SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.07.20
XML
カテゴリ: SF



この時代の科学的幻想小説は、SF的リアリズムやジャンル文法が成立する前なので、科学法則にとらわれない奔放な想像力の限りを尽くした空想の数々がとにかく楽しい。このシェーアバルトの短編集などその極致の一つ。
「宇宙劇場」★★★
奇想天外な宇宙劇を見せる宇宙劇場の建設に心血を注ぐ変人の話。この話自体は普通小説だが、本書の冒頭に置くにはふさわしい。
「あたらしい大地」★★★1/2
奇想天外な形状をした金星人が人口問題に悩む宇宙ファンタジー。その金星人(2種類いる)はこんな形状。「片方は巨大な図体でぶくぶくと太り、亀状の甲羅をからだの上下に持っていた。もう一方の生物は、握りこぶし状に丸めて足にもなる、長い指先をつけた触手を20本持ってい(た)」
「舵手マルブ」★★★★
ヴェスタという惑星の住民が、厚い雲の向こうを覗き見ようとして高みへと接近してゆく物語。SFでも特に人気のある「認識の変革」ものの原型ともいえ、面白い。
「大きな木」★★★★

「ツァックとヂヂと巨大なあたま」★★★★
ケレスという星の雲の中に住む住人二人が、「磁気中心部」に潜む謎の存在の正体を探ろうとする冒険物語。星の周りの雲の中に無数の瘤状の突起があって山脈をなしている、雷とともに生物が生まれるなどの奇天烈な星の生態系描写が楽しいし、星の奥に住む「巨大な頭を持った生物」の発見とともに神話が変遷していくラストも面白い。
「キーエンバイン教授の冒険」★★★★
極めて巨大で希薄な金星生物と遭遇する科学者の話。地球そのものを生物に似た一個の永久機関と捉える作者お得意の思想も登場。とにかくこの作品は物理的方法で把握困難なほど希薄かつ巨大な生物というモチーフの魅力がすべて。
「隠遁者」★★★★
南米南方海上を漂う船が、空に発生した巨大な蜃気楼によって、小惑星エロスに住む奇天烈な生物を目撃する話。エロス住民の奇天烈さもさることながら、蜃気楼で大気が望遠鏡状態になって星の住民までが見えてしまうという着想の奇天烈さとのあわせ技で一読忘れがたい怪作。
「友好的社会」★★★★
隠遁者と同じ着想で、多数の鏡を使用して空中に巨大な天然望遠鏡を作り出し、木星周辺の奇妙な生物を観測する話。例によって木星周辺生物の形状の奇天烈さも見事だが、政治的メッセージも込めている。
「硝子球」★★★1/2
彗星内側にあるガラス球のような小惑星内部に住む魚状生物の話。
「満ちたりた人々」★★★1/2

「あたらしい穴」★★★★1/2
奇天烈さではこの作品が一番か。小惑星が住人の希望を先取りして巨大な天体望遠鏡に姿を変えてしまうというとんでもない話。しかも、アジア北部で突如地割れが発生し、地底生物の竜が飛び出してくるという楽しいおまけつき。ラファティもびっくりの大法螺小説。
「大胆な人々」★★★1/2
今度は海王星外側の小惑星が太陽系外に飛び出すという、いまどき流行りの惑星移動ものの魁。惑星=生物説にも立っており、また「あたらしい穴」で登場した竜も改めて登場。話自体は普通。

全般的に、奇想天外なエイリアンの数々とリーダビリティはワインボウムっぽく、スケールの大きな大法螺とユーモアはカルヴィーノっぽい。これは「永久機関」「小遊星物語」はもちろん、未訳作品も読んでみたい。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2009.07.21 00:42:35


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

×

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

楽天SF

楽天SF

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Comments

コメントに書き込みはありません。

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: