.:*・゜snow dew゚・*:.

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2007年03月21日
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カテゴリ: 物語。
「さて・・・」

工場長は揺り椅子から立ち上がるとおもむろに戸棚の扉を開けた。
戸棚の中は碁盤目状に仕切られており、擦りガラス扉越しにも中を
伺い知ることが出来る。
それは、右端列、下から2段目に飾ってあった。


彼が手をかざすと首飾りが淡く光り、半透明のプレートが浮かび上がった。
【+6マタリエルの首飾り】

「さぁて、”あれ”をやるか」

外套を羽織り、重い木の扉を開けると外気が入り込んでくる。
ぶるっと身震いすると衿を立て、首をすぼめて薄暗い道を街灯を頼りに
目的地へと急ぐ。

コンコン

一軒の家の前まで来ると、玄関の扉に備え付けられた鉄の輪を握り
軽く叩いた。
ややしばらくして、白いワンピースにストールを巻きつけたdukaが
扉から顔をのぞかせた。
「遅い時間にすまんね」
眠る前だったのか、既に寝ていたのか、とろけそうな姪の顔を見て
叔父である工場長は申し訳なさそうに言う。


外寒かったでしょう~中へ入って」
「あぁ、ありがとう」
叔父を中へ招き入れると外套を受け取り、お茶を入れに台所へと消える。

「久々の仕事の前に、あれをしようと思ってね」
ソファに体を沈め、両手に息を吹きかけながら独り言のように言う。


お盆に熱い紅茶を乗せたdukaが斜向かいに座ると、彼は前掛けのポケットから
首飾りを取り出し、親指と人差し指で作った輪で吊り下げるようにしてみせた。
途端、dukaの表情が一変。
ほんわかした表情は消え、勝負師の顔へと変化した。

(こういうときだけ、キリッとした顔をするんだな)
いつ見ても、この変化には驚かされる。
まるで勝負師の仮面をかぶったようだ・・・いや、反対か?
どちらのdukaが本当か、表裏が分からないほどどちらもdukaらしいといえば
らしいのだ。

「でゅーに頼もうと思ってね。ずいぶんと工房を閉めていたから
 実はちょっと不安なんだよ・・」

「そう」
言葉少なに返事をするが目は工場長を見ていない。
視線の先は首飾り、ただ一点。
紅茶の乗ったお盆が机に置かれたままだ。
「いわゆる厄落としね?」
dukaはゆったりと微笑むと右手を差し出す。

dukaの手のひらに静かに首飾りを乗せると、左手をかざし首飾りの特徴を
呼び出す。
「これ・・・消えてよいのね?」
「あぁ。かまわないよ」
そう応えると、dukaは目を閉じ、しばらく瞑想する。

工場長が座るソファの後ろの壁には木で作られた飾り棚があり、
綺麗な石が等間隔に置かれていた。
dukaが左手を空中にさまよわせると、そこから石の一つが浮かび上がり
ふわふわと彼女の手の内に収まった。

静かに目を開けると「やっぱりこれね」左手には輝ける石、右手には首飾り。
石は、金色に輝いており、トルコ石で模様が入れてあった。
【祝福されたエンチャントストーン[合成+10%]】

手をかざさずとも見慣れたその石で、これから首飾りの精錬をすることになった。

「でゅー、頼むよ」
工場長がそう言うと、dukaは少し緊張した面持ちで、それでも微笑むと再び目を閉じた。

dukaは手を前方に伸ばすと右腕が下、左腕が上になるように交差させた。
手のひらを軽く握ると腕を体に引き寄せ、あごを引き、静かに祈りをささげる。

(天空より降り立つ甘き息吹よ。我に英知を与えん)



3つ胸の内で数えて手を前に突き出すと同時に手を開く。

シュルル!

祝合10%から蚕のような細い糸が無数に伸び、首飾りに巻きついていく。
石は糸を伸ばすたびに小さくなり、首飾りがすっぽりと覆われるまでになると
とうとう消えてしまった。
dukaは間髪を入れない。

「叔父さん、叩くね」
白い繭玉をふわっと空に放り投げると、二人の目がそれを追いかける。
dukaの手が繭玉を捕らえた、その瞬間・・・!



カッキーーーン!!


まぶしさに目を閉じると金属音とともに以前より輝きの増した首飾りが
dukaの手からこぼれ落ちる。
羽のようにふわふわと空を舞い、机に触れた途端、ゴトッという音をさせた。
手をかざしてみると
【マタリエルの首飾り+9】と確認できた。

「うあ。出来たんだw」
厄落としのために消える覚悟で+6を失敗すれば消滅する祝合10%で精錬
したのだが・・・消滅するどころが3ランクアップ。
工場長は目を見張ると、首飾りを手に取った。

(私が持っていたところで、役に立たない首飾り・・・)

「ねね、叔父さん。それでゅー欲しいなぁ~~~」
いつの間にか隣に座ったdukaが言うと
「あれ、でゅーはマタネク使ってたっけ」
「ううん~。プレゼントしたいの♪ちょうだぁい」
「あぁ、どうせ消すつもりだったから良いよ」
「わぁ~~い(ノ´∀`*)叔父さんだぁいすきぃ~」

姪に抱きつかれ、にやける工場長であった。。。。

「にしても、誰にあげるんだい?」紅茶を口に運びながらたずねると
「ゼンさんにぃ~^^」
「へぇ」
「これ、ほぼMaxなんだもん~補正。きっと気に入ってもらえると思うんだ」
首飾りを手にるんるん♪と嬉しそうに言う。
「だな。喜んでもらえると良いな」
「うん♪ありがとう」
「いや、こちらこそ。遅くにすまなかったね。消滅して厄を落とすよりも
 もっと成功しそうな気がしてきたよ。物事は良くも悪くも連鎖するというからね・・・」

にやっと笑うと、玄関横の外套を取って着込むと扉を開け、dukaに礼を言った。
「おやすみ~気をつけてねぇ」
扉がきっちりと閉まるのを確認してから、duka邸を後にした。


深夜ではあったが家には戻らず、工房で夜を明かした。
明け方、工場長のもとには白く輝く葡萄装備が4つ完成していた。
足元には青い石が転がっているのも見えたが・・・・それは数えないことにしようw

依頼を受けて数日で6つのうち4つが出来上がった。
(まずまずの出来だな・・・)そうつぶやくと朝靄(もや)の中、ベッドに
もぐりこんだのだった。






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最終更新日  2007年03月22日 03時33分19秒
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