SF拡張の原理

SF拡張の原理

2009.09.23
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カテゴリ: SF
世界SF全集25 バルジャベル、フリック、フランケ

<フランスもの>
ルネ・バルジャベル「荒廃」★★1/2
破滅もの。高度に発達した機械文明によって、パリなどの大都市に人口が集中している。しかし南北アメリカが政治的に対立、南アメリカ帝国の皇帝が世界中にミサイルを発射。電源を失ったパリは都市機能が麻痺し大パニックで人口の半分が死滅。完全に文明が崩壊し都市は腐敗する死体で居住不能な空間と化する。難民は暴徒化し原始的な生活に戻り、殺しあう。主人公は小さなグループを作って故郷へ戻り、反機械文明的で原始共産制的な社会を作り、族長となる。
未来社会のディテールに凝っている割に描写が古臭いのと、政治体制があまりに荒唐無稽であるため、前半を読み進むのがかなりつらい。キャラクターやストーリー展開も雑で、プロの仕事とは思えない。重要と思われるキャラが次々とあっさり死んでいく。わずかな読みどころは後半の原始化した殺伐とした社会と、作者の理想と思われる原始共産社会の描写だが、前半のひどさを埋め合わせるには至らない。
この作者の作品は、未だにフランスSFで最も人気があるそうだ。フランスSFのレベルの低さがわかってしまう残念な作品。幻想小説やシュルレアリスムはあんなに水準が高いのに、この落差は何なんだ。というより、優秀な作家の想像力がアンチリアリズムの方向に向かいすぎるために、その反動で、一定のリアリズムを要求するSFを書こうと思う作家が少なくなっているのかもしれない。

<ドイツもの>
マルティン・フリック「パーティナ」★★★
最愛の夫を失った中世の娘がエイリアンに連れ出され、様々な星を遍歴し、数百年後の現代の地球に戻ってくる。そこでパーティナと呼ばれるエイリアンの女と暮らす男と知り合い、3人で地球をあとにし、フォボスで滅び去った火星文明の記録を見たあと、タイタンの共産社会的ユートピアにたどり着き、かつての夫の魂を持つ男と再会する。分類するならユートピア/進化/エイリアンテーマの文明批評SFということになるが、そう分類するのに躊躇を覚えるのは、独特のシニカルでロマン主義的な文体と、執拗な愛やエロスの描写にある。ところどころにエスプリを感じさせる鋭い叙述が散見されるものの、小説としてはあまりに未熟であり、高評価まではできない。

フランスSFと対照的に、ドイツSFのレベルの高さがわかる作品。一見、何の関係もないような宇宙SFのストーリー3つが次々と語られるが、実はそれは社会に適応できない性格傾向をもった人間を見つけ出すためのシミュレーション世界の物語だった。この検査の結果、被験者をロボトミーに処するか否かで議論が戦わされる。ある女がこの被験者の男を助けようと画策するが、みずからも検査にかけられロボトミーに・・・しかし、ロボトミーに処せられたはずの男が冒頭の「エイリアンの思考を植え付けられたコンピュータが宇宙船を乗っ取り乗員を追い出す」ストーリーの「コンピュータ側」となって解放されるという、なぞめいたエンディングを迎える。このオチに関しては様々な解釈が可能だろうが、いずれにせよ、表面的には普通の宇宙SF,未来SFに見えるし、それだけでも十分に面白いのに、そこに叙述トリックやメタフィクション性を導入することで、より緊迫した読み込みがいのある作品に仕上がっている。これが作者の処女長編だというから侮れない。





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Last updated  2009.09.23 21:26:08


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