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2006.12.29
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「ススキノ探偵」で有名な,東直己の作品を読んだ。

○ストーリー
19才の青年・ユビは,折井という男のもとで,”説得屋”をやっている。彼の今回の仕事は,ある企業の女性社長を,1週間札幌から遠ざけていることだった。58才の社長・香奈と出会い,一緒に旅をするうちに,心を開いていくユビだったが,彼女を札幌から引き離す理由は,会社の経営者から引き降ろすためだった。そして敵対する”説得屋”が追いついたとき,2人の関係は・・・

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「ススキノ探偵」「探偵・畝原」「始末屋・榊原」と,ライトからヘヴィまでのハードボイルドシリーズで,一貫して”男の生き様”を描いてきた東直己にしては不思議な味わいの作品だ。一番近いのは,同じように10代の青年を主人公にした「ススキノ、ハーフボイルド」だろうか?

主人公のユビは,つらい過去のおかげでどこか老成したところがある。破天荒な”俺”,純情とも言える榊原よりも落ち着いているし,カッチリと理念のある畝原よりもクールで割り切って暴力的になれる。けれども,どこか年相応に傷付きやすく,もろい面もあり,それが読んでいて痛々しく伝わってくる。

作品は彼の視点で語られ,58才の香奈との淡々とした旅行が続く中,ユビと香奈は,様々な思い出を語り合う。そうした逸話の積み重ねで,ユビと香奈という2人の心の傷が明らかになり,2人がそのようにならざるを得なかった悲しみが描かれる。「スタンレーの犬」のタイトルも,その中で明らかになる

ほとんど大きな事件は起きないのに,心をそっと揺さぶられる,それでもしっかりとハードボイルドな,不思議な作品だ。

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この能力はほんの少しだけ印象的な使われ方をするが,それ以外は背景で語られ,あまり作品の展開には関わってこない。主人公のユビは,あくまでも”説得屋”としての自分の仕事を真面目にこなし,香奈に電話をさせないようになど,細々と気を使う。そうしたリアリティ,そしてもちろん北海道の地方性の強烈なリアリティは,いつもの東直己のハードボイルドだ。

それでも,静かな悲しみに満ちていて,北海道を舞台にしたロードムービーのようで,少しだけ特殊な能力が使われて,という類似性だけではないと思うが,透明な読後感は村上春樹の「羊をめぐる冒険」によく似ていると思った。







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Last updated  2006.12.30 12:01:53
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