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profile:山本ふみこ
随筆家。1958年北海道生まれ。つれあいと娘3人との5人暮らし。ふだんの生活をさりげなく描いたエッセイで読者の支持を集める。著書に『片づけたがり』 『おいしい くふう たのしい くふう 』、『こぎれい、こざっぱり』、『人づきあい学習帖』、『親がしてやれることなんて、ほんの少し』(ともにオレンジページ)、『家族のさじかげん』(家の光協会)など。

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2013/11/05
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カテゴリ: うふふ日記
 家のなかにも、緊急事態がある。

 子どもにも、緊急事態がある。

 猫にも、緊急事態がある。

 犬にも、めだかにも……。
 かまきりにも、むくどりにも……。

 そう書きはじめると、絶滅危惧種の仲間たちが、ぼくもわたしもと、ここへやってきて、「緊急」を訴えそうな。
 うなぎも、キジバトも、絶滅したと云われているドードー鳥までもが、ここへ。

 わたし自身の不手際から、机の上に「緊急事態」を招いた2週間あまり、夫が晩ごはんの仕度を幾度か、引き受けてくれた。
「ぼくがするから」と云う夫の表情はやけに明るく、たのしそうだった。


 夫は、その間の食事の仕度を引き受けるなかで、だんだん料理の腕を上げていった。しかし、ほんとうのところ、いちばん腕を上げたのは、作り手への「感謝」の表わし方だ。
 ふた月を経て帰ってきた夫は、唇に「気」をため、ゆっくりと「い・た・だ・き・ま・す」と「ご・ち・そ・う・さ・ま」を云い、これがいちばんの変化だったのだが、食べたあと「おいしい……!」と云った。感想も云うようになった。
 聞けば……。
 自分で料理したものを、O氏が「これはうまい」「おいしいなあ」とつぶやくのを聞くと、うれしくてならなかった。自分がこれまで、おいしいと思うだけで、それを口にしなかったことに気がついて、猛省した。
 とのこと。なるほど、そうだったのか。

 夫が受け持ってくれた晩ごはんに登場したのは、味噌汁、焼き野菜、豚肉のソテー、鯖のサラダとアイオリソース(にんにく、卵黄、オリーブ油、レモン汁、塩、こしょう)、親子丼、野菜炒め……など。どれもおいしかった。

 わたしのは、机の上の、ちょっとした「緊急事態」にほかならないが、それは、いわば日がな一日トンネルのなかにいるようなものである。トンネルのなかに季節はなく、ひとりぼっちだが、夕方抜けだしてみると、ごはんができていた。つくってもらったごはんを食べながら、思うのだ。
 早くトンネルから出て、台所でゆっくり働いたり、まずいものができて「失敗失敗」と笑ったり、初めての料理に挑んだり、包丁で指を切りそうになって「あ!」と叫んだり、思いだし笑いをしながら野菜を刻んだりしたいなあ。


 どうか、トンネルを抜けて呑気にあくびなんかができる日がめぐってきますように。まず、トンネルの出口が見えますように。

ブログ豚肉のソテー 焼き野菜添え.jpg

です。この日の献立は、
 ご飯
 豆腐とわかめの味噌汁
 豚肉のソテー 焼き野菜添え
 レタスとネギのサラダ
 ぬか漬け(これだけわたしが漬けました)
でした。

ごちそうさん。





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最終更新日  2013/11/05 09:49:33 AM
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