October 20, 2013
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カテゴリ: 映画
Viva!イタリアと題された特集上映が東京で行われ、連日ほぼ満員の盛況だったらしい。3本を蠍座で上映するというので全部観ることにした。

イタリア及びイタリア人についてはステレオタイプのイメージが作られすぎている。陽気で美食家でいつも飲んで食べて歌っている。旧市街の歴史的建築物やその街並みを撮して一丁あがり。グルメ紀行番組はだいたいこのパターン。

しかしイタリアも郊外に出ると北千住や大田区のような風景が珍しくない。実は世界でも最も勤勉で貯蓄率が高いのがイタリア人だという統計的真実も知る人は少ない。実直で素朴な人間の割合は、もしかしたら先進国ではトップクラスではないだろうか。

この映画で描かれるのもそんな市井の人々だ。見習い修道女としがないクリーニング工場の経営者が、捨て子の母親を探しに協力しあうが徒労に終わる、というだけの映画。ドラマティックな展開も、胸のときめく恋愛もない。

しかし、数週間の母親探しのうちに、二人の間には友情が生まれていく。口さがないクリーニング店の従業員たちも、根のところでは純情で、欠点のある人たちにもそれぞれのかけがえのない人生があり自分の世界があるということが繊細に描かれていく。

どちらかというと美人なのに修道女の道を選んだ女性の、赤ん坊に対する思いを中心に観る人が多いと思うが、この映画のラストで登場人物たちをグループごとにタイトルバック的に流す部分を観ると、イタリア映画の伝統を強く感じる。

その伝統とは、イタリア人は根は純情で善良だといったような、欠点も含めて丸ごとオマージュするようなとらえ方である。「道」でも粗暴な男の中にも人間的な感情が残っていたことが描かれるし、「マレーナ」ではシチリアの女たちの唐突ともいえる真情が描かれる。どちらもこれがイタリア人なのだ、これがイタリア人のよさなのだという監督たちの切実なメッセージが伝わるが、この映画も実はそれが主題だったのだと思わずにいられない。

歴史的建築物やミシュラン・レストランはおろか、ホテルさえないようなイタリアの町にしばらく滞在してみたいと思うような映画だった。

ミラノで埋もれたままになっていた映画の、15年もたってからの日本公開。15年前に観られたらどんなによかっただろうと思わずにいられない。






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最終更新日  October 28, 2013 12:08:57 PM
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