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(歴史的な大記録もほとんど無視)
大相撲は白鵬の3場所連続全勝優勝、全勝優勝7回という
記録を残して終わった。ただ、場所前、場所中、場所が終わ
ってからも、ずっと、野球賭博がらみの報道が中心で、白鵬
の記録など霞んでしまった。
3場所連続の全勝優勝は近代相撲では初めてのことだし、
全勝優勝7回というのは、戦前に活躍した伝説の大横綱であ
る双葉山の8回に次ぐ、2位タイの記録で、大鵬や千代の富
士に並ぶ大記録である。本来なら、大きく報道されて当然の
内容だが、新聞、テレビは小さな扱いである。
ところで、力士の野球賭博問題とは何なのか。
(マスコミの煽りと暴走)
きっかけは週刊新潮の報道である。その内容は、琴光喜が
野球賭博をして、勝った金を受け取ろうと請求したら、仲介
役の元力士から、逆に「大関が野球賭博をしていることを知
られたら大変だろう」と恐喝され、数百万円単位の金を脅し
取られ、更に、1億円からの金を恐喝されていると報道した
ことが発端だ。
この報道をきっかけに、新聞、テレビ、雑誌が「国技の相撲
取が賭博をやるのはけしからん」というトーンでの報道が始
まり、お定まりのコースで、新聞社、テレビ局、通信社の特
ダネ合戦のなり、マスコミの暴走、人民裁判が始まった。
そして、野球だけでなく、力士が仲間内で花札をしていたこ
とや、後援者やファンとの会合で会食をした時に、食事をとも
にした10数人に会食参加者に暴力団関係者がいたことや、暴
力団関係者が役員をしている会社から、地方場所の部屋用のス
ペースを借りたということまでもがバッシングの対象になった。
マスコミの報道を冷静に見ると、力士が賭博をしていること
がけしからん。神聖な国技を伝承する人間がそんなことをして
よいのかという、訳のわからない魔女狩り的なトーンでの報道
が目立つ。
(賭博、賭け事をするのは日常的)
まず、日本人のほとんどの人が賭博をしている。宝くじも賭
博だし、競輪、競馬、競艇も賭博である。ゴルフをする人のほ
とんどが、一緒にコースを回る人と金額の多寡は別として、賭
けをして、終了後、現金の授受をしている。会社などで、高校
野球が始まると、優勝チームを争うトトカルチョをしている例
は珍しくない。
パチンコも立派な賭博である。パチンコ業界の年間売上高は
自動車業界を上回り、日本での最大産業である。ウイークデー
の朝にパチンコ店の前を通ると、開店を待って、若い人や中年
者などの男女が何人も行列を作っている状態である。
それだけ、国民の中に賭博が日常化しているなかで、なぜ、
今回、相撲だけがこれだけ大騒ぎになっているのだろうか、冷
静に考えてみないといけない。
(相撲は神事か?)
まず、相撲の今回の問題を議論する時に、マスコミやそれに
出て来る人が二言目に言うのが、「相撲は伝統国技」「相撲は神事」
という言葉である。本当に多くの日本人がそう思っているのだ
ろうか。
それだったら、テレビの視聴率が高くてもよいはずだし、力士
のなり手に日本人の若者が多くいてよいはずである。朝青竜の暴
行問題の時も、同じ議論があったが、それまで相撲にほとんど関
心がなかった人までもが、「伝統の国技」というようなことを言い
だした。
原因はどうしてか。マスコミがそう報道するからである。多く
の国民は色々なことの実態を知らない。だから、マスコミの報道
に大きく影響される。それだけにマスコミの報道は慎重にならな
いといけないし、対立する両方の意見を紹介しないといけない
のだが、今のマスコミはそういうようになっていない。
(国民が実態を知らない暴力団)
暴力団というと、ほとんどの国民は会ったこともないので、
ただ、パンチパーマで、黒いスーツやサングラスのイメージで、
怖い人たち、悪い人たちという印象である。だが、前にも書い
たが、日本の上場企業の内、100社位が何らかの関係で、暴
力団の影響下にある。そして、多くの暴力団幹部は、会ってみ
