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寒いねーと言えば 寒いねーと 私よりゆっくりとした声 その中にあるあったかさで 私の冬が明るくなった また新しい一月 また新しい私の一月 雪の明るさをかき分けて その向こうにある何か その向こうにある何かを また探しに行きたい私になった
2014年01月13日
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少女の頃から ずっと詩人にあこがれていた 詩人というのが何かも知らずに 大人と言われるようになり 色んな紙と色んなペンを集めた すべてはあこがれ.... 紙とペンばかりが増えて 私の体が歳をとる 紙とペンばかりが増えて 私の体が小さくなる ある日思う 詩人にはなれないけれど 詩人のように暮らせばいいと 詩人にはなれないけれど 詩人のような暮らしをしようと 詩人というのが何かも知らずに 詩人というのが何かも知らずに まだ憧れているわたしがいる 詩人というのが何かも知らずに まだ集め続けているわたしがいる 2013/10/17
2013年10月17日
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花が言う 綺麗かしら?と 花は言葉を持たないのに 人は嫌い 人の匂いがする 人は言葉を持っているのに 花が咲き乱れる野原を歩く 気がつくと 私は花になっていた 夢の中の 多弁な色彩 花は言葉を持たないのに。
2013年09月21日
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昨日、お墓参りがおわって 今日は満月じゃないよねって 空を見上げた 完全でない月もかわいくて好きだなーと お墓参りの帰りに 何度も何度も空を見上げた お花は オンシジュームとりんどうと紅い鶏頭 それと ローズと書いてある短いスティックのお香 私は一箇所ヤブ蚊にさされたお土産をもらう 今夜は満月 一人で見るのは肌寒くて寂しい 見上げると丸い月は笑っていて そしてあたしに 「お~い風邪ひくよー」と言った。
2013年09月19日
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今日開けたバースデープレゼントの箱 その中に入っていたものは 一年分の心のカケラ 浜辺に打ち上げられたシーグラスのように どれ一つ同じものがなく 日にかざすと柔らかな色の向こうに想い出がみえた また海に行こうよと言わないけれど 君が聞きたい波音が何処にあるか知っている どんな日差しがすきなのか どんな風に吹かれたいのか どんな花に触れたいのか 君は何も言わないけれど 一つのカケラに宿った記憶が てのひらの中でじんわり溶ける また一年集めよう いろんな色のシーグラス またきれいな箱に入れて 取り出してみる楽しみを わたしにください。
2013年01月27日
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寒くて冷えるといけないから あたためる 会えない冬は 寒くて冷えるといけないから あたためる 会えない冬は 寒くて冷えるといけないから マフラーを巻いて あたためる 会えない冬は 寒くて冷えるといけないから 長い長いマフラーを巻いて いっぱいいっぱいあたためる 早く春に会いたいな。
2013年01月22日
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冬はいつだってこう 私の好きなものをたくさんなくしてしまう ふくらみかけた白いつぼみ みずみずしい肌 おはようという言葉 冷たいオレンジジュース 生野菜のサラダ 冬はいつだってこう 買った食材はすっかり忘れ冷蔵庫の留守番をしてたし 台所ではオリーブオイルもはちみつも寒くて濁り固まるし そして手がかじかむといつも親指がしびれるのと言うと さすってくれる君の手の方が冷たいし 冬はいつだってこう 忘れている事が多くてなんだか探し物ばかりしている お気に入りのカラフルなマフラー 薄手のやわらかなスエードの手袋 暖かくて着古した大きくて楽だったセーター 冬はいつだってこう 車のシートは温まるけれど いつまでも冷たく固いハンドルが悲しい でも外に出かけて あったかいうどんを食べると 雪降りなんかどってことないよーなんて思える あたし、冬はとてもわがままなの そして小春日和も大好き 海辺の外カフェでするお茶なら 冬もいいなぁ~なんて思いながら 縁側で飲むコーヒーに癒されたりもするのです あたしの冬はいつだってこう あたしの冬はいつだってわがまま。
2012年12月10日
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冬があるから 春がくるわけで 眠ってしまうから 目覚める時があるのであって だから できたら 寒い寒いと苦に思わず 温かいスープを美味しいと思いたい それが理想なんだけど まぁね 所詮こたつむりの独り言だわね
