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カテゴリ: 映画の話
この作品を映画館で観ることができた幸運に、今、心から感謝しています。

辛い、苦しい、哀しい、重い…
この 「麦の穂をゆらす風」 という映画には、どれも当てはまるようでいて、どの言葉でも言い表すのに足りないと感じています。
嗚咽がもれそうになるのを、こらえなければいけないことも度々でした。

でも、場内に灯りがついた時、このスクリーンに向きあったことを本当に「よかった」と思える、素晴らしい力を持った作品。

麦の穂をゆらす風


舞台は1920年代のアイルランド。
キリアン・マーフィー演じる、医師志望の主人公が、友人たちと「ハーリング」という独特の球技を楽しんでいる情景から、映画は始まります。

その日の帰り道に起きたある事件から、彼の運命は、アイルランド独立戦争と密接に絡まりあっていく。


しかし、傷は憎しみを生み、憎しみは憎しみを呼び…「暴力の連鎖」が、仲間や家族の絆を容赦なく引き裂いていきます。

その姿は、容易に今日のイラク情勢をはじめ、地球のあちらこちらで起こっている「現実」と重ねることが出来るわけで。

敵味方に別れて、激しく銃撃戦を構える者同士が、ファーストネームでお互いを呼び合う。
この残酷さ、切なさ。
こんな歴史の側面があったことを、恥ずかしながらまったく知りませんでした。

鳥打帽をかぶり、コートと革靴で銃を構える男達。
草の生い茂る丘に彼らが佇む姿は、一瞬、ファッション写真のようにさえ見えました。素敵なんです、とても。
だからなおさら、彼らを揺さぶる“殺し合い”という現実の、醜さがいたたまれず。

崇高でありたいという純粋さが、他者を容認しない残虐さと紙一重になる皮肉。
人間は、こんなにも度し難い。
胸に痛いほど染み入るこの物語に、さまざまなことを深く、考えさせられています。


実は何も、なんにも分かっちゃいなかったんだ、と、打ちのめされるような思いです。それを分からせてくれるから、映画は素晴らしいのだとも言えるのですが。

これほどまでに「ある事実」として濃密な世界を描き出してみせた、ケン・ローチという監督はやはりすごい、と改めて感服しております。





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最終更新日  2007.02.14 00:50:08
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