August 31, 2010
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カテゴリ: 映画
3週に渡って上映されている蠍座の企画「昭和の名男優・喜劇な人びと」に選ばれた6作のうちの1作。東宝の「駅前」シリーズ24作のうちの16作目で、16作の脚本を書いた長瀬喜伴の最後の作品。佐伯幸三監督ともこれが最後のコンビになった。1966年の作。

大学を出たばかりの若者(フランキー堺)が老舗旅館の番頭見習いとして就職する。世慣れていないマジメな若者が、ボンボンで女好きで遊び人の支配人、やきもちやきのおかみ、実直だが頑固な番頭の3人に翻弄されながらも成長していくというお話。

喜劇色が強いのは前半。登場人物それぞれの類型が定着するまでがおもしろい。やはり、昭和の時代にはこういう人がいたとか、こういう場合にはこういう対応をしたという、ある種の懐かしさも思い出させる。

一方、後半はよくある人情話になってしまう。

フランキー堺以外の出演者を列挙すると、森繁久彌、伴淳三郎、淡島千景、大空真弓、池内淳子、中村メイコ、松山英太郎、北あけみ、赤木春恵、宮地晴子、三木のり平、水上竜子など。ほかに漫才のリーガル秀才・天才が少しだけ出ていて懐かしい。

感心したのは、森繁久彌の演技。あまりに若いので、最初は誰だかわからなかったほどだが、女好きの支配人役をイヤミなく演じている。ほんとうにこういう人がいそうなリアリティがあって、さすがの大物俳優という気がする。大空真弓や池内淳子、喫茶店のママ役の宮地晴子も、どこか清楚でいまの女性にはない気品がある。

水上竜子は初めて見た気がする。この作品ではアメリカ人のダンサー役で登場するが、たしかに日本人離れした美人。映画だけでなく、ウルトラセブンなどテレビドラマでも活躍した人らしい。だから何度も観たことがあるはずだし、これだけの美人ならもっと話題になってもよかったはずだが、当時の日本人には現実離れした美人だったのか、その後の消息を聞かないのが不思議だ。

森繁久彌は、この映画のような役柄を基本に、哀愁をも漂わせる芸風を身につけていき、フェリーニやミハルコフのような監督と出会い作品に恵まれていたら、日本のマルチェロ・マストロヤンニといわれるような存在になったと思う。

よくある人情話で終わってしまうが、それが悪いわけではない。この程度の人情さえ、今の日本では失われてしまっているから、この映画は作られた当時よりも存在意義と価値を増している。






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最終更新日  September 7, 2010 06:50:56 AM
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