2012年12月03日
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歳をとると涙もろくなって困る、と友が言った いやそれは感受性が豊かになったんだよ、と私が言う そして私は叫んだ 感動せずに生きてられっか!と半ばやけに 笑いながらも二人で叫ぶ 感動せずに生きてられっか! 小さな車は 今行ってきたばかりのミュージシャンの歌と ほろほろと崩れたばかりのこころをつんで 暗い道を南へ帰った 泣くことも笑うことも遠慮などしないぞと 意気揚々に声をあげながら 深くなっていく夜を帰った 帰りながら 帰りながらやっぱり思った 帰りながら 帰りながら何度も思った 感動せずに生きてられっか!と。
2012年11月23日
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夕方は寒い お昼のぬくさを すっかり忘れて 私は西の空を見る 十一月十七日 午後五時過ぎ 西から北に 進路を変える みゆきの歌を静かに消して 私は車のライトをパシッとつけた あの山を登れば私の棲む家だ あの寒い家が私のねぐらだ あの遠い家に私はこれから帰る いつもの空のあの場所に沈む夕日が いつもの道を黙って暗くしていった。 2006/11/17
2012年11月17日
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おまえの暖かさを 一晩中抱いて眠る 右腕に寄りかかるその柔い重さにも慣れた おまえのしなやかな体が 伸びたり、縮んだり、丸まったりする うごめく命の側にあるあたしの体温 深い秋がもぅ過ぎるよ 庭の皇帝ダリアも咲き出したし おまえには初めての冬だねと言うと 長いしっぽをパタパタさせて もぅ触らないでとあくび・・・ そのあくびがうつったから あたしもそろそろ猫になろうかなと 眠そうなお前にキスをした おやすみ。
2012年11月15日
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たしかめあってたしかめる不確かなもの 手さぐりで髭を剃る手をながめおり 裸眼ゆえ出来ることあり言えることあり 強がらず 泣いていい日の あたし待つ やわらかい先端ありや 指舐める 携帯をもつ手そのまま夢戸口 ひとりだと出てくる涙 ひとみしり 言葉にしようとするから無口になる秋 ニッキ飴 きりりと噛んで会いに行く 胸のアンプで声を聞く 小さな声でいいからね
2012年11月12日
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決まって君の食べるのは 大きな丼の肉うどん それはナンのケモノなの?と聞くと いつもだまって一切れくれる 甘いんだねーと言うあたし おうどんにケモノを入れるのは どうかと思いながら あたしといえば 小さな丼に竹輪の天ぷらを入れている 大好きなおうどんなのに すするのが苦手で食べるのが遅いあたし 君はだまって見ているけれど ゆっくりお食べよという目を知っているんよ だから 君と食べるおうどんが好き 君とたべるあつあつのおうどんが好き 甘く煮付けたケモノでも 君からの一切れに受ける軽いショックも それが恒例の景色であっても やっぱり君と食べるおうどんが美味しくて 冬も春も夏も秋も いそいそとうどん屋の暖簾をくぐっている私です。
2012年11月11日
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全部のたまごが割れずにゆだり ツルンツルンときれいにむけた ぷるぷるの美味しそうな白身 きれいな黄色のまる それだけでちょっとしあわせ 小さいけれどとても良いことがあったぐらい すごくしあわせ 新鮮すぎる卵だとこうはいかないんだよねって こころで思う そのことを人にたとえると ちょっとうれしくなって 気がつくと ぷるぷるのゆで卵を二個も食べていたんだ
2012年11月10日
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冬うまれ 冬から始まる一年だねと 冬・春・夏・秋 ゆるり言う君 月あかく 一つの影のうずくまり 叶わぬ願いの かぼそきことよ 三日月が 細いと言って君は泣く 何かをせがみ 何かをあきらめ したたりて落ちる蜜ある三日月を 君にねがいし舐めてみたいと 甘いねとすくった指を舐めてみる こうしていたい 君と見る月 匂うだけでいい熟林檎 車中の人は蜜に酔うなり まどろみの時に遠く声を聞く 海に漂う一粒の砂 多弁な心落ち着かす 黄色いペンの 重みが好き 食パンに垂らすはちみつミニチューブ 甘くてちょうどいいと言う冬 あなたへの 思いのような石榴あり ふれるとこぼれる涙にも似て 体温の 記憶を連れて 眠ります 夢こそ長く 君のぬくもり たからもの 無限大の箱にある 生まれてきたから 君に会えたよ