ると、普通の人と区別はつかない。
かつて、警察は、名称は、暴力団だろうが、やくざだろうが、
的屋だろうが、そうした人たちと、つかず離れずの関係を作っ
てきた。世の中には人がやりたがらない仕事はあるし、どうし
ようもない人を野放しにするよりは、そういう集団で管理して
もらう方が社会全体としては、問題が起きないと考えたのだ。
だから、事件などが起きると、やくざ、暴力団の世界に流れ
る情報が貴重で、警察官がそれを得て、犯人逮捕などというこ
とがいくらでもあった。住み分けがあったのだ。やくざはやく
ざで、「素人の人には迷惑をかけてはいけない」と仲間内を厳
しく取り締まったりした。
(リークの怖さ)
ところが、今から20年位前から、天下り先を拡大し、勢力
を大きくしようとしていた警察組織が、やくざを暴力団として
排除することを決め、その分野での利権獲得に乗り出し、やく
ざの締め出しを図った。そこで、両者の凄まじい争いが始まっ
たのだ。
こうした流れで、今回の相撲界の野球賭博報道を見ていると、
筆者はその裏に警察官僚の思惑を感じざるを得ない。
賭博罪での逮捕、検挙は原則、現行犯である。そういう意味
では、力士の相撲賭博での立件は難しい。そこで、マスコミに
リークして、原稿を書かせた。それで騒ぎを大きくさせ、少し
鎮静化してきたら、第二弾で千代大海の話を更にリークした。
筆者も記者経験者なので、そうした体験が何回もあるが、一
生懸命取材をして、他社が知らない特ダネをとり、報道をして
誇らしげにしていたら、その報道は実は政治家、官僚、経営者
が世間の動向、反応を見るためのリークで、結果的に利用され
たということである。今回の週刊新潮はその感がする。
(理事長は警察・検察官僚の天下り先に?)
断っておくが、筆者は賭け事が好きではない。競輪、競馬、
競艇はしたことがないし、宝くじも買わない。パチンコもしな
い。胴元が国であるか、会社であるかは別として、宝くじなど
は売り上げの55%を国がとってしまっている。詐欺以外の何
ものでもないと思っている。競輪、競馬でトータルとして、金
を儲けたという人も聞いたことがない。
また、仕事でやくざ、暴力団の人を取材したことは何回もあ
る。どうしようもなく、困った時に、頼まないといけないこと
は生涯に1回くらいあるかもしれないが、できることなら、付
き合いたくない人たちである。
ただ、今回の大相撲の野球賭博騒動を見ていると、結果とし
て、検察幹部OBが理事長代行になり、今の流れで行くと、理
事長にスライドしそうな雰囲気である。そうなると、相撲協会
の理事長ポストは警察、検察官僚の天下り先になってしまうの
ではないか。長年の官僚取材の体験から、そんなことを感じる。
(相撲は興業)
筆者は相撲は別に好きでも嫌いでもない。ただ、神事だとか
言われると、言っている人を信用できない。戦後、相撲協会は
つぶれそうになった。国民がもう過去のものと考えたからだ。
それを救ったのは、NHKのテレビ中継である。そして、栃錦、
若乃花(先代)、大鵬、柏戸などの人気者が出て、盛り返した。
そして、若乃花、貴乃花などが出たし、朝青竜が出て、今日の
状態になったのだ。
基本は格闘技であり、興業である。そして、引退して親方に
なれれば、生涯賃金は、他のプロスポーツとひけをとらない位
の金額を稼げるスポーツである。だから、外国人が多く出稼ぎ
に来るのだし、行儀がよくなかったが、朝青竜が人気があった
のだ。
今のように、これを機会に、もっと倫理的になれ、道徳的に
なれというようなことを力士に言い続け、バッシングを続けて
いると、結果として、相撲は面白くなくなり、誰も相撲を見な
くなってしまう。そうすれば、折角、利権を手に入れかかって
いる警察、検察官僚にも損である。
もうそろそろ、今回の騒動に幕引きの時だと思う。警察、検
察の幹部がそう判断して、騒ぎを終息方向にもっていくことは
近いと思う。その時に、今、魔女狩りをしているマスコミは、
今度は警察の無力ぶりを叩くのであろうか。