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サリィ斉藤

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カテゴリ: 本の話
作家・幸田文の娘である著者、青木玉さんが、母の形見を通して、様々な着物まわりの事柄を書いた一冊。
「芸術新潮」の連載をまとめたものだそうで、カラーの写真がふんだんに盛り込まれているのがうれしい限り。

幸田文の箪笥の引き出し 」に連なる仕事なのだと思いますが、残念ながらこちらは未読。文庫版になっているそうなので、幸田文の小説「きもの」と併せて、ぜひ読まなければ!と思っています。

エッセイというよりはルポルタージュ的な印象が強く、好奇心を大いに刺激されました。

母が遺した着物や反物の数々。
これを活かして着るために、仕立てたり染め替えたり手入れをする。
時には年老いた自分に合うように、また時には、娘に譲るために若向きに・・・

京都の悉皆屋さんを通じて行われた、これらの実体験を通して、着物にまつわる手仕事の現場でどのようなことが行われているか・・・絹を織る、染色する、色を抜く、洗う、湯のしする、等・・・読者の私たちも、著者と一緒になって、たくさんのことを知ることが出来ます。

また、着る側が面倒がらず、品物を大事に着続けて馴染んでいくことの大切さ、着物だからこそ味わえる「布の終わりまで付き合う」ことの素晴らしさについても、考えさせられました。

ともすれば、消費が美徳のように思われがちなこの世の中のシステムに、着物を作る側も着る側も、否応なく巻き込まれています。



着物あとさき


心に留めておきたい文章をいくつか。

「要求は最大、評価は最低というのが、この手の仕事につきものの危険である。頼む側は相手の技量と誠実を、頼まれる側は相手の好みと性格を同等に理解した上で成り立つ仕事である。」

「どの作業も高温の薬液、吹き出す蒸気、熱風による乾燥等、厳しい作業の連続であり、少しの気の緩みが事故につながりかねない緊張を強いるものだ。絹とは驚くほど強靭な一面があることを知った。」

「着物というものは着手に執着がなければ、通り一遍のものでしかない。母の一生の中でいろいろの着物が、その布に合った終わり方をしていった筈である。」

「総てはやっと目に見えるほどの細い糸からはじまるのだ。そして名前も顔も知らない多くの人の手を経てのち、身近な人とのつながりによって着る人の身を包む。糸は様々に美しく変わりながら、数知れぬ思いをつなぎ止めて、思いもかけぬ楽しい話を語りかけてくれた。」





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最終更新日  2008.04.16 01:10:34
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