2012年11月09日
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毎年やってくる十一月に沈んでいる わかっていたのに 悲しい色の想い出ばかりを たどってしまう私になること わかっているのに 相も変わらず あの寒い別れの日に 戻ってしまうわたしになること 貴女が召されて三年の月日 冬が始まった今日 きれいに咲く小菊を見ました もうすぐ命日ですね 思いっきり沈んでから いっきに浮上するわたし だから 十一月はつらいんだよ~と 大声でさけぶ夢をみて そして 明日の朝はカーテンを開けるから 夜空を見上げたあとに 君と笑いころげる夢を見て そして 明日の朝はきっとカーテンを開けるから
2012年11月07日
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騒ぐ小鳥たちの目的をたどったら 庭のはしにある大きなムクの木 そうか もう11月なんだもの ムクの実が熟れてくる頃なんだ 熟れると黒褐色の小さな実 ちょっとすっぱくて甘い実 キャラメルのような匂いのする実 手を伸ばし届いた枝を引き寄せて 熟れた実に触れると ポロリと手の中に落ちてきた 幼い頃に育った家にも 大きなムクの木があったな そしてムクの実を食べていたのは 11月の小さなわたしなんだ このてのひらの中が 甘い匂いにかわっていくのを 知っていたのは 確かに11月のわたしなんだ 小鳥たちに教えてもらったムクの実 今日を忘れていたわたしは 甘い記憶を持つこのてのひらをそっとみつめていた
2012年11月05日
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雨音も 味方にしたい強さ持つ 笑えることが続くといいな 明日があるさと言いながら 死にたいと言う明暗に 丸くうなずく君といる秋 焼けるよな冷たい指の感触は 何かにも似て 直列に這う 石榴裂き 「愛のたまご」と唱えつつ こぼれた一粒 我は拾いし 泣くものかと 百万回思うことに まだ従えてる 二回目の冬 小春日にひとつぬくもる車椅子 主の毛布は私を見つめ 命の有無を探すなと言う 三日月の 始まり終わり往復す 二点の先の紅き痛みよ 指先の いきたいところ いってこい 秋になったね 寒くなったね
2012年11月02日
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あずき 小さな豆と書いてあずきと呼ぶ朱い小さな豆さん 「今年はようけとれたけん何でもせいよ」と じいちゃんが言うけん あたしは小豆をたいて こしあんを作ってみたんよ 一度さっと茹でたらアク抜きにざっと洗うて もう一度ゆっくり茹でなおしてから やわらかくほっくりとなったらちょっと蒸らすんよ それから少しさめたらな 一個ずつ指先でやさしーに潰していくんよ あたしこの時が一番好きなんよな 朱い豆さんの皮から白っぽい中身が出てくるんよ その時の指先のねっとりさが おいしいこしあんになるんじゃって あたしわかるんやもん 出来上がったぼた餅を まずは味見せななーといって じいちゃんと半分こして食べてみた それからばあちゃんにお供えをしたんよ ばあちゃん好みでないと思うけんど まぁ食べてみてと言って お供えをしたんよ
2012年11月01日
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月光 月があかるすぎて 淡く空の色が見えていた もう夜なのに 月があかるすぎて ちっとも星がみえなかった 白い雲少し 月があかるすぎるから 夜がこないんだよって お前を見上げて笑った 月があかるすぎるから 寝そびれてしまったと またお前のせいにして 聞いている月の歌 明るさに晒されたススキがまた揺れる 明るさにほだされた虫の音もまだ聞こえる いつもここにいるよと笑ったら グラスの中にぽとりと落ちた月光 それを ごくりと飲んだわたし。
2012年10月29日
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日記帳 どんなみじかい文章でも みんなわたしから生まれた言葉 君に送る 君へ向ける わたしの言葉 スキとキライをくりかえし 明日をオモイデに変えていくんだ わたしから生まれた言葉で 白いページがどんどんうまる 君と私でページがうまる 1992年作
2012年10月27日
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あなたに会えない間に 固くて小さな青柚子は 黄色く色づきはじめていたのに あたしのとまったまんまの時計 あたしのとまったまんまの時計は そうとも知らずに眠っていた あなたに会えてから 見る色彩やかたち あなたに会えてから 香る風や冷たい水 あなたに会えてから 聞く声や読む便り あなたに会えてから あたしの動きだした時計 ドキドキと音のする あたしの動きだした新しい時計
