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July 20, 2025
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カテゴリ: 教授の読書日記
ジェームズ・クリアーが書いた『複利で伸びる1つの習慣』という本を読了しましたので、心覚えをつけておきましょう。

 この本、原題は『Atomic Habits: An Easy & Proven Way to Build Good Habits & Break Bad Ones』(2018) といって、ベストセラーなんですけど、『複利で伸びる・・・』なんてヘンテコなタイトルにしないで、『アトミック・ハビッツ』のままにしておけばいいのにね。

 ・・・っていうか、アレかな。日本人には「アトミック」という言葉に敏感に反応するからまずいと思ったのかな。

 それなら分からぬでもない。でも本書でいう「アトミック」というのは「原子力」とは全然関係がない。むしろギリシャ以来の原子観、すなわち「最小単位」という意味のアトミックね。そのココロは、「ものすごく小さな努力を積み重ねていけば、やがては大きな結果が出る」という意味。ここまで言えば誰でも推測できるでしょうが、この本はそういう、何人も否定のしようがないほど正攻法な努力論です。健康的だねえ。

 さて、この本を読んで、一番感銘を受けたのは、第2章ね。この章は素晴らしい。

 先に述べたように、本書は良い習慣を身につけることによって望ましい結果を得るためのノウハウを伝えることを目途としているわけだけど、クリアー曰く、良い習慣をつけるのは難しく、悪い習慣を繰り返すのは簡単だと。では、それは一体なぜなのか?

 クリアー曰く、身に付いた悪い習慣を改めて、良い習慣を身につけるのが難しいのは、理由が二つある。一つは「変えようとするものが間違っている」で、もう一つは「習慣を変えるための方法が間違っている」と。で、本書第2章では、「変えようとするものが間違っている」という部分について詳述してある。

 じゃあ、普通の人は、何を変えようとするのか。

 クリアー曰く、普通の人(つまり、習慣を変えることに失敗する人)は、結果を変えようとする、というわけ。あるいは、何らかの成果を得ようとする。



 はい、こういう人は、絶対禁煙できません~。

 では、喫煙習慣を変えて、禁煙に成功する人はどう答えるか。そういう人はね、「いや、結構です。私はタバコを吸いませんので」と答えるんですって。

 「禁煙中だからタバコは要らない」と答える人と、「私はタバコを吸わないので、タバコは要らない」と答える人。この両者には大きな違いがあると、クリアーは言うわけ。

 前者は、まだ自分が喫煙者であることを認めているのね。喫煙者なんだけど、今は禁煙中だ、と。しかし後者は全然違う。後者は「自分はもはや喫煙者ではない」と言っている。

 つまり、アイデンティティーが違うんですな。前者のアイデンティティーは「喫煙者」、後者のアイデンティティーは「非・喫煙者」。だから、前者は禁煙に失敗するし、後者は成功する。

 クリアーによれば、すべての習慣の背後にはアイデンティティーがある。そのアイデンティディーを変えない限り、習慣を変えることはできないんですな。だけど、アイデンティティーごと習慣を変えようとする人は少ない。だから、多くの人は悪習を断ち、良い習慣を身につけることに苦労するのだけど、アイデンティティーから変えてしまえば、そうすることはずっとたやすくなると。

 ひょえー! 素晴らしい洞察! 私はこの章を読んで感動しちゃった。

 だからね、「ボストンマラソンに出るために、ランニングの練習をしよう」としても、この習慣は身に付かず、さぼりがちになるわけ。そうではなく、「私はランナーだから、毎日走るのは当たり前だ」という風に、ランナーとしてのアイデンティティーを確立していれば、さぼることはなくなると。「選挙の投票は国民の義務だから」と思っている人は、悪天候の中、わざわざ投票に行くことにためらいがちになるけど、「私は有権者だ」という風にアイデンティティーを確立している人は、天候がどうだろうが投票に行く。それが自分であることの表明だからね。

