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サリィ斉藤
ふたり暮らしの日々雑記＆お気に入りのご紹介。お気楽な共稼ぎ生活から一転、夫の転勤で初めての地方暮らし。そんな私の苦闘？日記でもあります。
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2008.12.18
テーマ： 最近、読んだ本を教えて！(24653)
カテゴリ： 本の話
シズコさん、それは「 100万回生きたねこ
」の作者として知られる著者の、母親の名前。
母と娘の、数十年にわたる相克の回顧録。今年、たくさんの書評を目にした本でした。
「私は母を好きになれないという自責の念から解放された事はなかった」
四歳の時、つなごうとした手をふり払われた記憶。虐待に近い厳しさを受け止め続けた末の、強烈な反抗期。歳月と様々な経緯を経て、晩年の母親を施設に入れ「私は金で母を捨てたのだ」と言い切る著者。
私も今は、それなりに人生経験を重ねたおかげで、著者が書く
「家族とは、非情な集団である」
という言葉も、
「ごくふつうの人が少しずつ狂人なのだ」
そして、自分が受けた傷を告白しながら、そんな自分もまた人を傷つけてきたことを、著者はごまかさないのでした。
完全な人間なんていなくて、誰にでも美点と欠点があることが、徹底した客観性を持って描写され…
だから読んでいて、会ったことのない佐野家の人々が濃密に立ち上がってくる。そして著者の視点の公平さが、誰もが懸命に人生を歩いていることを教えてくれるのです。
この本は、母、そして家族の物語を紡ぎながら、
「ごめんなさい」
と
「ありがとう」
この二つの言葉について、長いながい時間、著者が考え続けたことの記録にもなっています。
家族。時に厄介で切ない人間関係において、この二つの言葉が示す思いは、シンプルだけれど“究極”なのだと、思わずにはいられませんでした。
老いて、すっかり呆けてしまった母と向き合い、ついに
「私はゆるされた、何か人知を越えた大きな力によってゆるされた」
終盤のこの場面の描写で、私は嗚咽をこらえきれなかったです。
こんなにも美しく深い情に満ちた「ごめんなさい」と「ありがとう」。
私は自分の人生で、誰かに言ったことがあっただろうか、これから言うことがあるんだろうか。
最後のページ、七十歳になった著者が、彼岸にいる母に送る静かなつぶやき。
それを読んだときに自分の胸によぎったものを、私はうまく文章にまとめられません。これほどまでに深い余韻に満ちた読書体験は、久しぶりでした。
シズコさん
母と娘の、数十年にわたる相克の回顧録。今年、たくさんの書評を目にした本でした。
「私は母を好きになれないという自責の念から解放された事はなかった」
四歳の時、つなごうとした手をふり払われた記憶。虐待に近い厳しさを受け止め続けた末の、強烈な反抗期。歳月と様々な経緯を経て、晩年の母親を施設に入れ「私は金で母を捨てたのだ」と言い切る著者。
私も今は、それなりに人生経験を重ねたおかげで、著者が書く
「家族とは、非情な集団である」
という言葉も、
「ごくふつうの人が少しずつ狂人なのだ」
そして、自分が受けた傷を告白しながら、そんな自分もまた人を傷つけてきたことを、著者はごまかさないのでした。
完全な人間なんていなくて、誰にでも美点と欠点があることが、徹底した客観性を持って描写され…
だから読んでいて、会ったことのない佐野家の人々が濃密に立ち上がってくる。そして著者の視点の公平さが、誰もが懸命に人生を歩いていることを教えてくれるのです。
この本は、母、そして家族の物語を紡ぎながら、
「ごめんなさい」
と
「ありがとう」
この二つの言葉について、長いながい時間、著者が考え続けたことの記録にもなっています。
家族。時に厄介で切ない人間関係において、この二つの言葉が示す思いは、シンプルだけれど“究極”なのだと、思わずにはいられませんでした。
老いて、すっかり呆けてしまった母と向き合い、ついに
「私はゆるされた、何か人知を越えた大きな力によってゆるされた」
終盤のこの場面の描写で、私は嗚咽をこらえきれなかったです。
こんなにも美しく深い情に満ちた「ごめんなさい」と「ありがとう」。
私は自分の人生で、誰かに言ったことがあっただろうか、これから言うことがあるんだろうか。
最後のページ、七十歳になった著者が、彼岸にいる母に送る静かなつぶやき。
それを読んだときに自分の胸によぎったものを、私はうまく文章にまとめられません。これほどまでに深い余韻に満ちた読書体験は、久しぶりでした。
シズコさん
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母に対しては
935うさちゃん
さん
『シズコさん』のことは、書評で見て、気になっていました。母と娘の関係って、ハリネズミどうしのようなところがあるかもしれない。母に対しては、心を許すとか頼り切るとか、そういうことのできない関係だったなあ、と思います。昔も今もそう。
読んだらグサグサと刺さるかもしれない、と思って、買いにいけなかった本です。さてどうしよう。 (2008.12.20 23:26:54)
読んだらグサグサと刺さるかもしれない、と思って、買いにいけなかった本です。さてどうしよう。 (2008.12.20 23:26:54)
Re:母に対しては(12/18)
サリィ斉藤
さん
935うさちゃんさん
