オバかの耳はロバの耳 

2011/06/07
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こんなので、勉強したかった。 以下、転載します。
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尋常小學國語讀本 ◆

明治37年、教育勅語を基本として、国定修身教科書と共に刊行されたのが、国定国語教科書でした。

修身教科書は、教育勅語の徳目を更に細かく分類して、れぞれに子供達の生活に密着した例話を多数取りあげました。
一方国語教科書は、教育勅語の徳目にはこだわらず、わが国の歴史・文化・伝統と民族精神などを踏まえて、広い、高い、大きな立場から、教養豊かな日本人の育成を目指しました。

この教育勅語、修身教科書、国語教科書の登場で、明治・大正・昭和の教育は充実し、日本人の品格というものの形成に貢献したと言えるでしょう。

今回は、この国語教科書について、振り返ってみたいと思います。

国語教科書も修身教科書と同じく、昭和20年までに、時代の変化に合わせて、4回改定されました。

この期間は大正デモクラシーが発展した時代でした。

この教科書で学んだ日本人の男女は、日中戦争、大東亜戦争の時代に成人し、戦争を戦い、戦争中の社会をしっかり支えました。
そして戦後は、焼け野原の中で懸命に働いて、復興の礎を築きます。
更にその後の高度経済成長において、牽引の役割を果たしました。

そのような日本人を育てた第3期の国語教科書とはどのようなものだったのでしょうか。

小学1年生の教科書は、「ハナ ハト マメ マス」で始まります。
以降、「ミノ カサ カラカサ」、「カラス ガ ヰマス。スズメ ガ ヰマス。」と続きます。
具体的にものの名前を教えることから始まっています。

科学における研究の第一歩は、事物の認識です。
観察し認識して名前をつけることが第一歩です。
教科書は、そのように作られていました。



小学6年生の教科書になると、第1課が「明治天皇御製」で、10の和歌を紹介、第2課は「出雲大社」で、日本の神話を教えた後、第3課では、「チャールス・ダ-ウィン」となって、進化論に触れます。

外国にも目を向けています。第8課で「ヨーロッパの旅」があり、第9課「月光の曲」で、楽聖ベートーベンが有名な月光の曲を作ったときのエピソードから、人類に不偏的な芸術の素晴らしさについて伝えています。

13課では「国旗」について触れています。日の丸を初めとして、各国の国旗の由来をきちんと教えています。

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今日、一国家を形成する国々にして、国旗の制定せざるところなし。国旗は実に国家を代表する標識にして、その徽章色彩には、それぞれ深き意義あり。



更に思えば、白地は、我が国民の純正潔白なる性質を示し、日の丸は、熱烈燃ゆるがごとき愛国の至誠を表すと言うべきか。

アメリカ合衆国の国旗は、赤白合わせて十三条の横筋は、独立当時の十三州を表すもの、藍地中の星章は、常に州の数と一致せしむるを定めとす。(以下略)
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そして最後に次のように結んでいます。
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かくのごとく各国の国旗は、或いはその建国の歴史を暗示し、或いはその国民の理念、信仰を表すものなれば、国民のこれに対する尊敬は、即ち、その国家に対する忠愛の情の発露なり。
故に我らは、自国の国旗を尊重すると共に、諸外国の国旗に対しても、常に敬意を表せざるべからず。
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なかなかの高尚な内容で、文章も格調高いものです。
戦前の子供達は、これを12歳で教わったのです。

ひるがえって現代、去る5月30日、最高裁は国歌斉唱時の規律命令は憲法に反しないと判決しました。
国旗・国歌に関して、我が国は、また教育界は、いかに病理状態にあるかが、よく分かります。

世界各国の話題は、他にも、シェークスピアを通じて外国文学を学ぶ第14条の「リア王物語」、第22課の「トーマス・エジソン」の発明物語などが出てきます。
しっかり、国際的な視野に立った教育がなされていたことがうかがえます。

