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November 25, 2025
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カテゴリ: 教授の読書日記
昨年、斯界で大きな話題となったパーシヴァル・エヴェレットの『ジェイムズ』という小説を読んでみました。以下、ネタバレ注意ということで。

これこれ!
 ↓

ジェイムズ [ パーシヴァル・エヴェレット ]


 本作はマーク・トウェインの傑作『ハックルベリー・フィンの冒険』のスピンオフというか、トウェインの作品がハックの視点で書かれているのを、ハックと行動を共にする黒人奴隷のジム(=ジェイムズ)の視点から語り直すという趣向。もっとも後半に至ると、元ネタを逸脱していくんですけどね。

 で、全米図書賞だとかピューリッツァー賞とか、主要な賞を総ナメにしたというね。だから、まあ、一応はまだアメリカ文学者の端くれという立場からして、読んでおかないといかんのかなと思ったわけよ。

 で、どうだったかって? それ、ワタクシに聞く? 大抵の人が「素晴らしかった!」と感心しまくる作品をワタクシがどう評価するか、敢えて聞く?

 聞くなら答えるけど、まあ、大したことはないね(爆!)。



 なんかね、あちこち中途半端なのよ。たとえばジェイムズが「書くこと」に執着することとかね。ノートや鉛筆に執着していることはわかるのだけど、その結果、どうなったの? それが書いてない。まさかこの小説自体がジェイムズの作品とか? それならそれでいいけど、そう窺わせるようには書いてない。

 あと、逃亡奴隷としてジェイムズが受ける様々な悲惨な事件にしても、なんかリアリティがないんだよね! たとえばジェイムズに鉛筆を渡すために、奴隷主から鉛筆を盗んだ奴隷が奴隷主に殺されるという場面とか。だって奴隷って、タダじゃないのよ。奴隷主にとってはひと財産だ。それを、たかがちびた鉛筆一本盗んだために殺すとか、そんなことありえない。悲惨さを演出するためにあり得ない作り話をしているところが興ざめもいいところ。むしろ「この奴隷、値段が高かったんだから長く使おう」という白人奴隷主の心根こそリアルであり、そっちのリアルさを批判すべきなのにね。

 で、そんな風にあり得ない悲惨さをずっと描いていたのに、最後の最後になってジェイムズはいとも簡単に悪い白人を皆殺しにし、あっさり妻子を助け出して北部への脱出成功なんて、どんだけ都合がいいんだと。

 あと、ジェイムズがハックの父親だったなんて、もう、あり得ないを通り越して噴飯ものよ。

 なんつーの? さっきの「書くこと」にしても、ジェイムズが使い分ける言葉遣いの件にしても、あちこちで描かれる「パッシング」の事例にしても、ミンストレル・ショーのくだりにしても、ジェイムズの空想の中でのジョン・ロックやらヴォルテールやらとの会話にしても、作者のエヴェレットが研究者受けしそうな主題の餌をあちこちにバラまいているような感じがするじゃないの。そんな、これ見よがしに「拾え」と言われているものなんか、ワタクシは拾わないよ。

 でも、そういうのを拾いまくって、研究発表する研究者とか、今後、やたらに出るんだろうな。「ジェイムズは、自ら語る/自ら書く主体となることで、白人支配の構図を鮮やかに逆転してみせたのだ」とかなんとか。やだねえ、そういう頭でっかちな結論。作者の思うつぼじゃないの。

 っつーわけで、この小説、ワタクシにはあまり響かなかったのでした。同じ「ジェイムズ」なら、ワタクシはビリー・ジョエルの名曲の方を推すな。こっちはちゃんと「小説」してるからね。

これこれ!
 ↓
ビリー・ジョエル「ジェイムズ」





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Last updated  November 25, 2025 01:10:04 PM
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