November 21, 2010
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カテゴリ: クラシック音楽
3年ぶり3度目という、札幌在住の若手フルート奏者のリサイタル。「STEP」というタイトルがつけられ、舞曲というか、踊りにちなんだ曲が集められていた。

数年前、あるオーケストラのコンサートで、光っている演奏者を二人見つけた。ひとりはトランペットの桜井匡という人で、もうひとりがこの人。それ以来、この人のソロを聴いてみたいと思っていたが、今回やっとそれがかなった。

地元の大学を出たあとフランスで勉強した人らしく、日本では少ないフランス流の奏法というか音楽を感じさせる。音色が明るく華やかで、作り出す音楽もどこか楽天的。しかし軽妙さに流れてしまうことはなく、華美にはならない。このバランスのよさは滅多にお目にかかれない質のもので、身近なところになかなかすごい音楽家がいたものだと、ハチャトゥリアン「ワルツ」、クライスラー「美しいロスマリン」といった開始のナンバーを聴きながら思った。

語りというよりは「しゃべり」を入れながらの進行で、そのしゃべりがまたいい。堅すぎず、柔らかすぎず、人柄のよさがよく伝わってくる。

音楽家と人柄というか人間性の関係について考えることがある。「あまりいい演奏をしない」と思っていた演奏家の家に行ってみたら、豪邸なのに家の中は雑然としていたり、不要なものに囲まれていたりということがあった。品のない演奏をする人だと思っていたら、高級車のコレクターだったり、射撃が趣味だったりした。「いやらしい演奏をする」と感じた演奏家は収賄で逮捕されたこともあった。

一方、「いい演奏をする」と感じる演奏家の家に行ってみると、ほぼ例外なく質素で余計な「モノ」がなかった。趣味も点数や勝敗を競うスポーツではなく登山のようなことだったりした。

きっとこの人の部屋はすべてがきちんと整理整頓されていて、狭い部屋でも空間が広く感じるようにアレンジされているような気がする。趣味のよい小物が趣味よく置かれているのではないか、そんな風に感じる演奏だったのである。

フランス風に軽妙なだけではないシリアスさを感じさせたのが、休憩後に演奏されたカルク=エーレルトの無伴奏曲「シャコンヌ」。一方、もう少しスクエアに演奏した方が効果的に思えたのが前半最後のオネゲル「牝山羊の踊り」。前半はほかにアイルランドの舞曲二曲とピアソラの作品。クラシックの曲ばかりではなくこうした音楽にも柔軟かつ完璧な演奏でサポートしていたのが武藤みさというピアニスト。初めて聴いたが、この人も日本人離れした、細部まで血が通っているのに神経質にならない上質な音楽を作る。まだ30代はじめと思われるが、やはり身近なところにすごい音楽家がいたものだと驚いた。

ピッコロ・ソロのダマレ「白つぐみ」に続いてのドップラー「華麗なるワルツ」で登場したゲスト、フルーティストの安保香苗とのデュオは、技巧の見せ場という意味ではこの日のハイライト。最後の、やはりフルート・デュオのための「3つのダンス」(ショッカー)では、ジャズ風のフレーズが乱舞する、いかにもコンサートのトリにふさわしい楽しくも華やかで気のきいた曲。ノリのいい洒落た味わいの演奏が心地よかった。



こうしたラッキーがあるからコンサート通いはやめられない。ナマの音楽はいいと久しぶりに現実を忘れることができた。

200強のホールはほぼ満員。ルーテルホールはピアノが響きすぎる難しいホールだが、さほどピアノの音量を落とすことなく良いバランスで鳴っていたのにも感心。

このフルーティストはブログを持っているので、チェックして必ず聴くようにすることにした。








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最終更新日  November 28, 2010 06:34:06 PM
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