第18条では「法律」を教えています。何のために法律があるのか、法律はどのように制定されるかまで、平明にしっかり書いています。
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法律とは、国家といふ共同生活を、秩序ありかつ幸福なものにするための規則であるから、いやしくも国民たる者は、必ず之を守らねばならぬ。

法律を制定するには、政府又は貴衆両院の何れかがその案を作成して、議会に提出する。政府から提出された案は、まず議会の一院で討議される。

討議の形式は、普通第一読会、第二読会、第三読会の会議を経る事になっている。(以下略)
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これが国語の教科書なのです。
ですから各ページの欄外には、その時々に覚えるべき新出漢字が明示されていました。
国語の勉強をしながら、法律制定のプロセスや議会制度の仕組みが分かるようになっていました。

国語をきちんと学んでいけば、他の科目も分かるようになる、国語が最も大切だと言うことを、戦前の教科書は実践していたのでした。

小学6年生が最後に教わるのが第27課「我が国民性の長所・短所」です。
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我が国は、世界無比の国体を有し、三千年の光輝ある歴史を展開し来って、今や世界五大国の一に数えられるようになったのは、主として、我が国民にそれだけすぐれた素質があったからである。

君と親とに真心を捧げ尽くして仕える忠孝の美風が、世界に冠たることは、今更いふまでもない。
忠孝は実に、我が国民性の根本をなすもので、之に附随して幾多の良性・美徳が発達した。(後略)
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これも国語教科書なのです。
これらを果たして今の小学6年生は理解していけるでしょうか。

このようにして日本人を育てた国語教科書は、人格形成の徳目涵養のために、どのようなテーマや例話を取りあげていたか、昭和9年から15年までの第4期の教科書も含めて、戦前の教科書として見てみたいと思います。

●日本人の心、魂の源泉
  国旗、国民性の長所・短所
●日本の古典文化
  古事記、万葉集、源氏物語
●家族と愛情
  乃木大将の少年時代、井上馨の母に見る母の力、山内一豊の妻
●研究・発明への挑戦
  柿右衛門(有田焼)、関孝和(和算)、トーマス・エジソン(発明王)
●勉学・努力
  本居宣長と賀茂真淵の交流、リンカーンの苦学
●公益・奉仕
  青の洞門と禅海、稲むらの火、白洲灯台(幕末・下関海峡の灯台建設)
●修行
  お釈迦様の修行と羅刹、鉄眼(宇治万福寺の僧)と一切経の出版
●もののふとしてのあり方
  勝海舟と西郷隆盛の談判、赤穂浪士切腹を命じた将軍の苦悩
●心に残る物語
  雪舟とねずみの絵、ベートーベンの月光の曲

ベストセラーの「国家の品格」を表した数学者の藤原正彦先生は、別著で「祖国とは国語」(新潮文庫)を表し、「国語教育絶対論」を展開します。
「日本再生は国語教育から」、「国語は全ての知的活動の基礎」、「国語は論理思考を育てる」、「国語は情緒を育てる」

今、小学校国語の総時間数は、戦前の三分の一だそうです。
何故そうなったのか、藤原先生は、

1つは国語は情報伝達の道具としてしか考えなくなったこと、
2つは多数の教科の平等主義として、小学校における教科間の重要度は、「一に国語、二に国語、三、四はなくて、五に算数、後は十以下」としています。

教育勅語と修身教科書が日本人の倫理観を培い、国語教育が日本人の品格を作り上げてきたと言えるようです。
戦後レジームの中で、現代の日本社会が抱える問題の解は、歴史の中に沢山あるように思われます。

(資料)日下公人「日本人の覚悟」(祥伝社)
    小池松次「品格ある日本人を育てた小学国語読本」(致知出版社)
    粉川宏「国定教科書」(新潮選書)





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Last updated  2011/06/07 12:45:21 PM
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