2012年10月26日
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再生 神経を下腹部に集中してみる 押すとはなひらくツボミの中心から 一番柔らかでやさしいあたしの部分まで 私の呼吸の一部をゆっくりゆっくり細く長く添わせてみると 生暖かい迷路の入り口に滑り込んでいた 迷路の奥は記憶と想像の果てだった 「重いもの 暗いいろ 怖いおと 言えない事のすべてを抱えたから 逃げたい理由はもうないんだよ」と 切り捨てられた 生あたたかいもの の遺言を読んだ。 ゆっくりゆっくり息をしながら増殖する迷路の果ては 一面に花が咲く草原だ あたしの大好きな花が咲く野原だ そこには 「なくしたからはじまったんだ」 と かるく再生した私がすっと立っている。 2011/4/29 子宮摘出手術後、入院中にて
2012年10月26日
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季節が深まり この秋一番の寒さだったと テレビはいかにも前進したように笑う なのにあたしは夏を想う あの心地良い肌触りの夏が きゅうになつかしくなる 吐く息の白さも 夏のことがもう想い出になったねと言って 風にとけていったし 振り返ってみたら うまく発酵した夏の匂いが じゃぁまたねって言ったような気がした 季節が変わって またやってくる次の季節 昔の事なんていっぱい忘れてしまうけど 想い出に変わると色や匂いや声は あたしの豊かさになるんだ 昔の事なんか次々忘れてしまうけど 想い出に変わるとあったかな肌や言葉は あたしの宝物になるんだ だから寒くなってももぅめげない。
2012年10月24日
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萩の花 わたしを花に例えるとしたら何かしらと 花の名前をあまり知らないあの人に尋ねた けれど 返ってきたのは いつもの他愛ない世間話・・ いいの、いいの いつものわたしの独り言だから あの人を花に例えるならなんだろう 初めて覚えた花の名前かもしれない 幼い頃のわたしが見ていたあの懐かしい花かもしれない 何日か過ぎて思いがけず返事をもらう それは萩の花だと しなだれた細長い枝に咲き 風のままに揺れる赤紫の小さな花だと わたし嬉しかった 生まれ変われるとしたら萩の花になって あなたの中に棲みたいと思った。
2012年10月21日
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庭の柚子がきいろう熟れて ぎゅっとしぼったら 台所じゅうが 柚子の香りにつつまれるんよ あーこれは、ばあちゃんの匂いじゃって 今年も思ったんよ 毎年、毎年柚子をしぼっていたばあちゃん 毎年、毎年この香りに豊かさを感じて 柚子酢のきいたばあちゃんのお寿司を食べたんよな ばあちゃんの好きな柚子の季節がまたきたでよ ばあちゃんの年輪みたいなこの手が あたしは好きやったんよ 言うたことがなかったけんど いつもアクにまみれたこの手が好きやったんよ
2012年10月19日
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昨日 元気だった体が 今日、壊れた。 昨日 飛び跳ねていた体が 今日、崩れた。 昨日 輝いていた瞳が 今日、闇になった。 明日への祈りが 明日へと続く 明日への想いが 祈りでうまる。 2006/11/4
2012年10月14日
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ゆっくりと、でも確実に進む季節 ぼんやり過ごした一日も 右往左往した一日も それは同じ速度なのに ふと気づけば カレンダーはまだ九月 彼岸花も見たし 金木犀も匂ったし 栗もたくさん拾ったのに・・・ 数字にうとい私は 日付も時間も捕らえられず 今日見たコスモスの色や場所が また刻まれてしまった 私は季節を追いかける そうやって進む月日なら それも愛しい日々だと思う。
2012年10月13日
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二十七回の春が過ぎ 二十七回の熱い夏。 二十七回の秋が終わると 二十八回目の冬が来る。 私は野山の奥にひっそりと咲く小さなスミレが 人知れず二十七回花開く間に 私は熱い砂の上に流れ着いた貝殻を 二十七回なぐさめぬいたさざ波の間に 私は黄金色の稲穂がこの田で二十七回収穫でき そしてくり返す私達のくらしの間に そしてなんの疑いもなくやっぱり冬はやって来て 二十七回降り続ける雪の間に (君は何をしてきたかなんて聞かないで) (君は何をしているのなんて問わないで) 私はこれからだって続く繰り返しの中で ただ何回となくかぞえていたい ただ何回となく流れていたい。 1990年/晩秋作
