時間をかけて一貫して断っていく。 この「一貫して」という気持ちや信念が、本来であれば相手に届くのであろうが、相手にも「信念」がなければ、届くものもなかなか届かないものだ。 この話も、互いに方向性が違うお頭が衝突、そして市兵衛は討ち死にする悲しい結果になるのだが、思いは平蔵によって遂げられ、源内は市兵衛によって殺される。 市兵衛から助っ人料としてもらった50両を、平蔵は市兵衛の片腕の鞘師長三郎に、お白州の席上、手渡し、「市兵衛ほか、斬死した者たちの墓を建ててやるがよい」といい、「死んだお頭がこと、忘れるなよ」とにこりと笑って言う。 こうして生き残った市兵衛の子分2名は、後に密偵になるのだが、市兵衛の信念を引き継いでいるからこそ、平蔵も彼らを密偵にしようと思ったのだろう。清清しい話である。
2007.08.20
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長谷川平蔵に弟はいない。いないが、道場で弟のように可愛がっていたのが滝口丈助。高崎道場で剣術を教える丈助だが、この高崎先生の跡継ぎに選んだのが丈助。しかし、これに反対しているのが、石川源三郎という、7000石旗本の三男坊。こいつがまた性格が悪い。 自分こそ跡継ぎである、として丈助に決闘を申し込む。丈助は、万が一を考えて、今井宗仙先生に嫁いだ実の妹、お市にだけ決闘のことを告げるが、あえて決闘日時を5日後と遅めに言った。そうでもしないと、お市が夫に相談などしてしまうと考えたからだ。 そして決闘の日。平蔵たちも隠れて様子を窺っていたが、卑怯にも源三郎。弓矢で丈助の胸を射るや、襲い掛かって来た。これはもう決闘なんかじゃないですね。 これを見た平蔵。飛び出し、源三郎とその仲間に挑んだものの、丈助は死んでしまう。 さらには、旗本の事件ゆえに平蔵が処理できず、評定所扱いで親の威光と、親の都合で、この件はもみ消しとなる。今もこういった、お偉いさんが何を勘違いするか、自分の権力を私用で使ってもよいと思うのだろう。ましてやそれが自分の息子ならばなおのこと。 でもただの揉み消しじゃない。殺人だから、平蔵も怒りを納める矛先を失い、それから1年を経過する。そして…。 DVDでこの話は、第8シリーズの第6話に収録されている。 平蔵の本当に悔しい目、そして鬼、と呼ばれるほどの怒りの目。そしてラストにしてやったりの目。この話を通して、平蔵の心情が実に目で現されていると思います。悲しいけど、いい話でした。
2007.08.16
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まだ伊三次が生きていた頃の話で、最近DVDも見たものでちょいと書いてみます。長谷川平蔵の密偵といえば、相模の彦十、大滝の五郎蔵、舟形の宗平、小房の粂八、そして伊三次の5人。これにおまさが加わり、この6人が最強の密偵たちだ。金科玉条の3か条を守り抜いた密偵たちだけあって、この頃にはびこる急ぎばたらき、畜生ばたらきの連中を横目に見やり、怒りを覚えているのが、そもそもの事の発端。自分たちの信条を世の中の元の同業者に見せてやりたい、と思うのは現代の今にも誰にもあるような思いだろう。「なんて仕事をしてやがる!」とよく年配の経験者はおっしゃいます。このことよ(池波風)。この話で珍しいのは、この6人が五郎蔵宅で密会をした会話を、台本風に書いていること。こうして書いてあると、なにやら密会らしい会話で読めてしまうのが不思議だ。狙いは悪徳医者の竹村玄洞。正規の医療のほかに、法外な利子をとって金を貸し付ける悪どい医者、ということ。なんかこれ以上悪いことをやっている医者は今もいそうな気がするが、それはそれとして、この先生の家にある蔵の中の金をいただいてしまおう、という、密偵たちのお遊び事。こんな設定だけでもわくわくしてしまう♪で、他の線からの盗みのつながりから、竹村先生の家に盗人が入るわけだが、ここに密偵たちが絡み、盗人が捕らえられたにもかかわらず、お金はその日の夜に鮮やかに盗まれる。竹村先生は平蔵の不手際を責めるが、「3日のうちに金が戻らねば、わしが腹を切る」と断言するあたりが、平蔵のすごい自信と信頼なんだろうな、と思います。何せ、武士に二言はない時代。言った以上切腹しないことには面目が立たないですからね。「責任は俺が取るから」と胸を張って言ってくれる上司も少なくなった今日この頃、頼れる台詞です。 そして、そんな言葉のとおり、お金は3日後に竹村先生の家の前に戻ってきます。 どうやって盗みに入ったかは読んでほしいですが、その後の打ち上げの席に平蔵が顔を出し、一言。 その一言で密偵たちは平蔵の凄さを改めて思い知ることになります。 「ええい、もう今日は反吐を吐いても飲むぞ!」とは五郎蔵の言。 愉快な話ですが、DVDのラストシーンで、平蔵がぺろりと舌を出すシーンが、かわいいやらすごいやら。思わずこちらもにやり、としてしまいました。
2007.08.15
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池波正太郎、中でも「鬼平犯科帖」に惚れ込んだのは、小説もしかり、そしてDVDを見て、こんな男になりたい、そう思うようになったからだ。 中村吉右衛門、3代の鬼平役の中でも、この人が一番格好がいい。惚れ惚れする。 そんなこの人を思い浮かべつつ、小説を読むと、ますます小説が生き生きしてくる。 一話一話が思い出がある。そんな思いの一遍を綴っていきたいブログです。 まったくの独りよがりになりかねないブログですが、お暇でしたら、読んだ話の感想でもください。
2007.08.13
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