私はこの本、２時間ほどで一気に読了しました。家族の話って、書いている人の自己憐憫が前面に出ているととてもしんどいし読むに耐えないけれど、その点この本は、どこか突き放した、まったく湿り気のない文章で描かれているので、その点救われました。
家族も親子関係も、そのあり方は百組あれば百通り…でもどこかで普遍的な部分もあって、だからよその家族の物語も読む側の心を揺さぶるのでしょうね。かつての「東京タワー」のヒットもそうかもしれません。
実は私も、手に取るまでかなりためらいがあったのですが、一度手に取ったらページをめくるのを止められず、そして今は読んでよかったと思っています。 (2008.12.21 01:34:06)
私はこの本、２時間ほどで一気に読了しました。家族の話って、書いている人の自己憐憫が前面に出ているととてもしんどいし読むに耐えないけれど、その点この本は、どこか突き放した、まったく湿り気のない文章で描かれているので、その点救われました。
家族も親子関係も、そのあり方は百組あれば百通り…でもどこかで普遍的な部分もあって、だからよその家族の物語も読む側の心を揺さぶるのでしょうね。かつての「東京タワー」のヒットもそうかもしれません。
実は私も、手に取るまでかなりためらいがあったのですが、一度手に取ったらページをめくるのを止められず、そして今は読んでよかったと思っています。 (2008.12.21 01:34:06)
やっと読みました
935うさちゃん
さん
『シズコさん』はネット書店で取り寄せてあったのですが、手に取るまでがなかなか・・・今日出かけるときに電車の中で読もう、と持って行ったので、やっと読み終えました。
華やかで見栄っぱりで現実的で勝手なシズコさんと、強情で口下手で父親似の洋子さん。恐れていた通り、程度の差はあれ、母や私とそっくりでした。シズコさんが呆けることで可愛くなって、洋子さんは許しを得たと感じていらっしゃるようですが、うちの場合は先が長いです。この本は手元において、繰り返し読みたいと思います。
実は１１月末から母と冷戦中。１対１ではなく、母対
、私と妹です。仕事と家庭の両立で余裕のない娘たちは、母親を案じもしないし話も聞かない冷たい子たち、というように母は言うのですが、私たちは遅く帰って食事作りをしているときに、母からの電話で近所の人や親戚の話（それも病気の話）をえんえん聞かされたくはない。それでもガチャンと切ることはせず、母の話が２０分ほど過ぎたところで「ごめん、いまご飯作ってるとこ」「いま食事中やねん」と断るのですが、母には気に入らないのです。
祖母が生きていたときは、祖母の電話がうっとうしいからと電話線を抜いていたのを、母はきれいに忘れているようで。
いまは父がいるからいいけど、母だけ残ったら大変だろうなあ・・・ (2009.01.25 21:17:18)
華やかで見栄っぱりで現実的で勝手なシズコさんと、強情で口下手で父親似の洋子さん。恐れていた通り、程度の差はあれ、母や私とそっくりでした。シズコさんが呆けることで可愛くなって、洋子さんは許しを得たと感じていらっしゃるようですが、うちの場合は先が長いです。この本は手元において、繰り返し読みたいと思います。
実は１１月末から母と冷戦中。１対１ではなく、母対
、私と妹です。仕事と家庭の両立で余裕のない娘たちは、母親を案じもしないし話も聞かない冷たい子たち、というように母は言うのですが、私たちは遅く帰って食事作りをしているときに、母からの電話で近所の人や親戚の話（それも病気の話）をえんえん聞かされたくはない。それでもガチャンと切ることはせず、母の話が２０分ほど過ぎたところで「ごめん、いまご飯作ってるとこ」「いま食事中やねん」と断るのですが、母には気に入らないのです。
祖母が生きていたときは、祖母の電話がうっとうしいからと電話線を抜いていたのを、母はきれいに忘れているようで。
いまは父がいるからいいけど、母だけ残ったら大変だろうなあ・・・ (2009.01.25 21:17:18)
Re:やっと読みました(12/18)
サリィ斉藤
さん
935うさちゃんさん
再びのコメント、ありがとうございました。
幸せや不幸せの尺度が人の数だけあって、それぞれ他人のそれとは比べても意味がないように、母子や家族の抱える問題も、どれも特別なオンリーワンの事情ですよね。
家族という枠組みやその絆は、実際のそれよりも美化された理想が吹聴されすぎている、と思うことがあります。闇を抱えていない家族関係なんて、あり得ないんだと思うくらいでちょうどいいようにも感じます。
そこから出発した先に、人間を越えた「大きなもの」に感謝せずにいられない経験を得られるかもしれません。
結局、頭であれこれ考えても仕方ない、というところでしょうか… (2009.01.27 17:03:36)
再びのコメント、ありがとうございました。
幸せや不幸せの尺度が人の数だけあって、それぞれ他人のそれとは比べても意味がないように、母子や家族の抱える問題も、どれも特別なオンリーワンの事情ですよね。
家族という枠組みやその絆は、実際のそれよりも美化された理想が吹聴されすぎている、と思うことがあります。闇を抱えていない家族関係なんて、あり得ないんだと思うくらいでちょうどいいようにも感じます。
そこから出発した先に、人間を越えた「大きなもの」に感謝せずにいられない経験を得られるかもしれません。
結局、頭であれこれ考えても仕方ない、というところでしょうか… (2009.01.27 17:03:36)
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