2012年10月12日
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穏やかな晴れ間に きらきらと笑う秋桜 ねぇ 知ってる? 秋桜の花って 好きな人のにおいがするんだ 秋桜の海を風が吹きぬけると なつかしい気持ちになる だから 秋桜の海を歩いて渡り 好きな人に会いに行く そんな日を待って迎えた秋 わたしの思う秋桜日和。
2012年10月08日
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好奇心 若いのに変ねって言われる私の好奇心 けれど曲げない これは私の血筋なのか それとも 勝手に作り出した私だけの血の流れなのか けれど大好き 山に嫁に行ってと母は嘆くが 私はちっとも懲りはせず それどころか 実のなる木々を毎年せっせと植えている たわわに熟れる実を想像すると 夢が一つ叶った気がする 近代的な家もいいが それよりも どっしりとした大きな木を見ると つい羨ましく見とれてしまう 私の庭にも一本欲しい そんな私の好奇心 まだまだあるがまだまだ止まらず 時々そんなことで心いっぱいにしたりして あっもうすぐ初場所だ、なんて またまた若いのに変ねって言われそうだ けれど曲げない けれど大好き。 徳島現代詩協会・’91年刊詩集より
2012年10月07日
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自由 せっかくここに生まれてきたのだから 何を考え何想うのかは とても自由なんだと 畑や庭をながめておもう 雑草は強くてやわらかい 私も強くてやわらかい せっかく人に生まれてきたんだから どこで何をしたって とても自由なんだと タマの頭をなでながらおもう 君は自由な外猫だ 私も自由なメス猫になる。
2012年10月06日
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ピンク 心の壁をとっぱらいたい時は 薄化粧にほんのりとピンクの頬紅 目元にも薄く・・・ そして一番気楽なジーパンでいく 今日は誰と出逢うかなと お酒も飲めないのに 馴染みの華鳳という居酒屋にむかう 美人のママと常連の客 誰にも話しかけないでほしい時は 黒い服に濃い口紅 ドクロの鋲がいっぱいついた重い皮のバックで ヒールの高い靴をはき 聞こえる声に聞こえないふりをする ほんとうはピンクが好きなのに ほんとうの私でいると 行けない場所だってあるんだ ほんとうはピンクの爪でいたいのに 今日は違うなって思い 濃い色の爪でいく時もあるんだ 来年早々の同窓会 悩みながら出席の返事を出した私 亡くした親友の事を聞かれたら きっと泣いてしまうだろう あの思春期のガラスで出来たトゲトゲの心が また復活しそうで怖いのにな ピンクの頬も ピンクの爪も封印して 黒い壁の卵に閉じこもっていたい ほんとうはピンクが好きなのにな
2012年10月05日
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罪の花 入浴しようといったん外に出ると 一瞬つつまれる花の香り 私だけの時間に はだかになった心の隙間に そっと吸い込ませたい そんな香りだ はずかしそうにうつむいた蕾は 今日と決めた蒸し暑い夜 遠慮しがちに少し顔をもたげて咲く それを私はひとりずつ 顔を確かめ香りをもらう 何かを決断し自信を持って 香りを放つ大きな花 君と出会った南の島では 一年中咲いて咲いて 夜をまどわせていたのに 今年の夏はまだ終わらないと 今夜もこころの隙間で 咲いて咲いて わたしをまどわす 2000/1 詩誌そばえ2・16より 改訂版 花名:エンジェルストランペット
2012年10月04日
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守るもの 人間は退化してるんじゃないか そう思うと悲しくなって チクチクチクチク心が痛む せっかく産まれて生きてきたのに 蒲公英の若葉をサラダで食べる そんな小さな楽しみを 知らない人は知らないで死ぬ せっかく産まれて生きてきたのに 高くなった秋の空に手を伸ばす 風ととんぼと君とあたし グラウンドの芝生に座りこみ 好きなことを話しあった あたしは退化しないよ せっかく産まれて生きてきたのにね そうも言って 君と好きなことをして過ごした 人は悲しいねと言いながら 守るものを確かめあい でも人はあったかいよと言いながら 守るものをなお確かめ合った チクチクが高い空にとけていくようだった。
2012年10月03日
