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政府が予定しているテレビの地デジ化まで、1年を切り、総務省
はあの手この手の地デジキャンペーンをしている。それをまた、総
務省の命令で、各テレビ局が報道している。
既に地デジでテレビを見ている人はご存じないと思うが、これま
でのアナログテレビで画面を見ると、1日に何回も「今見ているア
ナログ放送は来年で放送終了」というスーパーが流れる。
ただ、ス-パーが流れるのではなく、テレビの画面に枠を作り、
見える画面を小さくして、周囲に「地デジにしないと、テレビが見
ることができなくなる」と、危機感を煽る文字を配置している。見
ていて、とても見苦しいし、邪魔である。
総務省の発表では、テレビを既に地デジ化した世帯は83%だと
いう。しかし、今のなりふり構わずのキャンペーン状況をみると、
筆者はこの数字は嘘だと思う。
身の回りにいる人たちと話をしても、地デジに切り替えたという
人がほとんどという感じではない。第一、それだけ多くの人が地デジ
に切り替えたのなら、そこまでしつこく、スーパーやキャンペーン
をする必要はないはずである。
先日、テレビのクイズ番組で、ある有名タレントが、東京キー局
のテレビ朝日のチャンネルを10と言って、同じ出演者に、「嫌だ、
あなたはまだ地デジ化が終わっていないの。地デジでは5チャンネ
ルでしょう」と言われるというシーンがあった。
また、今回地デジ化キャンペーンを依頼され、メインキャラクタ
-になった有名タレントが、「自分はこれまでアナログでTVを見て
いたが、メインキャラクターに登用されたので、それを機会に、切
り替えた」と話をしていた。テレビを主な活躍の場とする、有名タ
レントでこうである。
記者時代に、役所が発表するデータや数字をもとに多くの原稿を
書いた経験があるが、その時でも、おかしいと思うことは少なくな
かったし、後になって、やはり、あれは嘘とか、国民を誘導するた
めの話というのが多かった。
体験から言うと、役人は自分たちが、こうしたいという方向に国
民の世論をもっていくために、データのある部分を極端に誇張して
話を作ることは珍しくない。今の少子高齢化で大変だという話につ
いても、筆者は役人の増税のための世論作りの臭いを感じさえする。
(電波の開放がなぜ行われないか)
それはともかく、地デジ化とは何かという、そもそもの議論があ
まりマスコミで報道されない。許認可権を持たれて、首根っこを押
さえられているテレビ局は仕方がないとして、新聞、雑誌はもっと
この問題の本質を報道すべきであると思う。
政府の大義名分は、アナログからデジタルにすることで、電波を
より効率的使え、有限なる資源である電波のよりよい活用のために
もデジタル化が必要だということである。そして、世界の主要国で
もデジタル化が進んでいることが、自分たちがやっていることの正
当性の証明であるような話を総務省、政府は言っている。
デジタル化が進んだ他の国と日本との間に大きく異なることが2
つある。1つは地デジか先進国のアメリカでは、電波の開放という
ことが行われた。ビジネスなどで電波を利用したいと希望する人は
多い。しかし、電波利用が開始した当初に利用権を与えられたテレ
ビ局、ラジオ局、消防、警察、航空などが既に使っていて、他業者
が入り込む余地がなかった。
それがデジタル化で、使える電波域が増え、アメリカではその利
用可能になった電波について、オークションが行われ、新規に仕事
で電波を利用できる人が増えた。しかし、日本の総務省はこの電波
の開放については、消極的で、ほとんど何もしていない・
(CSが進んでいない国での強行は異常)
2つ目はアメリカでテレビを見ている人の圧倒的に多数の人は、
ケーブルテレビ(CS)を見ているということである。その結果、
一般の視聴者は地デジ化で何もする必要がない。従来のテレビ機器
でデジタル放送が見ることができるようになった。つまり、ほとん
どの国民は負担ゼロでデジタルに切り替わったのだ。
そのアメリカでも、ケーブルテレビ(CS)ではなく、テレビを
見ている人も結構いたので、アナログからデジタルへの変更には慎
重で、時期を延期するなどの措置をとっている。
翻って、日本ではケーブルテレビ(CS)でテレビを見ている所
帯は1割にも行かない。つまり、ほとんどの国民は自己負担で、テ
レビ受像機やアンテナを取り替えないといけない。つまり、国民の
大きな負担を強いての地デジ化である。明らかにこれは政策として
おかしい。
最近、有識者が地デジ化対策が遅れているので、1年後の切り替
えは延期すべきであるとの提言をしたが、総務大臣はすぐに記者会
見で、延期はしないと述べた。
地デジ化が一番遅れているのは、実は東京を中心とする首都圏で
ある。これはマンション生活をする人が多く、そのマンションのビ
ルとしての地デジ化が進まないのだ。
デジタルの電波は方向性が強い。大都会には大きな建物が多く建
っている。その中で、きちんとデジタルで電波を各視聴者に届ける
ための工事が結構大変なのである。
(何のための地デジ化)
海外と大きく異なる環境の中で、無理して地デジ化を強行しよう
とするのはなぜか。一説には、家電業界が不況で、新しい大きな需
要を生む製品を欲していて、それに地デジ化が大きな役割を果たし
たという話がある。あり得る話だが、そうだとするなら、政府はど
こを見て政策をしているのかと言いたい。
一番の当事者であるテレビ局は、総務省が監督官庁であるので、
キャンペーンに付き合っているが、彼らも実は被害者である。地デ
ジ化に要する経費は、日本全体で1兆円を超すと言われる。テレビ
局がその多くを負担するが、彼らにはデジタル化のメリットはほと
んどない。不況でCM収入が減っているテレビ局は大変である。
テレビ局で唯一、メリットを享受するのはNHKである。アナロ
グ放送には、そんな機能はないが、デジタルになると、視聴者が
受信料を払っているかどうかチェックできる機能がついていて、
受信料契約をしていない人には、契約をしてくださいという表示
が画面一杯に出る。こういうのを見ると、推進者に1人にNHK
がいたのかと感じる。