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カテゴリ: 映画の話
イントゥザワイルド




「若気の至りの冒険譚」にとどまらない、息をのむような深みと広がりを持った傑作で、観終わってしばらくの間、強烈な余韻に身を任せていました。

監督のショーン・ペンは、原作のドキュメンタリーを映画化するのに、10年もの期間構想を温めたそうです。
その思い入れの強さは、やや演出面の青臭さとして現れているように感じましたが、かえってそれも、主人公の若さや幼さと絶妙にリンクし、相乗効果を生んでいるようでした。

様々な映像表現を駆使して、主人公が辿った旅を再現する、その迫力に引き込まれます。
野宿生活で水浴びをする彼を、ハイスピードカメラで撮った映像などは、飛沫が光のチェーンみたいで、本当にきれいだった。
山に川に海、そして原野…アメリカの大自然の姿を堪能できる映画でもあります。

何よりこの作品が素晴らしいのは、作り手が主人公に過剰な肩入れをせず、彼と彼を取り巻く世界を、とてもフラットな視点で描き出していること。

悪者を仕立てて、誰かの、何かのせいにすればそれで気が済む、という子どもっぽい思考回路の持ち主が多い中、この作り手の公平さが、私にはとても心安らぐものでした。


それは言い古された言葉であっても、やっぱり観る側の心を揺さぶる…

人として生まれて、他者と人間関係を結ぶことの、尊さと哀しさを改めて考えさせられる映画でもあります。

主人公が出会う年長者たちが、それぞれ彼に投げかける言葉の、確かな重みと温かさ。
それは、人生を生きること自体が冒険の旅であり、それを真摯に続ける人を育てるのだ、と、はっきりと示していたようにも感じました。

悲劇として描かれてもおかしくないようなストーリーが、だからこそ、静かな明るさや希望をはらんで見えるのかもしれません。
この力強い映画に出会えてよかったです。


荒野へ





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最終更新日  2008.12.09 00:01:34
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