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釈迦楽

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August 26, 2006
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カテゴリ: わけ分からん



著者の中山さんというのは元ウズベキスタン大使です。つまりこの本は、中山さんが大使として赴任したウズベキスタンの思い出を語ったものなんですな。

ところで、この中山さんという方ですが、大使を勤めてしまうくらいなんですから、能力の点でも人格の点でも優秀な方なんでしょう。が、文才の点から言いますと、ま、ほとんど素人のレベルと言っていい。この本にしても、見聞きしたことをそのまま素直に書きました、みたいな感じです。ま、申し訳ないですけど、その点から言えば私の鑑賞に耐えるものではありません。別に理由がなければ、私が手にとる本とは思えない・・・。

しかし、実際に読んでみてどうかと言いますと、これが結構面白い。というのは、中山大使がウズベキスタンに赴任した直後、大変な事件が起き、この本はその事件の顛末を語っているからです。運の悪いことに、中山さんが1999年8月にこの国に赴任したそのすぐ後に、JICAの職員として隣国キルギスに赴任していた日本人技師4人が当地の反政府ゲリラに拉致されるという事件が起きるんですね。で、赴任早々、中山さんはじめ、ウズベキスタン大使館のスタッフが大騒動に巻き込まれてしまうわけ。

でも、キルギスで起きた事件なんだから、何もウズベキスタン大使(タジキスタン大使を兼任)である中山さんがどうこうするものではないような気がしますが、そうじゃないんです。というのも、日本人を拉致した犯行グループは、もとウズベキスタンから出て、タジキスタンで活動していたイスラム原理主義者たちだったからで、こういう連中は反政府活動グループですから、国境近くの砂漠の山岳地帯を常時移動しているので、たまたま拉致したのがキルギス領内だったからといって、キルギスとは何のつながりもないんです。ですから、犯行グループと接触したり、交渉するには、どうしてもウズベキスタンとタジキスタンの協力が必要だった。

ところがですね。ここで日本の外務省の馬鹿さ加減が露呈するわけですが、我が国のアホな外務省は、この事件の解決をキルギス政府に丸投げするんです。で、中山大使らがいくら本省に掛け合って、「キルギス政府に任せたって解決しません」と進言しても聞く耳もたず、「お前らは近くにいるんだから、せいぜい情報収集でもやっとけ」と言うばかり。

というわけで、中山大使をはじめ、ウズベキスタン大使館のスタッフは、外務省の命令に背いて日本人拉致被害者の救出にあたるしかなかった。昼間は通常の大使館業務をこなし、その後で寝る間を削って犯人グループとの折衝をしたわけです。そして、その救出活動にはウズベキスタン大統領、タジキスタン大統領も非常に大きな貢献をしてくれた。

しかし、犯行グループも疑心暗鬼になっていますから、そう簡単には交渉のテーブルについてくれないわけですよ。もちろんお金で動く連中ではないですし。ですから、そこは「や○ざ」の親分同士の話し合いみたいな感じで、義理と人情で必死の説得を連日連夜にわたって行うわけ。

それで、事件発生から2ヶ月にわたる奮闘の末、ようやく被害者の解放がなされたんです。その影に、中山大使たちのそんなご苦労があったなんて、我々日本にいる日本人は、知る由もないわけですが。



で、もちろん拉致被害者を救出するために死ぬような思いで働いたウズベキスタン大使館のスタッフには、なーんの報償もなしですわ。もちろん、誉められようとして一生懸命やったわけではないでしょうけど、それにしても酷い話です。

すごいでしょ、日本の外務省の馬鹿さ加減。現地で一番事情が分かっている人たちの話を絶対に聞かないってんだから、もう常識を超えた馬鹿じゃないですか・・・。ま、本省がそんなでありながら、現地のスタッフは正義感と使命感に燃えて、たとえ自分たちが罰せられようと、被害者救出のために骨身を削って努力した、というところが、せめてもの救いですが。

ってな感じで、この本の前半は日本人拉致の顛末について語っており、「はぁ~、そんなことがあったんですか~」の連続で、それはそれで面白いのですが、後半はまたガラっと趣が変わって、日本人にはあまり馴染みのないウズベキスタンという国のお国柄について、楽しい話を読むことができます。正直な話、私なんぞウズベキスタンがどの辺にある国かすら、明確には知りませんでしたからね。

ただ、ウズベキスタンについて知らないのは日本人の側の話であって、ウズベキスタンの人は日本のことをよく知っています。というのは、第2次大戦後、ロシアに抑留された日本人が遠く中央アジアのウズベキスタンまで運ばれ、そこで強制労働させられたからです。ですから今でもウズベキスタンの各地に日本人が作った橋、日本人が作った道路、日本人が作った建物が残っているんですな。そしてそれが数十年経った今でも立派に使われている。当時を知るウズベキスタンの人々は、日本人労働者がいかに勤勉で、いかに有能で、いかに清潔で、いかに礼儀正しかったかをよく覚えていて、今でも彼らの墓を大事に守っていてくれるのだそうです。

で、そんな日本人とウズベキスタンの人々の交流の証として、中山さんはウズベキスタンに桜を植えようと思いつくんですな。死ぬ前にもう一度日本の桜が見たいといって、彼の地で死んでいった日本人たちの鎮魂の意味を込めて。本書が『ウズベキスタンの桜』となっているのは、そういう意味です。

最初に「著者に文才がない」なんていいましたけど、実際にこの本を読んでみて、色々と勉強になりました。それに中山さんの話を読むと、ウズベキスタンをはじめとする中央アジア諸国って、いいところだなと思います。日本も草の根レベルではこういう国々と交際を続けているようですけど、もっと大規模に国同士の交流を図ればいいのに。なんで日本は、日本のことに文句ばかりつける近隣の国のことばかり気にしているのか、私にはさっぱり分かりません。世界は広い。親日の国なんて、世界中にいくらでもあります。そういう親日の国々と、気持ちのいい交際をしたらいいじゃないですか。

というわけで、そんな親日の国・ウズベキスタンにもっと興味を持ったらいいなとの希望を込め、この本、教授のおすすめ!です。


これこれ!

ウズベキスタンの桜
ウズベキスタンの桜





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Last updated  August 26, 2006 03:54:13 PM
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津田正@ Re:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 田山力哉さんですが、私もその時代に授業…
釈迦楽@ Re:明けましておめでとうございます。(01/01) ゆりんいたりあさんへ  やあ、先日は楽…

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