October 19, 2007
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カテゴリ: クラシック音楽
札響の定期演奏会を第1回から全部聴いている知人がいる。そういえば最近見かけないが、まだ生きているだろうか?

わたしが初めて札響定期を聴いたのは38年前。定期演奏会で言うと100回台だったと思う。そのころは中学生だったが、その年に22歳、つまり大学新卒だった人は今年定年になる。オーケストラは学歴は関係なく、高校中退の人もいたが、約半年ぶりに札響定期に出かけてみて、38年前の楽員がとうとうひとりもいなくなっているのに気づいた。

札響の独特のトーンを築きあげたのは初代指揮者の荒谷正雄と二代目のペーター・シュバルツだった。このトーンを愛した人は武満徹など少なくないが、シュバルツが去ってからも30年以上の歳月がたち、この時代を知る楽員もほんの一握りになってしまった。いわゆる「札響トーン」は部分的には健在だが、すっかり変質してしまった・・・というのが約半年ぶりに札響を聴いての感想だ。

一週間前にサントリーホールでベルリン・シュターツカペレを聴いたばかりの耳でキタラホールで札響を聴く。まず驚いたのはサントリーホールと比べての音響のよさであり、日本のオーケストラの中では抜群にきれいな音だった札響のトーンの変化だった。

オーケストラは指揮者次第で音が変わる。しかし、ネヴィル・マリナーは老練な指揮者らしく無理なく鳴らしていたと思うので、これはやはり札響の音が変わった~それも凡庸な日本のオーケストラのようにと思わざるをえない。

まあたった一回か二回の印象で即断するのは控え、もう少し聴いてから判断しようと思う。

曲目はベートーヴェンのバイオリン協奏曲とメンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」。

独奏のアラベラ・美保・シュタインバッハーは今年26歳とは思えないおとなびた風貌そのままの、堂々とした風格のある演奏で大器の器を感じる。アンネ・ゾフィー・ムターに支援されているそうで、なるほどと思う。ムターもまた、どこかの国の美少女バイオリニストなどとは違って他の誰にもないオリジナルな音楽を創造している。この、そこらの「美女」が束になってもかなわない美人バイオリニストは、決してその容姿容貌に負けていない。

アンコールで演奏されたイザイの無伴奏ソナタ(「怒りの日」をテーマにした曲)の鮮烈な演奏、多彩な表現力には圧倒された。



天は二物を与えずというが、ウソだ。天は二物も三物も与える。

ネヴィル・マリナーは、一度実演で聴いておきたい指揮者のひとりだった。その願いはかなったが、熟達で老練だという以外、どうしてもマリナーの指揮でこれを聴きたい、というものがなかったのも事実で、聴いたあとも同じ印象だけが残った。

たぶん、この人は大編成のエキサイティングな曲より、室内楽のような音楽に向くのだろうと思う。

札響定期は2日あるので、2日目は、この美人バイオリニストの美貌そのものを「鑑賞」することと、ファサード席でマリナーの指揮を「観察」することにした。






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最終更新日  October 20, 2007 01:34:06 PM
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