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January 12, 2023
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カテゴリ: 教授の追悼記
東京外国語大学名誉教授で英米文学者/翻訳家の河野一郎先生が亡くなりました。享年93。

 私は河野先生とは直接の面識はなく、ただ高校生の頃、先生が訳された新潮文庫版の『遠い声 遠い部屋』(トルーマン・カポーティ)や『嵐が丘』(エミリー・ブロンテ)、『長距離走者の孤独』(アラン・シリトー)などを読んで、その外連味のない上品な訳文に感銘を受けたことや、大学の教員になって翻訳論を大学院で講じた時に、先生のご著書である『翻訳のおきて』を参考にさせていただいたことなどが印象に残っているだけ。

 しかし、そんなことよりももっと強い印象を受けたのは、今から20年ほども前、私がアメリカのペーパーバック本についての研究書を出版した時のこと。

 その時、河野先生は拙著を読んでくださったようで、まったく面識のない私に、先生の蔵書の中から私の研究に関係のありそうな古いペーパーバック本を段ボール箱に入れて送って下さったんです。自分が持っているより、あなたが持っていた方が役に立つでしょうからと。

 学界の大御所からそんな風にしていただいて、私が大感激したことは言うまでもありません。本当に優れた先生というのは、見ず知らずの若輩に対しても、こういう風に接してくださるのかと。

 だから私は、河野一郎先生に対しては、不動のリスペクトを持っているんです。

 優れた先生というのは皆そうですけれども、例えば私が今度本を出すに当たっても、「これ、もし河野一郎先生がこれをお読みになったら、褒めてくださるかな? それとも顔をしかめられるかな?」と思うところがある。それによって、「先生にお見せしても恥ずかしくないものを出そう」という気になるわけですよ。偉い先生というのは、たとえ亡くなられた後ですら、そういう形で後進の襟を正すことができる。

 私にとって河野一郎先生は、そういう先生のお一人です。





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翻訳のおきて [ 河野一郎(1930-) ]





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Last updated  January 12, 2023 02:48:34 PM
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Comments

yanvalou@ Re:『スペクテイター』44号、「ヒッピーの教科書」を読む(07/14) ヒッピーの語源ですが、「ヒップスター」…
釈迦楽@ Re[1]:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 津田正さんへ  ええ゛ーーーー。そうだ…
津田正@ Re:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 田山力哉さんですが、私もその時代に授業…
釈迦楽@ Re:明けましておめでとうございます。(01/01) ゆりんいたりあさんへ  やあ、先日は楽…
ゆりんいたりあ @ 明けましておめでとうございます。 釈迦楽さん、いつも楽しいブログ記事あり…

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