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眠るおまえにキスをする 夜、そわそわしていた仔猫が ベッドに入ったあたしを追い 脇腹にそっともたれて眠りはじめた あたたかいよと お互いが感じ なでると 一人じゃないねと思い 眠ることが うんとやさしくなった おまえの三ヶ月前にうまれた命と あたしの半世紀近く生きた命 百年後には何もないけど 何もないけど 今は一緒だね おまえのすべるように柔らかな体毛に あたしの細長い指が埋まる いつまでも続くしあわせを 今夜は信じようと 眠るおまえにキスをする。
2012年10月02日
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津軽の野に 朝、大好きな酔芙蓉を手折り 琉球ガラスの青いグラスに入れて テーブルの上に置いた 未使用の年賀葉書の使われなかった空白 久々に持つ色鉛筆に仔猫がじゃれる 酔芙蓉の花よ あたしの描いたおまえよ ちょっと遠いが旅に出ておいで 酔芙蓉の花よ あたしのかわりに色付いて 柵でおおわれた一本道を 誰にも邪魔をされずに まっすぐ進んで行っておいで 自宅の郵便受けに 「郵便物があります」というメモを貼る 人里離れた山の上では そうそう町には出られないから 急ぎではないが 確実に配達されるという 信頼の中の約束に思いを託す 「あさこはうす」という津軽の野に 酔芙蓉が咲きますようにと願いながら。
2012年10月01日
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九月の庭 あたしの庭と名付けた場所は 今、九月の色と匂い 晴れ続きの朝は 眩しすぎて歩けないけれど 今朝は曇り 白と黄色の花が微笑むから なかなかカメラが離せないでいた 昨日は風に乗ってきたいい香りに あっ金木犀!と心の中で言ったのに 今はもう雨。 あたしの庭と名付けた場所に 色んな種を捨てずに埋めた 懐かしい味の小さくて甘い柿や 生口島で見付けた小さなレモン それはまだ幼い苗木だったり 芽生えたばかりの緑だったり あたしの命も小さな緑の命も 同じくらい大事なのにな あたしの命も 森の水も雨も空気も 同じくらい大事なのになと そう思いながら 九月の雨の庭を歩く 今はもぅすっかり雨。
2012年09月29日
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その花が咲くと台風がやって来る 南の湿った風を感じて 一斉に蕾を色づかせるのか まちがいなくその花が満開になると 台風がやって来る それはもう毎年のこと 二百十日だ二百二十日だとかいう前に この花を見ていると 私は確実な予言者になったつもりで 来るよ来るよ、来るな来るな、と 家族相手にふいてまわるのだ 昨年は台風前日に全部刈り取り ひと抱えずつ近所に配ってまわった 台風で散ってしまうのでどうぞと言って しかし今年は刈らない そうやって雨を感じたいなら そうやって風を感じたいなら そうやって迎えてやればいいのだ 夏の名残りの黄色い花びらを 風雨にさらし透き通らせればいいのだ そんなふうに空にゆだねたい花の権利を 明日は認めてやろうと思う。 花名・ヤナギバヒマワリ/1999
2012年09月25日
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酔芙蓉 昨日、ふくらませた蕾です 日の出が開花の合図です 今朝、白さに気づいてほしいと咲きました やがて少しずつ白に赤が溶け やがて誰かの体温に暖まるように やがてしあわせの波に溺れるために 明日の朝、うずくまる蕾です 濃いピンクの色で息絶えます 今日、一日だけの命というのに泣きもしないで どんな時より緩やかに色つき どんな花より甘い蜜月を知りながら どんな色に変わろうと素直な私でいたいと
2012年09月22日
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今日、風の色がちがうよ 季節の狭間も通り過ぎたんだね 庭の芙蓉が咲き始めたし 紫のダリアも咲きました 今日、庭のふきだまりは まるで桜紅葉の品評会でした 赤や黄色に色づいた葉が ぱらりと落ちていくのです 今日もずっと雲ったまま 乾ききらないお気に入りの毛布 明日はほんとに晴れるかな 月を迎えに行けたらいいな
2012年09月19日
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赤紫のダリアが 今日初めてひとつ咲きましたよ 君に見せたくて 君にこの色を見せたくて植えていました このところ雨ばかりですが そちらの空はどうですか うすい霧の中で だまって咲いていたダリアです 君と一緒に 君と一緒に見ればもっと素敵だろうなと ふと思ってしまうあたしです そんなふうな毎日です もっと咲いたら きれいな一対の花束に仕上げて 君の場所に 君のいるあの場所に行こうと思います 赤紫のダリアを持って 貴女に似合うこの花を持って
