茨城県民の日に見つけた “
小さなおせっかい ”
の力とは?
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月 13
日、茨城県民の日。
その日は東京での打ち合わせがあり、仕事が終わって
夕時の電車に揺られて帰路につきました。地元の駅に着いたのは、
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時半を少し過ぎた頃。改札を出た瞬間、ひとりのご婦人が券売機の前で困った表情を浮かべているのが目に入りました。推定 70
代半ば。きっと日常の足として電車を使われているのだろうと察しがつきました。
その方は PASMO
のチャージをしようとしていましたが、投入したお金に対して「領収書」のボタンを押し忘れてしまっていた様子。券売機の前でしばし立ち尽くし、どうしたものかと小さくつぶやいていました。
私は迷わず声をかけました。
「駅員さんにお話しすれば、手書きで領収書を出してくれますよ。」
すると、ご婦人の表情がふっと明るくなり、安心したように深く頭を下げられました。すぐに改札口の職員さんに状況を説明し、無事に領収書を発行していただくことができました。
ほんの数分のこと。
しかし、この “
ほんの数分 ”
が、その方にとっては不安のひと時であり、勇気の必要な場面だったのかもしれません。
人は、困っている時ほど声が出ない。
駅という慣れない場所ではなおさらです。
けれど、自分が少し動くだけで、誰かの不安をスッと取り除くことができる。
それは、伎芸『ぎげい』型おもてなし商売道の核心でもあります。
伎芸とは「技を超えた芸」、
つまり “
相手の心の温度に気づき、そっと寄り添う力 ”
です。
商売の場だけで発揮するものではなく、
駅前でも、街角でも、レジ前でも、私たちの生活そのものが舞台です。
今回の出来事は、おせっかいといえば、おせっかいかもしれません。
しかし私にとっては、日々の稽古の延長線上にある「自然な動き」でした。
困っている人に気づいたら、声をかける。
迷っている人がいたら、
背中をちょっと押してあげる。
その “
ちょっと ”
の積み重ねが、
地域を明るくし、人の心を軽くします。
伎芸『ぎげい』型おもてなし商売道は、特別な技ではありません。
暮らしの中で、誰かを想い、手を差し伸べる小さな行いの連続です。
茨城県民の日に、ささやかな温かさを感じた夜。
それは、私にとっても心を整える大切な瞬間でした。
