もずやの『一期一会』

もずやの『一期一会』

2009.02.07
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責任に時効なし―小説巨額粉飾
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=8270135&id=1135963

元カネボウの財務担当常務がカネボウの粉飾と崩壊をめぐる実話をもとに書いた本だった。ともさんのミクシィ日記でこの本を知った。
 私は大学を出て、2年間鐘紡に在籍していた。私のころはまだ漢字の鐘紡だった。自ら繊維素材部門を志望して、羊毛事業部の大垣工場(岐阜県)に配属された。当時の羊毛担当重役の『メーカーの営業たるもの工場を知らずしてなんとする』という方針で5年間の工場勤務が通例だった。私はここでいろんなことを学んだ。毎日毎日草むしり、ペンキ塗り、どぶ掃除。高い鼻っ柱を徹底的にたたき折られた。そして、『君たちにできる事は今はこれくらいしかない』と言われ、現実を思い知らされた。そして工場の古参の従業員には重荷呼ばわりされた。でも私たち見習生(大卒の新卒工場勤務者をそう呼ぶ)はみなプライドを持って頑張っていたと思う。
 私は大垣工場で工務管理とという仕事をしていた。簡単にいえば、反物がおりあがってから、染と加工工程を経て出荷されるまでの納期管理だ。私は輸出用の製品を担当していた。管理部門といえば聞こえはいいが、実際には加工課の進行係と一緒になって、反物を担ぎ、工場内を走り回り、女工さんの機嫌を取って、張り切って仕事をしてもらうのが仕事だ。それと、ワイワイ言ってくる本部の営業と工場の間のクッション役。言わば、工場の頭脳兼中枢神経兼インナーマッスルというところ。
 たった二年の工場勤務でも鐘紡精神は叩き込まれる。否、工場生活にこそ、鐘紡の本質があったのだと私は思う。

 この本の著者はそういうわけで、私の先輩にあたる人だが、どうも違和感を覚える。工場で汗水たらして働く人への愛が感じられないからだ。そして、自分一人がいい子を演じているように私には映る。会社の一員であるというのは、その会社の歴史の中に身を置くことだと私は思う。古臭いようだが、それが伝統であり企業風土というものである。
この本の主題『責任に時効なし』というのは明らかに名誉顧問の伊藤淳二の責任を指してのことだろう。著者は、『損を出した者と、損を隠した者、どちらが悪いと言えば、出したヤツだ』と言っているがそれは違うと思う。企業と言うのは損を出す時もあるし、それを表に出せない時もある。ましてやそれを起業したりして、愛着がある場合はそうなることもある。しかし、それも会社の歴史なのだと私は思う。伊藤淳二が将来的に大粉飾につながる原因を作り、実際に粉飾も指示していたとしても、まぎれもなく伊藤氏は鐘紡の大功労者であり、関西経済界の大重鎮だった。鐘紡の光だった。神だった。しかし、伊藤氏が退いた後、鐘紡への熱い愛があれば、伊藤氏を説得して軌道修正するのが社員全員、なかんずく役員の使命ではないのか?もちろん、簡単ではないだろう。しかし、隠した方も同じかそれ以上の罪があると私は思う。世の中には親の作った負債を背負って家業を継ぐ後継者は五万といる。その中で苦労している人をたくさんい知っている。しかし、それが先代の責任であるといっても詮無いことなのである。先代を説得し、また軌道修正して切り盛りしてこそ、2代目、3代目の役割が果たせるのだと私は思う。当時の鐘紡の他の役員はもちろんのこと、この著者もふがいなかったと恥じるべきだ。そして、愛する会社の恥を世の中にさらして、印税を稼ごうとするこの著者に対しては、怒りを覚える。どんなに、自己弁護しようと鐘紡を潰したのはアンタ達なのだから。
 私は亡父の勧めで鐘紡に入った。都市対抗三連覇、『赤ちゃんの時から鐘紡毛糸』・・・鐘紡は大阪の誇りだった。

 この本を読んで、『いい時に辞めた』という気持ちと『最後まで見届けたかった』という気持ちが交錯する。しかし、私が鐘紡で学んだことは決して忘れないし、OB達は今でも鐘紡を愛していると思う。それが証拠に三田会に行って元鐘紡というと必ず、『私も鐘紡にいたんですよ』と声をかけてくれる大先輩がいらっしゃるのだ。
 このカネボウの崩壊劇を胸にしまい、経営者の端くれとして、いかに生きるべきか、いかに愛される会社をつくるかを考えながら自らを律していきたいと思う。






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Last updated  2009.02.07 07:28:37
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