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Apr 18, 2009
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カテゴリ: 劇評
現在形の批評 #94(舞台)

「精華演劇祭vol.12」

2月15日~4月12日 精華小劇場

精華演劇祭vol.12 DIVE演劇祭


「精華演劇祭vol.12 DIVE演劇祭」を思考する(その2)


(その1)  より。
引用したキタモトの、「私たちは何を成すべきなのか。私たちに何ができるのか。問いかけたい。問いかけられたい。」の言葉は演劇人・観客双方に対話空間を現出させ、来るべき関西演劇の未来への試金石にするといった意気込みが感じられ至極全うであるのだが、目玉公演の『中島陸郎を演劇する』から十分その言葉が聞こえてこないのだ。鉄パイプを組み合わせてジャングルジムのようになった舞台装置に登り、あるいはまた取り囲んだ総勢41人の役者達。サイレンの灯りが転回し音が鳴り響いて騒然とする中、一人の人物がスピーカーを手に演説をぶる。内容は途切れ途切れにしか聞こえないが、演劇にかける思いや有無を言わさず劇場閉鎖を敢行する行政への批判が聞き取れる。そう、このシーンはまさに40年前の1969年、東大安田講堂をバリケード封鎖して占拠した当時の大学生が、自分達の場を何が何でも死守すべくアジり、大学当局と機動隊に抵抗した姿に重なる。俳優の中には涙を浮かべる者もいたが、そのファナティックな情景は観客との齟齬を大きくするばかりで、我々に直截届くものではなかった。それは、東大安田講堂事件の顛末が敗北でしかなかったからというような卑小な見方ではなく、本来ならその手法によって物語性を解除されるため、我々(演者-観客)にとって切実な言葉となるはずだが、自らの決意表明のみが強調されるため、言葉は彼らへ自己言及するだけの機能しか有しないのだ。観客不在で一方的に乱射される言葉はそれ故、現実的な切実さを纏うかに見えその実、虚構性をどんどん押し広げるもののついぞ突破する力をあらかじめ持ってはいないのだ。白々しく響く言葉で横溢する空間はしたがって、理想に酔狂する様ばかりを前景化する。


同じような場面が劇団太陽族の作品にも出てくる。いくつかの巻物に分けてしたためられた中島氏による演劇や人間、世界に対する言葉を読み上げた後、そのまま最前列の観客へ恣意的に渡し、言葉で取り囲まれた状態を作る。そして、改めてそれらの言葉を俳優が今度は自分の言葉で咀嚼するのである。このシーンはささやかではあるが、ここには円形劇場を観客との共同討議の広場と捉え、対話を図ろうとする意志がはっきり表れている。演者と観客はこの時、同一平面状で対等な位相になる。中島陸郎が構想した円形劇場に夢想した理想的な時間はこういうものだったのではないか。氏が残した言葉をただありがたがるのではなく、自らの血肉にしなければならない。役者が我々に披露することは、丸裸の身体で行う痛みを伴うプレゼンテーションなのだ。その様を通して、場に居合わせた者も現在形で氏の言葉を自分の言葉へ変換する作業が促される。そのようにして形成され交流される討議の場は、演劇そのものの望ましい姿でもあり、それこそが中島氏へのの返礼になるのだ。加えて、氏の言葉を自らの思想と共に熟成し血肉化しようとすることは今後への挑戦も伺える。


確かに、「前衛に傾斜したラインナップ」と中西が捉えるような3作ではある。だが、中島陸郎が前衛だったのは、実際の演劇活動時代だけではなく、プロデューサー時代の、劇場を獲得したり若い世代を押し出す企画力を発揮した時も含め一貫して前衛だったのではないか。前衛とは、共に考え・共に悩・み共に行動する「場」を生み出すために進んで身を投じ、不可視だったものを手繰り寄せ公共性を宿さんとする姿勢と精神のことなのだ。そのことを先鞭者と言い換えても良い。だから決して、プロデューサー面を揚言することで「前衛に傾斜」することから逃れる訳ではないし、またそうしなければならない理由などどこにもない。


この演劇祭が玉虫色で危うかったのは、以上の理念がはっきり提示されたのは劇団太陽族のみで、共有が不十分であると思い知らされたからである。ただ、裏を返せば10年経ってようやく中島陸郎を見据える地点に我々はようやく辿り着いたのだとも言える。悠長に構える時間はそんなにはないだろうが、演劇の必要性を、こと財政難で困窮する地で広場として根付かせる困難はそれほど容易くないことを覚悟し、その上で尚、挑戦する端緒として今回の結果を私は積極的に受け止めたいとも思うのだ。





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Last updated  Apr 24, 2009 11:25:25 AM


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