源にふれろ
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『歌舞伎町のシャブ女王 覚醒剤に堕ちたアスカの青春』(石原伸司・著)読了。これも図書館でたまたま手に取って、借りて来た本。著者は、元広域暴力団組長で、70年の人生のうち30年を塀の中で過ごしてきたつわもの。60を過ぎてヤクザを引退。自分のように道を踏み外してはいけない、と作家活動の傍ら、非行少年少女の更生のため、「夜回り組長」として、深夜の繁華街をパトロールして、話を聞いてやり、手助けをしているそうだ。テレビでもだいぶ取り上げられているらしいが、知らなかった。で、その元組長がパトロール中に会ったのが、アスカ。友だちから組長の話を聞いて、石原さんと声をかけてきた。その友だちというのは、女子刑務所の同房だった子。アスカはシャブ中で刑務所に入れられていたのだが、立ち直りたい、立ち直って石原さんのように非行少年の更生に役立ちたい、と訴える。飯島愛を超えるようなメッセージを送る人物になりたい、と。そんなアスカの涙の訴えに、石原さんは一肌脱ごうと決意するのだが、アスカがどうしてシャブ中になったのか、その生い立ちと「青春時代」たるや、極道歴50年の石原さんでも驚愕するような事実のオンパレード。生後まもなく祖父母の下に預けられて、それなりに楽しい生活を送っていたのが小6のある日、12年ぶりに母親が見知らぬ男とやってきて、アスカを引き取るという。無理やり連れて行かれた4畳半の家では、ロクに食事も与えられず、母はパチンコ、義父は酒びたり。(たぶん児童手当が目当てで引き取ったと思われる)親とも子とも思えぬ扱いの果てに義父のレイプに耐えかねて、家出したアスカは暴走族とつるむようになり、やがて歌舞伎町へ。そこで知り合った組長(全国的なシャブ売買で名の知れた組)とラブホテルへ行き、首筋に高純度のシャブを打たれてシャブ中にさせられ、そのまま組長と同棲を始める。シャブ中セックす中毒にされたアスカは、誰彼問わず次々と男と寝まくる一方、組長の愛人ということで歌舞伎町でやりたい放題やるが、ある日、組長が自分の妹分(といっても年はアスカより上)と浮気しているのを見て激怒、その足で警察に乗り込んで、「組長をムショにぶち込んでくれ。アスカも教護院送りを覚悟の飛び込みだ」と、組長がどこにシャブを隠しているか洗いざらい刑事にぶちまける。組長をマークしていたが決定的な情報がなく手詰まりだった警察は、アスカの証言を元に、組長宅からシャブを押収し逮捕(実刑6年)。アスカも教護院送りとなるが、一躍名を売り、「歌舞伎町のシャブ女王」と囁かれるようになる。これが13から14歳にかけて。この本の序章。一度シャブ中になったら、ちょっとやそっとでは立ち直れないそうで、ここからシャブ中の恐ろしさが、いろいろ語られていくわけだが、それはまあ何とも、新宿の裏にはこんな世界があるのか、と驚くような生態であった。いつ死んでもおかしくない。でアスカの半生が語られた後、後半、冒頭の出会いに話は戻る。石原さんは今まで多くのヤク中を見てきた経験から、アスカも99.9%立ち直れないだろうことをわかりながら、0.1%に文字通り命を賭けて付き合っていくことにするのだが、ここからがまた一筋縄ではいかない。何しろ人格から何からメチャクチャで、常識も何も通じないのだから。ぶん殴ったり、さじを投げたと冷たく突き放したりして、今後もきちんと更生できるという光もはっきり見えぬまま、話は終わる。アスカがこうなった全ての根幹は、親にある。親の存在が、どれだけ子どもの人生に影響を及ぼすか。おそろしいほどに思い知らされた。ちなみに教護院から出てきたアスカが歌舞伎町で別の組長と付き合っている時、アスカから義父の行為を聞かされたある組長が義父を拉致し、組の仕事をさせて、何かある度にボコボコにした結果、義父は母を捨てて逃げた。またその組長がらみでマル暴の刑事に目をつけられたアスカは、その刑事と同棲し、刑事の食事に毎度シャブを入れて食わせる。刑事はそれを知りながら、シャブ飯を食ってアスカとのセックすに溺れるが、やがて身を持ち崩し、最後は新宿でホームレスになったという。まあ、刺激的な本であった。これほど自分の生活と接点がまるでない本もめずらしい。
May 24, 2009
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