2012年09月18日
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新鮮なバジルが好き 前は嫌いだったのに・・・ セロリには目がない とても苦手だったのに・・・ トマトは大好き それは小さな頃からずっと・・・ そんな話に花をさかせながら 君と野菜サンドを食べる 海を見ながら 空を見ながら 波の上には一羽のカモメ あたしの食の物語と君の食の物語が 重なりあいながら混ざるように 波打ち際で転げる小さな石と割れた貝殻 ねぇーまだポットのコーヒーが温かいよー はい どうぞ。
2012年09月17日
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まだ夢の中に半分いる時に 君の声を聞くのが好き じゃあねって電話を閉じてから その声をつれて あたし夢の中に行きます 夢だったのかな 夢じゃなかったのかな 朝は君の声で目覚めたいから いつがきても あたし眠っているんです まだ夢の中に半分いる私に 君の声がおはようと言う 夢だったのかな 夢じゃなかったのかな・・・
2012年09月14日
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夕立 今日も少しだけど雨が降り 山の緑もほっとしたのか ちょっと涼しい顔になった 相変わらずあたしは 濃い灰色の雲と雷が怖くて 少しドキドキしながら仔猫を抱いていた 今日の夕立は秋の匂いをはらみ 夏と秋の狭間に降りそそぎながら 深い秋の予告編を持って あたしの家の戸を叩いて帰ったようだ。
2012年09月13日
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ジャムの詩 夏中、熟れたブルーベリーを 毎日摘み その摘んだブルーベリーを 冷凍保存していった それをまとめてジャムにした私。 濃くて甘いつぶつぶの紫のジャムは 食べると夏のある日に戻るジャムだった 積乱雲と雷鳴と灰色の雲のジャム 潮風と跳ねるうおと漁港のジャム 打ち上げ花火の色と火薬の匂いのジャム 君の声と汗のにじんだシャツのジャム 仔猫が美味そうに水を飲む音のジャム 森から聞こえるひぐらしの波のジャム 熱帯夜と金曜のシュプレヒコールのジャム ジャムが尽きても尽きることない私のジャムの詩。
2012年09月12日
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涼しくなった夜風に 虫の音色がとけてとけてながれてながれて ここに届く 涼しくなった夜風に あたしの声をあずけてみようか 大事なあの人の夢の中 ながれてながれて たどりつけよ 一人でいると夜風は 急に秋らしくそして他人行儀にすまして 一人でいると夜風は ノースリーブの腕をつめたくしていった 大事なあの人の夢の中 今から行くねと 伝えておくれよ 大事なあの人の夢の中 夜風にとけて逢いにいくから
2012年09月11日
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今は季節の峠路 私はなだらかな坂道をゆっくりと下りはじめた 振り返ると夏の後ろ姿 振り返ると少し高くなった空 振り返るとむせ返るようなあの気持ちも 振り返ると乾いた風にやさしく諭されちりちり溶けた もぅ夏も終わりだなー さあ もう一度 秋と冬と春に逢う旅に出てみようか
2012年09月10日
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きょう、しあわせなのは 散歩のとちゅうで猫に出逢い触れたから やたら多弁な猫で そのあと、ずっとニャアとなきながら 人のあいだをすりぬけて云った きょう、しあわせなのは 散歩のかえりに犬に出逢い触れたから とても大きいのに おとなしく座っていた茶の瞳をもつ子 僕は怖くないよと言っていた きょう、しあわせなのは 約束もしてなかったのに君に会えたこと 打ち上げ花火を まだ温かいアスファルトの歩道に座り さっきまで一緒に見上げていた 今日のしあわせを思い出しながら 愛しいきょうにピリオドをうつ あしたもしあわせだと言えるようにと。
2012年08月11日
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君は小さな島に一人住む人 私も小さな島に一人住む人 意味のある偶然を 重ねる度に 二人の島は一つになっていく 「大きな地殻変動!」 繰り返す季節の途中で 繰り返す月の満ち欠けの中で 二つの島はゆるりと一つの塊になった 私は君に属して 君は私に属す 無人島にひとつがいの息吹 その無人島を「永遠」と呼ぼう。
2012年08月10日
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