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May 15, 2016
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荒野の棺桶 [ アンソニー・ステファン ] 価格:1000円(税込、送料無料)




 かの 『続・荒野の用心棒(1966)』 では、映画が始まるや否や主人公ジャンゴが棺桶をひきずって登場する。そして敵の大軍団に1人立ち向かい、棺桶の中からなんと機関銃を取り出して並み居る悪漢どもにぶっ放す。それら度肝を抜く演出によって、当方はマカロニウエスタンに深くはまり込んでしまった。

 そして、『続・荒野の用心棒』のセルジオ・コルブッチ監督による『ザ・サムライ 荒野の珍道中(1975)』では、マカロニウエスタンのプリンス、ジュリアーノ・ジェンマが棺桶を引きずった。こちらは喜劇だったが。

 『荒野の棺桶』は、棺桶好きのセルジオ・コルブッチの監督作品ではない。
 さて、『荒野の棺桶』では、どんなふうに棺桶に脚光を当てるのか、興味深い。

 この映画、タイトルだけでなく、中身も音楽もじつにマカロニウエスタン臭が強いのだが、どこかおかしい。コーヒーに、ミルクではなく豆乳を入れちゃったみたいに。

 まず、タイトルバックに流れる主題歌で「復讐だけが俺の生きがい」「復讐だけが人生さ」と歌っている。「復讐」は、マカロニウエスタンの定番である。その割には、主人公テキサス・ジョーが何の復讐をしたいのかなかなか明かさない。

 テキサス・ジョーは、ある目的があって、悪漢ルーペ・ロホの一味に加わる。

 ジョーはルーペ一味のひとりを問いつめる。「2年前のオマハの駅馬車強盗だ。女を犯して殺したのは誰だ」という具合に。
 かつてルーペたちが、オマハを襲ったときに、ジョーの妻が殺されたのだった(この時点ではまだそこまでの詳細は明かされていない)。
 この復讐の理由については、どこかで回想シーンが出てくるかなぁと思っていたが、結局何回かセリフで説明されただけだった。

 やっぱり、復讐を盛り上げる(というのも変な言い方だが)ためには、その原因となるできごとをビジュアルで示してほしいものだ。

 例えば『女ガンマン / 皆殺しのメロディ(1971)』ーこれはイギリス製西部劇ーでは、映画の始めのほうで悪者三人組が牧場を襲い、牧場主を殺し、その妻である主人公ハニー・コールダーに暴行をはたらく。
 もちろんこの場面は、映像である。そして、主人公の回想となって何回も見せられる。
 ハニーは、屈辱をはらすために、臥薪嘗胆して銃の腕を磨き、女ガンマンとなって、悪者三人組を探して復讐を果たしていく。通常こういう形で復讐に説得力をもたせると思う。

 テレビの『必殺』シリーズでも、町民などが不良旗本や悪徳商人から、かなりひどいめにあわされる。
 場合によっては、そこまでせんでもいいだろう、と思えるような展開もあるが、不自然なほど許し難い所業を映像で見せて、これは仕事人だちが相手をぶっ殺してもいいと、見ている者に思わせる。

 不自然なまでにする必要はないと思うが、この虐げられた状況が弱いと、復讐への高まりがなくなっちゃうんだよね。

 つぎに、テキサス・ジョーは善玉なんだけど、いったん悪党一味に加わっているわけだ。悪党は、ある牧場を襲撃する計画を立てる。



 それで、ルーペ一味が牧場を襲う前に、ジョーは知らせに走った。
 そして牧場側が迎撃体制を整えているところで、ジョーは悪党一味のアジトに戻ってくる。
 そこを、悪党一味のナンバーツーであるマーダーに見つかってしまう。
 ジョーはなんとか言い逃れるが、マーダーは馬が汗をかいているのを発見する。つまり、急いで遠くまで行ってきたのがわかるのだ。

 当方としては、ここからマカロニウエスタンの定番であるリンチに発展するのではないか、と思っていたら、ここではなかった。悪党一味は、ジョーも含めて牧場を襲撃に出かける。


 で、アジトに帰ってきてから、「出発前にお前はどこにいた?」「馬は汗をかいてたぜ」と尋問され、さらにそのほかの証拠もつきつけられ、そしてマカロニウエスタン名物のリンチに行き着く。

 「疑わしきは罰せず」とはいうが、襲撃の前にジョーに対してきちんと説明を求めていたら、襲撃を失敗することはなかったのではないか。
 ルーペ一味は危機管理意識が弱いといわざるをえない。

 というわけで、『荒野の棺桶』は大まじめでマカロニウエスタン風味が満載の展開なのだが、このほかにもどこかおとぼけな展開が目白押しである。

 そうそう、「棺桶」なんだが、映画の中で棺桶はビジュアルとしては姿を現さない。
 テキサス・ジョーがリンチにあっているときに、ルーペが「パプロ、墓場に行って棺桶が余ってるか見てこい」とドスをきかせる。
 この言葉だけだね、「棺桶」が出てきたのは。

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Last updated  May 15, 2016 10:36:48 PM
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