 ただし、アイデンティティーは諸刃の刃でもあるのね。たとえばアイデンティティーとして「自分は数学が苦手だ」と信じている人は、数学の勉強をすることをためらうようになる。同じく「自分は方向音痴だ」という風にアイデンティティーを持っている人は、地図を読む練習すらしなくなる。こうなると、習慣を変えないための口実にアイデンティティーを使っていることになりますわな。

 だから、扱いは難しいのだけど、確実に言えることは、アイデンティティーごと変えていかないと、悪習を断って良い習慣を身につけることは難しいということ。これは覚えて置いていいことではないかと。

 で、以下、本書ではどうやったら良い習慣を身につけることに成功するか、どうすれば悪習を断てるか、その具体的かつ効果的なノウハウが次々と出てきます。



 毎日、本を読むことを義務付けようとか、毎日走ろう、と決意しても、三日坊主になりがち。それならば、最初のうちは「毎日1頁だけ読もう」とか、「毎日2分だけ読もう」とか、そういう風に極端に低いハードルを設定する。「毎日走る」のではなく、「毎日、この時間になったら、ランニングシューズに足を入れる」とか。そうやってごくごく軽い負担を設定し、しかし毎日確実に続けていけば、いつか1頁、2分の読書だけでは物足りなくなるし、どうせランニングシューズを履いたのなら、家の周りを一周するか、という気にもなる。まずはそうやって、習慣を継続することが重要だよ、と。

 逆に、悪い習慣を断つためには、その悪い習慣を続けるためのハードルを上げる。ついついテレビを見てしまう、ついついパソコンでアプリを使ってしまうのであれば、テレビを観た後にはコンセントを抜いてテレビを押し入れに片付け、アプリを使った後にはその都度そのアプリを削除する。次にテレビを見たり、アプリを使うために、相当面倒臭いことをしなければならないのなら、その習慣はだんだんなくなっていくだろうと。

 あるいは、人に見られている、あるいは、人から判断されていると考えると、自ずと自制心が出る、という心理学的真理を用いて、家族の誰か、たとえば奥さんとかに、「自分が○○していたら/していなかったら指摘してくれ」というように頼んでおくとか。あるいは、もし「○○をしていたら/していなかったら」特定の誰かにある程度の額のお金を渡す、というようなルールを設定しておくといい、とかね。なぜなら、人間は、短期的な罰を避けたがる習性を持っているから。

 あるいは、毎朝、健康的な食事をとる、ということを目標にするのならば、朝を迎えてからあれこれ作業するのではなく、前の晩のうちにサラダを作って冷蔵庫に入れて置くなど、そのための作業を少なくすれば、習慣が維持されやすいとか。

 とまあ、そんな感じで、どうやれば良い習慣を続けられるようになるか、悪い習慣を断てるようになるかについて、心理学などの学問的根拠のあるありとあらゆるノウハウが書いてあって、それらはどれも理屈の通った、効果的なものだと私には思えます。



 ということで、私もこの本を読んで、アイデンティティーごと変えて、よい習慣を身につけることにしようと思います。大いに勉強になりました。この本、教授のおすすめ!です。


これこれ!
 ↓

ジェームズ・クリアー式複利で伸びる1つの習慣 (フェニックスシリーズ) [ ジェームズ・クリアー ]





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Last updated  July 20, 2025 02:00:05 PM
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yanvalou@ Re:『スペクテイター』44号、「ヒッピーの教科書」を読む(07/14) ヒッピーの語源ですが、「ヒップスター」…
釈迦楽@ Re[1]:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 津田正さんへ  ええ゛ーーーー。そうだ…
津田正@ Re:東陽一、長谷川和彦、そして田山力哉(02/03) 田山力哉さんですが、私もその時代に授業…
釈迦楽@ Re:明けましておめでとうございます。(01/01) ゆりんいたりあさんへ  やあ、先日は楽…
ゆりんいたりあ @ 明けましておめでとうございます。 釈迦楽さん、いつも楽しいブログ記事あり…

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