October 12, 2013
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カテゴリ: 映画
このドキュメンタリー映画に対しても先入観があった。天才的なアーティストが、廃材を利用して芸術作品を作り上げるというだけの映画かと思っていたからだ。

たしかに、作品にゴミ捨て場のゴミを使うことは使うが、ヴィック・ムニーズはそこで働く人たちと個人的にも深く関わり、彼らの中にある「聖性」みたいなものを引き出しつつ、魂の共同作業として作品を生み出していく。

その過程全体がすばらしく発見に満ちている。「見ていて何度か熱いものがこみあげてくる」と館主の文章にあるとおりの感動的な1本。

ムニーズはブラジル出身の現代美術家。しかし現代美術の世界を「閉鎖的」と批判し、独自の創作姿勢をとる。欧米でも評価され作品は人気があるようだ。オークションでも高値がつく。

だが、この映画はそうしたムニーズの創作を描いたものである以上に、リオデジャネイロ郊外の巨大ゴミ処理場で「ゴミ拾いではなく、リサイクル可能な資源を集めることで生計を立てていると誇りと尊厳をもって働く人たちをフォーカスしている。彼らの、日本では想像できない劣悪な居住環境が撮され、彼らの人生についても語られていく。

彼らのひとりひとりの人間性が感動的だ。決して幸運とはいえない人生を送ってきながら、「売春」ではなくゴミ拾いを選ぶ女性の価値観は日本人とは正反対だし、みなどこか品がある。貧しいスペインの庶民を詩人ヒメネスは「生まれながらの貴族」と呼んだが、ムニーズもまた彼らの姿にプロレタリア階級の人間だけが持つ輝きと生命力を発見したにちがいない。

彼らをモデルにした作品の売上金は彼らの生活に役立てていく。ひとりはレストランを開き、ひとりはリサイクル協会を作る。

こんなすばらしいキャラクターの人たちがたくさんいる国なら、多少犯罪は多くても、ぜひ一度行ってみたいと思わせた。

ムニーズの作品には訳知りの批評を拒む「力」がある。

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最終更新日  October 30, 2013 09:14:37 PM
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