SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.06.15
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カテゴリ: SF
小松左京「果しなき流れの果に」

果しなき流れの果に

小松作品は荒削りで癖の強い読みづらい文体、類型的なのにあくの強いキャラ、やたらと脱線して傾けられる膨大な薀蓄のひけらかし(小説スタイルのメモと揶揄されるほどの)などが苦手で、長編は軽いユーモア/ホラー作品を除いてはほとんど読んでいなかった(復活の日は読んだが、冗長さに閉口し、エピローグ以外ほとんど評価できる部分はなし)。しかし本作は王道の本格SFであり、ミステリタッチの構成といい、主人公的な位置づけにある野々村をめぐるSF的ストーリー(タイムパトロールを行いつつ進化をコントロールしようとする未来人やこれにスカウトされた歴史上の人々の妨害工作に抗いながら、未来の知識を過去にもたらし人類の意識の進化速度を速めようとするあくなき闘争)およびヒューマンストーリー(別れた恋人との長い年月を経た感動的な再会)のもつ説得力や面白さといい、終盤で野々村の意識が超高次元へ突き抜けることによって垣間見る超高次宇宙の精神の生成・更なる高次化という巨大な弁証法的運動とその些細な一過程を占めるに過ぎない微小で低次な人類・地球史のヴィジョンのSF的センスオブワンダーといい、ぐいぐい引き込まれるような面白さを持っていて、一気に読み終えた。中盤のストーリーを占めるタイムパトロールとの戦いの場面こそ、旧作の引用・模倣の色が濃くやや類型的であったり、細かい辻褄あわせが微妙だったりするのだが、結局終盤の強烈なヴィジョンが出現することによってそれらすべてが卑小な次元に格下げされ批判されることとなるという作品全体の構造からすれば、むしろ必然性があったこととなり問題とはならない。
10点満点で9・5点ぐらいは与えてよいだろう。





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Last updated  2009.06.15 17:32:57


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