昨日のことである。業務用スーパーでリンゴの品定めをしていた。自動扉が開
き、客が出て行く入れ違いになにやら黒いものが、かさかさと右足のサンダる
に止まった。風に吹かれた落ち葉かと、目を凝らすと、小鳥ではないか。小鳥は左のサンダルに止まりすぐパタパタと羽ばたきながら床と商品台の際を奥へ。飛び上がる元気もないようだ。
気付いた客が小鳥 小鳥と云いながら手を出すが、小鳥は必死で、牛乳やバターなどの冷蔵庫のなかや 商品ケースの隙間と逃げ回りなかなかつかまらない。ようやく捕まえたら、鶯であった。相当弱っていた。
客や店員が「これが鶯か」「へー初めて見た」と珍しそうに見るが誰も手を出さない。しかたがない
捕まえた私が逃がしに持っていくことになった。セーターの中に入れ外に出てあたりを見渡すと、コンクリートの建物ばかりで緑がない。200メートルばかり先に小さな神社の社叢が見えた。そこまで行き懐から鶯を取り出し、ツバキの小枝に止まらせたがすぐ下に降り落ち葉を踏んで奥の方に姿を隠していった。またスーパーへ戻ったのだが。実は数日前に階段で右ひざをくじき、歩行が困難で痛みがぶり返した。
不思議なのはどうして鶯が弱ったとはいえスーパーに飛び込んできたのか。
百舌鳥かカラスに追われコンクリートジャングルに迷いこみ風に吹かれる落ち葉の様に自動扉の開いた瞬間に飛び込み他の人でなく私の足の上に止まったのか。何か運命的なものを感じる。これがロシアなどの童話だったらどうだろう。 ・・・次いで自動扉が開き一陣の風とともに黒猫が入ってきた。小鳥は魔法をかけられた王女様で・・・
それにしても小鳥の名前を知らないこと。さすが雀はなかったがメジロ ホオジロ ヒヨドリなど、詳しい人が聞けば嘆くことであろう。しかし、それだけ自然が街中から無くなっているのかもしれない。昔は色々な小鳥が身近にいた。
今頃はレンジャクが群れをなして渡ってきたがいつ頃からか見えなくなった。
そのことを疑問に思わなくなった人々の感性が不気味である。
昨日は何か心が楽しかった。