オバかの耳はロバの耳 

2013/08/28
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上からの続き 転載記事 
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■5.「やることをやってから遊ぶ」習慣づけ

 小学生に宿題をどう習慣づけるかに関して、お母さんたちの座談会では、次のような発言が出ている。

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水野さん 小さな頃から「やることをやってから遊ぶ」ということを習慣づけしてきました。「宿題をあとまわしにしたら自分が困るよ」と言って。だから帰宅したらすぐに宿題をして、それから着替えて遊びに行くというパターンになっている。

大久保さん うちも宿題をしてから遊ばせるようにしていますね。宿題は最低限のやるべきことなので。

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山下さん うちの子は何度か宿題をさぼって、たまりにたまった分を終わらせるために、夜なかなか寝られないことがあった。それからは、「宿題ってあとまわしにすると眠くなっちゃうよね。だから絶対に先にするんだ」って言っている。失敗をしているから、自分でやるようになった。


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 遊びに行きたい欲求を自分で抑えて、まずは勉強に向かう。その過程で、自制心が養われていく。


■6.部活と勉強の両立

 こうした過程で、福井県の子供たちは時間をムダにせずに勉強をする習慣を身につけていく。前述の東大生たちは、4人とも受験期になっても部活を続けていた。毎日、7限授業が終わったあと、4時過ぎから、6時か7時まで部活をする。それから帰宅し、夕飯を食べ、休憩をとり、ようやく予習や宿題にかかる。

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紺谷さん 私も部活をやっていたし、通学に1時間かかったから、勉強時間は家が近い人よりも絶対少ないと自覚していた。だから、通学時の電車とか休み時間にも勉強をして、ロスをなくそうとしていたな。

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渡辺さん 今、思ったんだけど、小学生のとき、クラスのほとんどがスポーツ少年団に参加していて、放課後は毎日のように練習に行っていたんだよね。

それでもみんな宿題はちゃんとやってきていて、小さな頃から運動をしながら、限られた時間の中で宿題をする習慣があったからこそ、部活と勉強を両立できる力が身についていたのかもしれない。[1,p141]
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 こうしてスポーツ少年団や部活をしながらも、予習や宿題をきちんとやっていることが、学力と体力の両面で日本一になった秘訣だろう。




 このように自制心をつけて東大に入学した学生から見ると、他の東大生の行き当たりばったりが目につく。[1,p139]

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紺谷さん そういえば、提出前になって課題を見せてほしいと言う子がいて驚いた。東大生にもこういう子はいるんだなあって。出された課題は、自分でやらないと意味がないのに。

渡辺さん 午後5時が締め切りのレポートなのに、お昼休みに「今からやらなくちゃ」って言っている子がいた。自分は、課題が出たら先にやってしまうから「明日はレポート提出だから徹夜だ」とか聞くと、なんで1日早くやらないんだろうって思ってしまう。先にやっておけば、生活のペースも崩れなくて楽なのにーって。
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■8.「稚心を去る」

 福井と言えば、幕末の志士・橋本左内の出身地である。福井藩主の松平春嶽(慶永)に側近として登用され、面会した西郷隆盛をして「一世の偉人なり」と言わしめた人物である。

 わずか26歳にして「安政の大獄」で刑死したが、15歳の時に記した『啓発録』は、自らの生き方の戒めを5箇条にまとめたものだ。その第一条が「稚心(ちしん)を去る」である。

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稚心とは、をさな(幼な)心と云ふ事にて、俗にいふわらびしき(子どもっぽい)ことなり
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 たとえば、勉強を放り出して遊びたがったり、むやみにお菓子を欲しがったり、母親に甘えたりすることである。レポートを出さなければならない、と分かっているのに、締め切り間際まで先送りし、挙げ句の果ては友人に写させてくれ、と頼むのも「稚心」である。

「遊びは宿題を終えてから」という習慣づけは、この「稚心を去る」に通じている。


■9.「士気」ある人を育てる

 左内は稚心の項を、こう締めくくっている。

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稚心を除かぬ時は、士気振はぬものにて、いつまでも腰抜士になり候ものにて候、故に余稚心を去るを以て士の道に入る始と存候なり

(稚心を除かない時は、士気が振はないので、いつまでも腰抜武士になってしまう。それゆえに私は「稚心を去る」をもって、武士の道に入る始めと考えている)
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「士気」とは、現代で言えば、世のため人のために尽くすひとかどの人物になろう、という志と言えよう。「稚心」を去って、はじめて「士気」が振ふ。自立した大人として、世のため人のためを志すことができる。

 前号では校門の一礼や清掃・給食前の正座・黙想は、自分を見つめる機会になるとして、1人の生徒の感想を紹介した。

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 校門の前に立って頭を下げると、今までやってきたことがまずかった、しっかりしなくてはいけない、と思う自分に気づきました。[1,p51]
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 一礼や正座黙想で自分の行動を見つめることで、自身の内に潜む「稚心」に気がつく。これらも「稚心を去る」ための手段だったのだ。

 こうして「稚心」を去った生徒が、毎日2時間も勉強すれば、「稚心」を持ったまま10時間も詰め込み勉強をさせられた生徒以上の学力を持てることを福井県の実績は示している。同時に部活を続けることで、日本一の体力も養っている。

 こうした教育を受けて、子供たちが士気を振るい、自分の人生を主体的に歩んでいけるようになれば、その幸福は計り知れない。

 同時に、こういう士気ある国民がどれだけいるかで、国家の栄枯盛衰も決まるだろう。
(文責:伊勢雅臣)





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Last updated  2013/08/29 02:05:54 AM
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