SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.07.17
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カテゴリ: SF

サマー/タイム/トラベラー(1)
サマー/タイム/トラベラー(2)
高校生が主人公のいわゆるライトノベルに分類される作品だし、一貫して高校生の一個人視点で宇宙全体を語ってしまう、俗に言う「セカイ系」に分類されそうな作品なのだが、しっかりと本格SFである。前巻の時間SF研究のくだりこそやや冗長な感じがするが、作中で天才高校生たちが繰り広げる超科学理論の類がいちいち面白いし、これだけ宇宙全体を超えた大風呂敷を広げながらも、ストーリーが一地方都市の仲良し高校生たちの夏休みの青春物語の範囲にとどまっているスケールの小ささがかえって新鮮。おまけに連続放火事件と脅迫状の意外な真相はサイコミステリっぽいし、狂言誘拐のくだりなどピカレスクの要素もあり、むろんこの手の作品でお約束の淡い恋愛の要素もあり、と盛りだくさんで楽しめる。「時を駆ける」超常能力を持った少女を登場させながらも、この手の作品につきものの派手な展開もアクションもなく、ひたすら彼女に置いていかれる普通人の「ぼく」視点からの「ちょっと変わった高校生の夏休み部活日記」で延々と話を進める様子は、ほとんどアンチSF的ですらあるが、その分登場人物ひとりひとりのキャラクターがしみこんでくるし、あのけだるく時間の進みの遅い遠い日の夏休みの肉体感覚がリアルによみがえっても来る。母親とチャットで日常会話をしているなど些細なコネタもいろいろ挟んで飽きさせないような工夫が感じられる。終わり方もきれいだし、非常に完成度の高い作品だと思う。少年もの侮るなかれ、だ。SFの進むべき方向は本作のような少年向けの衣をかぶった本格SFにこそあるのかもしれないと、半分本気で感じている。大体自分が昔SFにはまったのも、少年向けの優れた作品があったからなんだし。





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Last updated  2009.07.18 03:15:54


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