SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.08.09
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カテゴリ: SF
蟻塚の中のかぶと虫 (1982年) (海外SFノヴェルズ)


ストルガツキー兄弟2連発。
こちらは『神様はつらい』『収容所惑星』と同じく<遍歴者>シリーズの作品。いずれも未読なので詳細は不明だが、遍歴者というエイリアンが存在する世界を舞台にした宇宙SFのシリーズのようだ。これまでに読んだストルガツキーは群像社の不条理ファンタジー数冊と、代表作の『ストーカー』だけで、このうちSF度が濃いのは『ストーカー』だけ。なので、本作の様なはっきりした宇宙SFというのは初読で、新鮮に感じた。と同時に、『ストーカー』とこのシリーズだけが早川書房から出ている理由もなんとなく納得。
本作は、地球へ向かう途中で失踪した進歩官(エイリアンと接触交渉する類の仕事らしい)の行方を探す秘密調査員の話だが、この調査員だけでなく調査対象である進歩官も含めた複数人の一人称の報告書を集めた体裁になっていて、一風変わったスタイル。ストーリー展開は(この作者らしいが)遅く、前半はなかなか話が進まない。自分が調査されていることを知って当の進歩官が自ら接触してくる中盤からやっと話が進むが、英米エンタメSFのようなアクションシーンは非常に少なく、わずかに終盤にあるだけで、全体を通じて、ひたすら登場人物たちの会話で真相を小出しにしていく場面が大半を占める。犬から進化して人間と違う思考をする知的種族が出てきたり、人類が他の種族に騙されて絶滅しかけている世界が出てきたりと、魅力的な素材も結構出てくるのだが、あまり深く突っ込まれずに終わる。このあたりの素材の扱いはあまり練られておらず、ただ話を膨らませるために出してみただけ的な消化不良な印象。
ただ、進歩官の失踪の真相(というか、進歩官の失踪の調査を命じられた理由についての真相)から引き出されるメイン素材(遍歴者が製造していた人類型生命体の胎児)にからむオチのつけ方が非常に皮肉っぽくてとてもよい。レフ・アパルキン最後の言葉「ドアのそばにけものがいたけれど・・・」という台詞が意味深。
しかし、全体としては短編向きの素材だという印象が強く、「良いのはオチだけの冗長な話」というのが個人的な評価。ということは結局、今までに読んだこの作者の大半の作品と同じか。私にはあまり相性の良くない作家かもしれない。





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Last updated  2009.08.09 10:13:39


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